笹川友里がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「DIGITAL VORN Future Pix」(毎週土曜 20:00~20:30)。この番組では、デジタルシーンのフロントランナーをゲストに迎え、私たちを待ち受ける未来の社会について話を伺っていきます。12月24日(土)の放送は、モーションリブ株式会社 代表取締役CEOの溝口貴弘(みぞぐち・たかひろ)さんをゲストに迎え、お届けしました。
(左から)溝口貴弘さん、笹川友里
◆慶應発の制御技術「リアルハプティクス」
溝口さんは、2014年に慶應義塾大学大学院理工学研究科で博士号を取得後、地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所でハプティクス技術の医療利用の研究に従事。2016年、現在の会社の前身となる合同会社運動設計研究所を設立、2017年に社名をモーションリブ株式会社に変更し、代表取締役CEOに就任。また、制御技術「リアルハプティクス」に大学時代から携わり、感触が伝わる遠隔操作を始めとした力触覚ソリューションの開発を続けています。
モーションリブの事業内容について、溝口さんは「慶應義塾大学で開発した制御技術“リアルハプティクス”を活用して、共同開発やコンサルティングを通して、お客さまが抱えている技術課題の解決をしています。あわせて、リアルハプティクスを制御するチップを開発・販売するなど、デバイス事業もおこなっています」と説明。
リアルハプティクスとは、物の感触や人間の動きをデータ化することができる技術で、人間が物を触ったときに、指先から感じ取る感触からモノをつかむ強さを加減するのと同じように、「ロボットが物を触った瞬間に、それがどういう特性を持っているかを理解できます。それによって、モノがやわらかければやさしくつかむ、重かったら強くつかむなどが可能」と言います。
モーションリブのコーポレートサイトでは、ロボットのアームがやわらかなケーキやゼリーを潰すことなくつかんでいる様子を収めた動画が掲載されています。
◆リアルハプティクスの技術はどこで活かされる?
笹川が、リアルハプティクスの技術がどんな分野で活用されていくのかを尋ねると、「人間の五感(視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚)がどこに利用できるかと考えると、(リアルハプティクスは)人間がやっている動作のほぼすべてに利用できる応用分野を持っている」と溝口さん。
会社によって、もちろん事業分野はバラバラですが、そのなかでも「経済産業省が出している事業項目の7~8割ぐらいを占めている」と言い、その汎用性の高さがうかがえます。
また、すでにこの技術が現場で利用されているようで、例えば、製鉄工場などのとても熱い環境下のなかで人間が作業していたところを、リアルハプティクスの技術を組み込んだロボットを設置して遠隔操作でおこなうことによって、作業員は快適な場所で作業することが可能に。
また、食品分野の現場でも、人間が鮮度を保つために寒い環境でおこなっていた作業をロボットに置き換えることができる。
実際に技術活用した現場では「労働環境がかなり改善されて、現場の方には喜んでいただいている」と実感を語ります。
一方で、現在の課題として挙げたのは“応用”の部分。というのも、ロボットを設置してから動かすまでがけっこう大変で、「今のロボットは、買ってきて設置するまで、専門のエンジニアがプログラムしなければ動かないという状態。十分に動くようになるまで、長いもので数ヵ月かかってしまう。そこをリアルハプティクスの技術でなんとかできないか」と言います。
リアルハプティクスの技術は、人間の動きのデータを取ることができるので、「そのデータを使って、ロボットがすぐに同じ動きを同じ力加減でできることを利用して、導入までの時間を短縮できるのではないか」と模索します。
そう聞くとAI(人工知能)の学習機能をイメージしがちですが、溝口さんいわく、AIほど複雑ではないようで、「人間で言うところの反復練習に近い。1回やってあげれば何となく使い方が分かり、後はロボット自体が適応力を持っていれば、似たような作業なら大体できるようになっていく。そういう使い方ができればいいなと思っている」と語ります。
◆リアルハプティクスの技術で、未来はどうなる?
近い将来、労働人口の減少が叫ばれているなか、農業や病院、レストランなどさまざまな分野において、ロボットが作業を補うことが期待されています。そうしたなか、モーションリブは「ロボットがやさしく動くようにできる感触技術を持っているので、“サービスロボット”と言われる分野との親和性がかなり高いと思う。そういう人間に近いところで動くロボットに、その技術を使っていきたい」と胸を張ります。
また、リアルハプティクスの技術を搭載したロボットが、一般社会に広く浸透していくために、「一般の人が掃除機や洗濯機を使うみたいに、ロボットを(簡単に)使えるようにしなければいけない。それにも、リアルハプティクスの技術が活きてくると思っている」と自信をのぞかせます。
例えば、プログラムした通りに掃除をしてくれるロボットや指定した日時に窓ふきをしてくれるロボットなども実現できる可能性を秘めており、笹川は「そういった後回しにしがちな作業をロボットがやってくれると、より良い生活ができそうですよね!」と期待を寄せます。
これには溝口さんも「(人間がやりたくないような作業を)ロボットが担当してくれるようになっていくといいですよね。使い道としては、そういうところがいいと思う。人間がいかに過ごしやすく、活動しやすい環境がつくれるか、という部分にロボットが支援している、みたいな使い方ができれば」と語ります。
最後に、溝口さんが見据える少し先の未来について伺うと、「(2035年頃には)ロボットの社会進出がすごく加速して、ロボットが働いていること自体、特別ではない当たり前の社会になっている必要がある」と言及。
また将来、リアルハプティクスの感触技術がいろんなところで使われ、「人にやさしい社会になっていて、(もっと身近に)ロボットがいっぱいあるような社会になっていればいいなと思う」と話していました。
次回12月31日(土)の放送は、IoT NEWS代表の小泉耕ニ(こいずみ・こうじ)さんをゲストに迎えてお届けします。今年1年の総括や来年のデジタルシーンの行方についてなど、貴重な話が聴けるかも!? どうぞお楽しみに!
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聴取期限 2023年1月1日(日・祝) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:DIGITAL VORN Future Pix
放送日時:毎週土曜 20:00~20:30
パーソナリティ:笹川友里
番組Webサイト:
https://www.tfm.co.jp/podcasts/futurepix/