本部長・マンボウやしろと秘書・浜崎美保がパーソナリティをつとめるTOKYO FMの番組「Skyrocket Company」。毎月第2水曜日に、我々が知っているようでよく知らない「お金」や「経済」の仕組みなどを、専門家の方に詳しく解説してもらうコーナー「スカロケ資産運用部」をお届けしています。
1月11日(水)の放送では、愛と経済の伝道師“宗さま”こと三井住友DSアセットマネジメント株式会社フェローの宗正彰(むねまさ・あきら)さんに、「卯年の2023年スタート“相場の格言”と“年の初めに思うこと”」というテーマでお話を伺いました。
(左から)宗正彰さん、マンボウやしろ、浜崎美保
◆卯年の相場はピョンピョン跳ねる?
浜崎:宗さま、今回は「卯年の2023年スタート“相場の格言”と“年の初めに思うこと”」について、お話しいただけるということですが。
やしろ:毎年恒例、今年の相場の格言から教えていただきたいのと、実際に相場の格言通りに日本の株式市場は動いてきたのかをセットでお伺いしたいのですが。
宗正:卯年の相場の格言は、イメージそのまま「跳ねる!」というものです。ピョンピョン大きく跳ねる、つまり卯年相場は上向くということです。
やしろ:大きく跳ねる。いいですね!
宗正:戦後6回あった卯年の実績は、プラスの年が勝ちで、マイナスの年を敗けとすると、日経平均株価ベースで「4勝2敗」。年間平均リターンは16.4%のプラスですから、過去は格言通りだったと言っても良いでしょう。
やしろ:本当ですね。
宗正:ちなみに昨年2022年の寅年相場の格言は「寅千里を走る」。寅が千里を走ってしまうほど波乱の年という意味ですが、確かに年初からのウクライナ情勢に始まって、世界的な金利上昇、急速に進んだ円安と、寅が本当に走っちゃいましたよね。
やしろ:確かに!もう少しさかのぼると、どうなんでしょうか?
2020年の子年の相場格言は、「子(ねずみ)は繁栄」です。ねずみは子をたくさん産むことに由来しています。コロナ禍の最初の年の2020年、日本の株式市場は90年代のバブル期と言われた時代の水準にまで戻しましたが、まさにあの年が子年。そして、翌年2021年の丑年の相場格言は「丑(うし)つまずき」です。この年も格言通り、株式市場がつまずく形でほぼ横ばいだったんですよ。
やしろ:ここ数年で行くと、本当に(株式市場は)格言通りに動いているってことですね。
宗正:日本の相場格言は江戸時代の米相場に由来しています。私たちの人生の先輩、先人の経験則です。気にしすぎる必要はないですが、覚えておいて損はないでしょうね。
経済の世界にも、「キチン・ジュグラー・クズネッツ・コンドラチェフ」のような景気循環の波があるくらいですから、12年に一度めぐって来る十二支と景気や株式市場の動きとの間に相関性があっても不思議ではないですよね。
やしろ:ということは、期待できる1年になりそうですが、前回のこのコーナーで宗さまがいよいよ国内金利が上がるとおっしゃっていましたが、実際に昨年末に日銀による事実上の利上げが発表されました! また、当たりましたね!
宗正:この仕事(資産運用業界)をしていれば、ある程度先の予想は当たりますし、そこは当てなくてはいけない。必要なのは、未だ表面化していないことで、ちょっとだけ先のことを当てるということです。これが最も難しい(笑)。
やしろ:なるほど。先々でいつかはこうなるみたいな予想が多いですが、それはそのうち当たりますよね。
宗正:年末のタイミングは、多くの海外投資家がクリスマス休暇でマーケットに参加しないので、怪しいタイミングでした。そこに仕掛けてきたのが、今年の春に任期満了を迎える日銀の黒田総裁です。
日銀総裁に就任して過去10年、ずっと超低金利政策を続けてきましたが、最後の最後で長期金利の指標の上限を引き上げた、事実上の利上げに踏み切った歴史的な日です。日本の超低金利政策の終わりの始まりと言って良いでしょう。次の総裁のための地ならし的な意味もあると思います。
やしろ:すごい!
宗正:今回は政策金利を引き上げたのではなくて、10年物国債の上限金利を引き上げただけというのが日銀の言い分です。これまで話してきたこととの整合性の問題もあると思いますが、手段が違うだけで結果は同じです。
実際に日本の利上げが始まりました。すでに固定金利型の住宅ローンは、多くの銀行で金利アップに踏み切りましたからね。
やしろ:国内金利が上がると円安や物価高といったものは、今年は収まっていくと見ていいのでしょうか?
