今年のスポーツ界の顔、スポーツ界を超えて世界を魅了した、アメリカメジャーリーグで大活躍した大谷翔平選手の特集コンテンツ「SHO TIME AuDee」。
大谷選手ご本人はもちろん、大谷選手が所属するエンゼルスのチームのみなさんの貴重なインタビューや、私、赤木ひろこが取材して感じたことなどを交えながら、大谷選手の魅力を10回にわたってお届けしていく。
配信日の今日は12月24日、クリスマスイブ。エンゼルスのスタジアムでも、今月15日に、クリスマスのホリデーイベントが行われた。
アナハイムの地元の子供たち300人が参加。スタジアム内のダグアウトの前まで入ると、サンタクロースや、赤と緑のコスチュームを着た妖精がお出迎え。ゲームをしたり、一緒に写真を撮ったり、エンゼルスのパジャマやシャツなどのプレゼントが贈られた。
さて、八回目のテーマは「マイク・トラウト選手が語る大谷翔平選手」。
トラウト選手が語る大谷選手の凄さ
「今シーズンの翔平はまさに電撃的だった。まるでリトルリーグに戻ったように感じた。8回を投げて、ホームランを打ち、盗塁を決め、そしてライトの守備をする姿を見るのは、本当に信じられないほどだ。しかし、私が最も感銘を受けたのは、フィールドの内外を問わず、彼の身のこなし方。毎日たくさんのことをこなさなければならないのに、翔平は笑顔でそれをこなしていた。おめでとう、翔平!」
これは、シーズン中から、大谷選手のMVPを確信していた、マイク・トラウト選手からの、御祝いメッセージ。
マイク・トラウト選手といえば、2009年にエンゼルスに入団し、オールスター選出9回、MVPを2014年、2016年、2019年の3回も受賞しているスター選手だ。
今シーズンは、5月中旬に右ふくらはぎを痛めて離脱。36試合の出場に止まった。11年のキャリアの中で、最も難しい故障だったそうだ。
良い時もあれば、悪い時もあって、ジェットコースターのように感情のアップダウンが激しかった。自分のプレーを楽しみに来るファンのために試合に出たい、一生懸命に戦っているチームメイトのために試合に出たいという気持ちとはうらはらに、体が思うようにならない、心と体が伴わないフラストレーションが溜まる1年だったという。そんな中での楽しみの一つは、大谷選手の活躍をじっくりと見ることだったと語った。
シーズン終盤の9月24日(日本時間25日)、今シーズンの総括会見に臨んだ中で、大谷選手について触れた。
忘れられない試合として挙げたのが、
「(7月9日日本時間10日の)マリナーズの本拠地、シアトルでのホームラン。(33号)私はそこにいなかったけど、テレビで見ていた。3階席かどこかに打ち込んだ」
2番指名打者で出場し、ライトスタンドの最上階まで飛んだ、飛距離141.1メートル、打球速度が187.5キロ、マリナーズの左腕・ゴンザレスから打った33号のソロホームランのことを指している。MVPを3度も受賞しているトラウト選手から見ても、強烈な当たりだったと、少し興奮気味に話した。
そしてトラウト選手は、試合には出ていなかったものの、本拠地の時には必ず球場入りして、クラブハウスでは、若手選手からの質問を受けていた。
またベンチに入って、試合をみていた。遠征には帯同していないが、大谷選手のプレーを毎晩のように、凝視できたなんて、幸せなことだと笑った。
もう何も驚くことはない
ある試合で大谷選手にアドバイスをした時のことを、次のように話した。
「7月2日(日本時間3日)のオリオールズ戦、最初の打席で彼は、詰まらされてバットが折れた。その時に、速球を外角に投げてきたら、左翼にあるブルペンに打ち込め。速球が内角に来たら、右翼席だ。チェンジアップなら、センターを狙え、と。そうしたら、その後の打席で、内角の速球を右翼へホームラン、その次の打席で、真ん中の球を左中間(左翼)へホームランを放った。そして翌々日(4日)には、緩い変化球をセンターに打った。だから、もう彼には何も驚くことはないんだ。彼はまさに、素晴らしいチームメイト。偉大な、素晴らしい男だ。もちろん、彼が僕らのチームにいてくれてうれしいよ」
