今年のスポーツ界の顔、スポーツ界を超えて世界を魅了した、アメリカメジャーリーグで大活躍した大谷翔平選手の特集コンテンツ「SHO TIME AuDee」。
大谷選手ご本人はもちろん、大谷選手が所属するエンゼルスのチームのみなさんの貴重なインタビューや、私、赤木ひろこが取材して感じたことなどを交えながら、大谷選手の魅力を10回にわたってお届けしていく。
四回目のテーマは、「2021年凱旋帰国会見で感じた心に響く言葉の数々」。
先日、19日のMVP発表、満場一致での受賞に、日本だけでなく世界が、興奮冷めやらぬ今日この頃。少し時系列は逆になるが、11月15日に行われた凱旋帰国の記者会見の模様を、大谷選手の言葉を中心にお送りする。
この記者会見は、日本記者クラブで行われ、会場に集まったカメラマンと記者が110人、オンラインで会見に参加した人が190人と、300人規模となった。
2021年のシーズンを完走し、見事に大活躍、大切なメンタルについて
――メンタルをどのように整えているか。落ち込んだり愚痴を言いたくなることがあったりする時はどのようにしているか。
「もちろん落ち込んだりしますし、今年の最後の方なんかはやっぱりメジャーに行ってからもいちばん、精神的にというか、なかなか、なんていうのかな、チームの勝ちもついてこないですし、ポストシーズンっていうその先の戦いも見えてこない中での戦いが多かったので、そういう意味では精神的にきつい場面っていうのは後半の方が多かったので。もちろん落ち込みますし、打てない、打たれたとか、そういうようなのも落ち込んだりすることはあるので。
ただそうやってメジャーリーグの場合は連戦連戦ばっかりなので、毎日毎日試合があって、よかった悪かったっていう結果が必ず出てくるので、毎日こう、今日はよかったなとか、今日はここが悪かったなっていうのが出てくることっていうのはすごく幸せなことじゃないのかなと思っているので。
そういう普通の生活じゃ味わえないような経験をさせてもらっていること自体すごく嬉しいことだと思っていますし、試合に出るからこそ、そういうのがあるのであって、今まで怪我をしている時はやっぱり出られない時とかもあったので、落ち込むことも含めていい1年だったなと個人的には思っています」
怪我をして出られない時の辛さを知っているからこそ、試合に出られたという喜び、そして出続けることができたという大切さが、より一段と感じられる。落ち込むということも、試合に出なければ味わえないこと。
そして感じたこと、考えていることを言語化できるのは、自分自身としっかり対話してているからこそ、と思う。
――落ち込むこともあるという大谷選手、故障と復帰を繰り返して、期待されながらもうまくいかないところもあったと思う。そのたびに立ち上がるいちばんの原動力は何か。
「いちばんはやっぱり球場に足を運んでくれているファンの人じゃないかなと思うので、それは結果が出る、出ないにかかわらず来てくださるファンの人もいるし、そういうファンの人が喜んでくれる姿を見たいなっいうのがいちばんかなと思うので、あとは自分がこうなりたいなと思った目標に対して、諦めきれない気持ちがそうさせてくれるのかなと思うので、日々の練習もそうですけど、目標がそういう気持ちにさせてくれるのかなと思います」
日頃から思っていないと、このような言葉は出てこない。
原動力はファンの人、と言われると、本当にファンとしても嬉しいし、さらには、“結果が出る、出ないに関わらずきてくださるファン”、とまで言われた。そして、“目標に対して諦めきれない気持ちがそうさせてくれる”、という表現がまた熱くて、静かな中にも、その熱い鼓動が伝わってきて、心の琴線に触れた。成長していくことは、一進一退ではなく一進一進で、よりその軌跡が太く強固で磐石なものになっていくのだと感じた。
2021年の一番のひらめきについて
凱旋帰国会見では、私も質問をさせていただいた。
ーーシーズンを完走して、体調管理の面で、食事は重要な要素、今年、食事で変えたことやこだわったことは?