宗正:昨年ほどの円安進行やそれに続く物価高の可能性は、今年は低いと見ていいと思います。昨年進んだ円安の要因は、アメリカが金利を引き上げる一方で、日本が超低金利政策を続けていたからです。その一方の日本のスタンスが変更になったわけですからね。
物価高については、急速に進んだ円安に加えて、ウクライナ情勢による資源不足やコロナ禍の一旦の収束による需要の急増が影響しました。これらの要因が昨年並みにここから先で進む可能性は低いことを考慮すれば、物価高も徐々に落ち着いてくるでしょうね。
やしろ:下がるというよりは、2022年から始まった、あの加速するような感じはないっていうことですね。
宗正:そうです。円安の流れが収まったからといって、お店に並ぶ商品の売値にすぐに反映されるわけではないですよね。今店頭に並んでいるものは、3ヶ月前〜半年前に仕入れたものですから、当然それ以前の為替水準が反映されているわけです。そういう意味では、昨年の秋辺りが円安や物価高の一旦のピークと見ていいと思います。
◆2023年は賃金アップの元年
やしろ:そして、このコーナーではよく話題に出ますが、国内の景気動向を左右する個人消費、今年はどんな感じになりそうでしょうか。
宗正:この3年間、個人消費を抑えてきたのが新型コロナです。いよいよ新型コロナの扱いを見直すという政府の動きも見えてきましたよね。この年末年始はこれを先取りしたような人の動きもありましたが、個人消費は人の動きに連動します。なかでもここ数年お買い物を控えてきた、したくてもできなかった反動の「リベンジ消費」、これが原動力になると思うんですね。
それから個人の金融資産って、もちろん人によりますが、全体で見るとものすごく膨らんでいるんです。株式市場が上がったことも追い風ですね、資産効果と言われるものです。
やしろ:テレビの報道番組か何かで見たんですけど、新橋で行き交う20代30代くらいの結構な人数の方が「今年はお金を使いたいです」ってお正月のインタビューで答えていたんですよ。
宗正:お金を使いたい=今年は動きたい、活動したいっていう意味ですね。分かります。特に若い世代はそうでしょうね。
やしろ:特にその世代の方々はそうかもしれないです。そして賃金問題についても、ニュースでよく耳にします。今年こそ、働く人の給与が上がってほしいと。これは本当に思っている方が多いと思います。こちらはいかがでしょうか。
宗正:物価の上昇を上回る賃金の上昇、これが求められるところですよね。春闘を前に、数字が取れる大手の企業を中心としてその動きがすでに出始めています。今年は多くの企業で賃金が上がり始める、しかもそれが数字になって見え始める、そんな年になると思いますね。
この国は1990年からの30年間、賃金はほぼ横ばいだったわけですから。そういう意味では、今年は「賃金アップ元年」と言える年になりそうです。
やしろ:何と!「賃金アップ元年!」。アルバイトなど非正規労働の方の賃金はいかがでしょうか?
宗正:アルバイトなど非正規労働の方が働かれる業種は、小売業やサービス業などの割合が高い。こういった業種は、人が動き始めれば需要も高まることで賃金の上昇圧力につながります。全体的にはこちらの賃金も上がると思います。
やしろ:全体的に明るいお話が多いと僕は感じました。秘書はいかがでしょうか?
浜崎:やっぱりピョンピョン跳ねるのかなっていう……。
やしろ:卯年ということもあり、宗さま、今年の国内経済や景気は良くなるというふうに考えてよろしいのでしょうか。
宗正:今の時点では良いと思います。
やしろ:何か不測の事態が起きなきゃ大丈夫ってことですよね。
宗正:もちろん、様々な要因が絡み合うわけですが、個別には改善傾向を示す経済指標などが増えてくると思います。まだ年初ですからね、ここまでお話ししてきたようなベストシナリオを前提にして、あとは、そこに短期的な変化を織り込みながら予想を修正していくということですね。
例えばこの1月だけでも、「コロナ特例貸付」の返済が始まったり、政府による「電気ガス料金の補助」も始まりますよね。昨日(1月10日)からは「全国旅行支援」も再開されました。大事なことは、その中のプラスの要因が事前の予想を超えて推移するかどうかですね。
他には海外要因です。アメリカでは、昨年末から大手IT系の企業や金融業界で大規模なリストラが始まりました。最近までは大規模な金融緩和の影響もあって、アメリカは実に景気が良かった。それで社員も増やしてきたわけですが、今年は昨年の大幅な利上げの影響も加わって、景気が落ち込むかもしれない。それで早めに動いているわけです。
それから依然としてウクライナ情勢も続いています。地政学リスクについてもその影響を見ながら、卯年ですから聞き耳を立てて、高くして……。
やしろ:音を聞いて、注視して。
宗正:その通りです。この「スカロケ資産運用部」で情報を仕入れていただきながら、リスナーの皆さんとこの1年、また景気動向を追っていきたいと思います。
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<番組概要>
番組名:Skyrocket Company
放送日時:毎週月~木曜17:00~19:52(※コーナーは毎月第2水曜18:15ごろ~)
パーソナリティ:本部長・マンボウやしろ、秘書・浜崎美保
番組Webサイト:
http://www.tfm.co.jp/sky/