“もう何も驚くことはない”
トラウト選手は、この話をいろんなところで、何度となく話している。まさに度肝を抜かれた、本当にそれだけインパクトが強い出来事だったのだ。
大谷選手が自分のアドバイスを聞いて、すぐに取り入れて実行したのだから。
リトルリーグクラシックでのこと
トラウト選手というと、野球選手になっていなければ、気象予報士?というくらいに、気象に詳しい。世界中の気象がわかるように、世界中のアプリも入れているそうだ。空を観て色々と思い巡らせる。試合も、今日は雨が降るとか、トラウト選手に聞いたらすぐに教えてくれるそうだ。
トラウト選手が、力を入れていたのが、8月22日(日本時間23日)に行われた、リトルリーグクラシック。リトルリーグの聖地、ペンシルベニア州ウイリアムズポートの球場で、今年はインディアンズとの試合が行われた。2年ぶりに行われ、スポーツ専門チャンネルESPNで全米中継された。現地に足を運んで子供たちと交流し、子供たちに大谷選手のバッティングを見せたいと張り切った。試合中には、ベンチからマイクをつけて実況のインタビューに応じ、
「彼のプレーを見た子供たちは間違いなく興奮するだろうし、素晴らしい経験になると思う。リトルリーグでは、多くのチームで、ピッチャーとかバッターとかまだ絞り込むことなく、両方に力を入れている選手がいるので、二刀流の姿は最高のお手本、メジャーリーグのレベルで、翔平のようにできる選手が出てきたら素敵なことだ」と、伝えた。
大谷選手も、リトルリーグのワールドカップの地、憧れの地ウイリアムズポートにくることができたと語り、同時に、夢を贈る立場となって登場した。
大谷選手からの子供たちへのメッセージ
(9月26日の会見より)
―― 野球選手を目指す子供達に向けて伝えたいこと?
「もちろん素晴らしい選手がたくさんいるので、見ていればいいプレーをたくさん見ることができますし、僕に限らず、いい選手のプレーを見て、少しでもかっこいいなと思えれば、それは好きになる要素として大きく関わってくるんじゃないかなと思うので、僕もプロ野球選手とか、メジャーリーガーとかを見てかっこいいと思って始めたので、そう思ってもらえるように、頑張りたいなと思っています」
(11月15日の凱旋会見より)
―― 伸び悩んでいる野球少年に向けてのメッセージを。
「正直、小学校、中学校で伸び悩むっていうことはないかなと思っています。それは心の持ちようかなというか、必ずうまくなりたいという気持ちがあれば必ず伸びる時期なので、そう思うメンタリティーの方が問題かなと思うので、高い目標を持って、こうなりたいっていう選手の目標を持っていれば必ずよくなるんじゃないかなと思っています」
トラウト選手が語った大谷選手の凄さ、失敗しても、一つのアドバイスで、すぐに切り替えて吸収し自分のものにできる実行力。そしてそれを可能にしているのが毎日の積み重ねと、精神力、立ち振る舞い。目を向けるべき大切なことは、ここにある。
そして大谷選手の野球少年に向けてのメッセージからも感じ取れるように、メンタリティーの重要性。“必ずうまくなりたいという気持ちがあれば、必ず伸びる”という言葉。壁にぶつかっているのかも?と感じた時には、この言葉を思い出して、何度も復唱したい。
さて、年の瀬になって、2022年1月にニューヨークのホテルで予定されていた、MVP受賞をお祝いする晩餐会が、新型コロナウイルスの再びの蔓延と、合意していない労使協定の影響から、中止になるというニュースが飛び込んできた。2年連続の中止となった。
来年こそは、世界中の新型コロナウイルスも終息し、試合も無事に行われ、晩餐会で大谷選手のスピーチが聞けることを祈っている。遠く、日本からクリスマスイブの夜に。
さて、次回は、「強打者の条件」について迫っていく。
赤木ひろこ(メジャーリーグベースボール・リポーター)
「SHO TIME AuDee」#8
音声版は
こちら