今年のスポーツ界の顔、スポーツ界を超えて世界を魅了した、アメリカメジャーリーグで大活躍した大谷翔平選手の特集コンテンツ「SHO TIME AuDee」。
大谷選手ご本人はもちろん、大谷選手が所属するエンゼルスのチームのみなさんの貴重なインタビューや、私、赤木ひろこが取材して感じたことなどを交えながら、大谷選手の魅力を10回にわたってお届けしていく。
七回目のテーマは、「キャッチャーのマックス・スタシーMax Stassiが語る大谷翔平選手」
Shoheiのスプリットは最高
「翔平のスプリットは、私が今までキャッチした中で最高のものです」
こう語るのは、キャッチャーのスタシー。“Stassi”スタッシと言いたくなるが、スタシー(スタスィー)。背番号33番。
今シーズンの大谷選手のキャッチャーは、カート・スズキ選手と、マックス・スタシー選手の二人だが、スタシー選手は、大谷選手の特別な登板時にマスクをかぶっていた。
大谷選手とマドン監督、共に、最も印象に残った試合として挙げていた4月4日(日本時間5日)の、DHを解除したリアル二刀流の初めての試合。
8月18日(日本時間19日)のコメリカ・パークでのタイガース戦。リアル二刀流の「一番投手」で出場し、日本人選手初の大台到達となる40号ソロホームランを放ち、投げては、自己最長の8回を1失点に抑えて、8勝目を挙げた試合。
そして、9月19日(日本時間20日)のアスレティックス戦、ベーブ・ルース以来の「ふた桁勝利、ふた桁ホームラン」達成がかかった試合で、8回を投げて2失点、三振10個を奪うという驚くべき内容だった試合。この「SHO TIME AuDee」でも初回に、「アメリカの宝になった瞬間」と題してお送りした。
108球のうち、実に半分以上の55球が鋭く落ちるボール、スプリットだった。この配球になった舞台裏を、翌日9月20日(日本時間21日)の試合前の囲み取材で話してくれた。
―― 昨日の試合では、いつもよりもスプリットを多く投げた。これまでは体に負担があるから多投を避けてきたのだろうか?
「いいえ、体には関係ないよ。試合前に僕に、スプリットが良いから、これを投げたいと言うから、じゃあそうしようと言ったんだ。今年の彼に一貫しているのは、自分の立ち位置を正確に把握する能力があるということ。そして、彼はその球を、信念を持って投げる。迷いなく、信念を持って投げるんだ」
―― 異なるスプリットごとに、異なるサインがあるのだろうか?
「ないよ。僕はただサインをひとつ出す。彼に言ったんだ、何を投げたって僕は捕球する。もしくはブロックするか。何としても止めるってね」
スタシーも熱い!
スタシー選手は、おととしまでアストロズに所属していて、アストロズは今年もワールドシリーズに進出した強豪、バーランダー投手やコール投手など大リーグを代表するピッチャーのボールを受けてきた。
その誰よりも「大谷選手が優れていると思う」点を話してくれた。
――92、93マイル(150キロ)を投げる投手は大勢いるが、大谷選手の何が他の投手と違うところなのだろうか?
「それは、彼の仕事に対する姿勢の表れだと思う。彼はとても厳格だ。そして、自分の体を健康で強く保つために非常に努力している。だからこそ、彼は非常に集中力が高く、彼がやっているすべてのことがやれる理由はそこにあると思う。私はそれが証だと思う」
――カウントを取る球と、そうでない球をどう投げ分けているのか?
