農業分野の“人材不足”“高齢化”を解決!? 農林水産省が推進している「スマート農業」とは?

青木源太と足立梨花がパーソナリティをつとめ、暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていくTOKYO FMのラジオ番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」(毎週日曜 7:30~7:55)。12月25日(日)の放送では、農林水産省 大臣官房政策課 技術政策室長の上原健一(うえはら・けんいち)さんに「地球を救う! スマート農業」をテーマに話を伺いました。


(左から)青木源太、上原健一さん、足立梨花



◆農業現場の課題解決に期待される「スマート農業」

年々、農業分野の担い手が減少しています。1960年には1,175万人いた農業従事者の数が、2020年には136万人まで減っているのに加え、2020年時点での農業従事者の平均年齢は68歳。

新規就農者はいるものの、農業従事者の減少に歯止めがかかるほどではなく、減少幅のほうが大きいのが現状です。そのため、農業現場では1人当たりの作業面積が拡大し、農業従事者の負担は年々増しています。

ほかにも、機械化が難しい危険な作業やキツい作業があったり、収穫期などの期間限定で多くの人手が必要になったり、熟練者でなければできない作業も多い、などの課題を抱えています。
そこで、これらの課題を解決する手段として導入が期待されているのが「スマート農業」です。スマート農業とは、ロボットやAI(人工知能)、IoT(Internet of Things/モノのインターネット)などの先端技術を活用する農業のことで、これらを活用したさまざまなものが登場しています。

例えば、自動走行トラクターや自動田植機などが、すでに複数のメーカーから販売されており、「生産現場の課題を解決に貢献している」と上原さん。自動走行トラクターは、人が乗らなくても畑の形に応じて無駄なく走行し、耕す作業などを自動でおこなうことができ、人は、その作業を監視しながら、作業の開始や停止などをコントロールするだけです。

例えば、1台のトラクターは無人で耕し、もう1台を人が乗って、同時進行で肥料散布をおこなうこともできるため、「作業時間が短縮され、大規模な面積も1人でこなすことができる」とメリットを挙げます。

最近では農作物の病害虫をAIが画像診断してくれるアプリなども開発されており、これらを活用することで「新規就農者でも病害虫を早期発見できるので、適切な対策を講じることができ、被害を最小限に抑えられる」と言います。さらには、自動で果実や野菜を収穫するロボットの開発も、さまざまな農作物で進んでいます。

◆環境にもやさしいスマート農業

これらの事例のように、スマート農業は農業従事者にやさしいのはもちろんのこと、実はスマート農業を導入することによって、化学農薬や化学肥料の削減などにもつながり、“環境にもやさしい”というメリットもあります。

例えば、水田や畑に農薬を散布する場合、これまでは畑全体にまんべんなく農薬を散布することが多かったものの、スマート農業では、ドローンで上空から畑を撮影して、その画像をAIが解析して害虫の発生位置を特定。そこにピンポイントで農薬を散布することができるため、農薬の使用量を大幅に減らすことができ、環境負荷の軽減にもつながります。

また、人工衛星で撮影した水田や畑の画像を解析することで、農作物の生育状態を診断することも可能に。それにより、必要なところに必要な分量の肥料を散布できるため、生育のバラつきが抑えられ、生産量増加にも期待できます。 

◆「みどりの食料システム戦略」とは?

農林水産省では、食料・農林水産業の生産力向上と持続性の両立をイノベーションで実現する「みどりの食料システム戦略」を2021年5月に策定しました。この戦略では、2050年までに目指す姿として「農林水産業のCO2ゼロエミッション化の実現」「化学農薬の50%低減」「化学肥料の30%低減」などの目標を提示しています。

2022年5月には「みどりの食料システム法」が成立し、7月1日(金)に施行。9月からは、環境負荷低減の取り組みを後押しする認定制度が始まるなど、「みどりの食料システム戦略」の実現に向けた政策を推進しており、スマート農業はその基盤となる位置付けです。

2019年からこれまで、全国205の地区でスマート農業の実証プロジェクトが進められており、これらの地域ではスマート農業の効果が実感されているそうです。一方、今後の課題として、「導入するための初期コストが高い」「スマート農業の技術に詳しい人材が不足している」といった声も寄せられています。

導入コストを下げるための取り組みとして、上原さんは「誰もがスマート農業の技術を利活用できるように、農機のシェアリングやデータに基づく経営指導などを支援するサービスを育成・普及することとしています」と言及。

また、実証プロジェクトに参加した、技術やノウハウを有する生産者、事業者で「スマートサポートチーム」を結成。スマート農業技術を積極的に取り入れるための産地の実地指導などをおこなっています。

最後に、上原さんは「農業の現場の課題を先端技術で解決するスマート農業は、高齢化や担い手不足に対応するとともに、化学肥料や化学農薬の削減など環境負荷低減にも役立ち、『みどりの食料システム戦略』実現のカギとなります。さらに、食料安全保障や安全・安心な農産物の確保、品質の向上にもつながりますので、しっかり取り組んでいきたい」と力を込めていました。

足立は、多くの人に知ってもらいたいこととして「みどりの食料システム戦略」を挙げ、「2050年までに、化学農薬の50%低減、化学肥料の30%低減などの目標を目指して、私たちも頑張らなければならないこと、手伝えることがたくさんあると思う」とコメント。

一方、青木はスマートサポートチームに着目。「初期コストが高い、スマート農業の技術に詳しい人材が不足している、といった課題を解決するためのスマートサポートチームなので、(農業従事者の方々は)ぜひ活用してみてほしい」と話しました。


(左から)青木源太、足立梨花



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<番組概要>
番組名:青木源太・足立梨花 Sunday Collection
放送日時:毎週日曜 7:30~7:55
パーソナリティ:青木源太、足立梨花
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/collection/

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