「シーズン中はビュッフェ形式というか、球場でもそういう感じで出ているので、ある程度決まったものの中から、自分で取って行くスタイルですし、ホテルに帰ればホテルのものしかないので、シーズン中はどちらかというとカロリーと運動量のバランスを考えることくらいかなと思います。
どちらかというと、オフシーズン、今とかの方が栄養素に関しては細かくやっていくイメージかなと思います」
カロリーと運動量のバランス、栄養素に関して細かく、本当に、受け身ではなくて、学び続け、積極的にご自分で管理をしている様子が伺えた。どの栄養素をどのような食材でとっているのかなども聞いてみたい。NHKスペシャルで、インタビューを受けられる場所に向かっている時、スターバックスのコーヒーを手にしていた映像を見て、Twitterでもスタバのコーヒー?!と話題になった。お好みのフレイバーはなんですか?など、そう言ったことも聞いてみたいくらい。余談になるが、元ニューヨークヤンキースのデレク・ジーターさんは毎日スタバのレッドアイを片手に球場入りして、クラブハウスからグラウンドに向かう通路にあるジョー・ディマジオの、プレートに片手で触れて、毎回トイレに行くタイミングも決まっているほど、細かいルーティーンがあった。大谷選手はどんな感じかな?と興味は尽きない。
そして、シーズンが終了直後から、ずっと伺ってみたいと思っていた質問をさせていただいた。
――日常生活の中でひらめきを見つけるのが楽しみといわれていたが、今シーズンでの一番のひらめきは?
「カットボールは多めに投げてはいたんですけど、それは後半に入るのにもすごく大きかった。スプリットもそうですけど、その2つは大きかったですね」
――日常で何かをしているときにひらめいて試すということ?
「寝ている時とか、なんかいけそうだなというのが出てきたりするのがいちばん、やっていておもしろいなと。次の試合で試してみようとか、というのがやっていていちばんおもしろいところかなと個人的に思っています」
――今年は寝ているときにひらめいた?
「そうですね。ふとしたときにいけそうだなと思って、次の日にやってみたり、次の試合でやってみようとキャッチャーと相談して試してみたりとか、という感じですかね」
寝ている時や、ふとした時に、いけそうだなという、それを見逃さない、通り過ぎない。ヒントを引き寄せる。全集中、野球への情熱が、意識を集中させて、心を尽くしている、その弛まぬ努力の姿は、やはり没入している証だと感じ胸が熱くなった。
来シーズンの目標と、子供たちへ贈る言葉
ーーこのオフに重点的に取り組むことと来年の目標は。
「いちばんはフィジカルを保っていくというか、さらに向上させていくところかなと思うので、まだ100%、120%というわけではないので、もっともっとやる余地はあるかなと思っていますし、キャンプインまでにそこをしっかり詰めていって、そうすれば必然的にスキルの部分でも気付くことが多くなってくると思うので、あとはそこからのすり合わせはスプリングトレーニングに入ってからかなと思います」
――コロナ禍にあった日本中の人々が勇気をもらったが、子どもたちにもひと言メッセージを。
「プレーする側としては、なんていうんですかね、夢を与えようとか元気を与えようみたいなものは全く考えていないので、そう受け取ってもらえたら嬉しいかなと思って毎日頑張っていますし、そう受け取ってくれるのはその人がそういう感覚を持っているからなので、そういう純粋な感覚があるならそれはそれですばらしいことですし。野球やっている子は特に、うまい選手を目標に頑張ると思うので、僕自身がやっぱりそれに値するようなというか、目指されても問題ないような人間として、今後も頑張っていきたいなと思っていますし、そうなるように子どもたちのことも応援しています」
このメッセージは、子供たちに向けて送られたものだが、大人の方からも、かっこいい〜という声が多く上がった。チームメイトとも、すごくコミュニケーションをとられているが、普段の会話もこういう伝え方を自然にできる、身についているというのが垣間見られた。
メジャーリーグという大きな国際的舞台に立ち、世界から集まったメジャーリーガーと共に過ごし、そして多くのファンの視線を一身に浴びながら毎日戦っている大谷選手、その経験と実績から発せられる言葉の数々は、奥深く、熱く、洗練されていた。大谷翔平選手の野球というパフォーマンスのように。
さて、来週は「エンゼルス戦の人気解説者、グビさんが語る大谷翔平選手」と題してお届け予定。
赤木ひろこ(メジャーリーグベースボール・リポーター)
「SHO TIME AuDee」#4
音声版は
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