「彼には投手としての独特な才能がある。打者でもあるので、何か明確な場面で打者としての知識や経験を活かして、打者が何を考えているか、だから何をするべきかがわかる。それに彼は怖がらずに相手に向かっていくし、挑戦する。そして、慎重に対応する面もあり、非常にスマートで知識が豊富だ。野球の状況など、下調べもしている」
スタシー選手は、大谷選手がどのピッチャーよりも優れているところとして、特にメンタル面を強調している。プレーそのものはもちろんだが、そこに至るまでの過程こそ、その素晴らしいプレーに繋がっている。その過程における直向きな姿勢、努力や集中力に、感銘を受けている。
そして、誠実さ、謙虚さ、挑戦する力と慎重のスケール感が、心に深く刻まれている。
ところで、囲みインタビューが終わると、スタシー選手は、「Anytime! Anytime! いつでも言って!」と、爽やかに笑った。報道陣みんなが、「感じいい〜!」といっていた。
スタシー選手の髪型が個性的で、キャッチャーミットをかぶっていると、隠れているが、両サイドを刈り上げて、センターだけを残した感じ、後ろ姿はVになっている。
Twitterで、写真をアップしていたら、反応をいただいていたので、今回は、より進化系をアップしておく。
ピッチャーとしての大谷選手のコメント
ピッチャーとしての大谷選手のコメントを、先日の凱旋会見から集めた。
――日常生活でひらめきを見つけるのが楽しみというが、今シーズンいちばんのひらめきは。
「カットボールは多めに投げていたんですけど、それは後半に入るのにもすごく大きかった。スプリットもそうですけど、その2つは大きかったですね」
――日常で何かをしているときにひらめいて試すということ?
「寝ている時とか、なんかいけそうだなというのが出てきたりするのがいちばん、やっていておもしろいなと。次の試合で試してみようとか、というのがやっていていちばんおもしろいところかなと個人的に思っています」
―ーひらめきは寝ている時に?
「そうですね。ふとしたときにいけそうだなと思って、次の日にやってみたり、次の試合でやってみようとキャッチャーと相談して試してみたりとか、という感じですかね」
――投手として制球力や球速など、来シーズン以降、上がっていくと感じているところは?
「いちばんよかったのはやっぱりイニング数、試合数をこなせたっていうのがいちばんだと思うので、今年に関して。その中で患部の馴染みだったりとか体の馴染みだったりとかっていうのは後半戦に進むにつれてどんどんどんどんよくなってきていたので、その延長線上で来年入りたいですし、そうすれば必然的に球速も上がると思いますし、コマンド力も必然的に高くなるかなとは思うので。あとはメカニックな問題であって、フィジカルを維持するっていうのがいちばん最初にやることかなとは思っています」
――「一番の選手になる」と言っていたが、この4年間で「一番の選手」にどのくらい近づけたか。足りなかったところは。
「足りなかったなと思うところはたくさんあります。ただ、その目標に向けて確実にレベルは上がったかなと思っているので、そこは自信を持って言えるかなと思いますし、何を持って一番なのかっていうのは少しあいまいなところではあるので、まあそこがまたよかったりするんですけど、これからも目指していきたい目標ではあるかなと思います」
――フォームの修正などの取り組みは。
「毎年状態が良くても悪くても、少なからず微調整は続けていくので。ピッチングに関してもバッティングに関しても、今年、調子がいい時期でも、微調整を繰り返しながらちょっとずつよくなるっていうのが多かったかなと思います」
そして、さらには、今シーズン、球場でゴミを拾うという礼儀正しい振る舞いが、アメリカで新鮮に映って話題を呼んだ。それに対して10月3日(日本時間4日)の総括会見で、大谷選手は、
「ベンチの中とか、危なかったりするので、比較的、階段で転んだり、そう言った小さいつまらない怪我というのは、自分もそうですけど、周りの人にはしてほしくないと思っています」
と言った。
スタシー選手が感じ取った、“仕事に対する姿勢”は、やはりそういった気遣いや、考え方も、とても謙虚に映って、沁み入っているのだと思う。
少年のような純粋な心をあわせ持つ、こんなにカッコいいチームメイトが、そばにいたら、刺激を受けないわけがない。
大谷選手自ら実践していることが、チームを引っ張っている。
赤木ひろこ(メジャーリーグベースボール・リポーター)
「SHO TIME AuDee」#7
音声版は
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