「アニメ化が決まる前から曲を書いていました」ジャズピアニスト・上原ひろみ 映画「BLUE GIANT」書き下ろし楽曲制作秘話

俳優・石丸幹二がパーソナリティを務めるTOKYO FMのラジオ番組「Grand Seiko THE NATURE OF TIME」(毎週土曜12:00~12:25)。各界で活躍するゲストを迎え、毎週1つのキーワードから“自分を支えている本質”を掘り下げて伺っていきます。

2023年2月のマンスリーゲストは、ジャズピアニストの上原ひろみさん。この記事では、上原さんが劇中音楽を担当されたアニメ映画「BLUE GIANT」の制作秘話に迫った2月11日(土・祝)放送の模様を紹介します。


(左から)石丸幹二、上原ひろみさん


上原ひろみさんは、6歳よりピアノを始め、ボストンのバークリー音楽院在学中に世界デビュー。2011年にグラミー賞を受賞し、2016年にリリースしたアルバム『SPARK』が、全米ジャズ・チャート1位を記録しました。また、日本人アーティストでは唯一となるブルーノート・ニューヨークでの13年連続公演を開催するなど、世界を舞台に活躍中されており、2月17日(金)から全国公開されるアニメ映画「BLUE GIANT」(ブルージャイアント)の劇中音楽も担当されています。

◆オファー前から楽曲制作!?

石丸:上原さんが劇中音楽を担当されたアニメ映画「BLUE GIANT」が2月17日から全国公開されますね。「BLUE GIANT」と言えば、シリーズ累計920万部突発の大人気コミックです。

ジャズに魅せられた少年が、世界一のジャズプレイヤーを志す物語で、ジャズに憧れる若い子たちがバイブルのように読んでいると聞きました。僕も何冊か読みました。この映画の音楽のオファーがあったときにどんなお気持ちでそれ(オファー)を受けましたか。

上原:元々原作を読んでいるときから“音”がすごく聴こえてきました。
漫画を読んでも(普通は)音は聴こえてこないじゃないですか。でも、「飛び出す絵本」みたいに音が飛び出てくる感じがしたんです。

それに、単純にジャズの漫画があること自体がうれしかったですし、音が聴こえてきて、自分がこの音を“譜面に書きたい”という衝動に駆られて……実は、アニメ化が決まる前から曲を書いていました。

石丸:そうだったんですか!?

上原:はい(笑)。どんどんあふれ出てきたので、(今回のオファーをいただいて)“これを発表できるんだ!”という気持ちでした。

石丸:すでにストックがある状態だったんですね。「BLUE GIANT」のストーリーのなかに、ご自身の人生と被るところはありましたか?

上原:そうですね。「出会い」というのはとても大切で、成長するためには“自分よりすごい人に出会うこと”、そして、自分の周りを“情熱を持って取り組む人”“頑張る人”で取り囲むことが絶対に必要不可欠なんです。

だから、登場人物たちが熱量を持ってジャズに取り組んで向き合っている姿を見て、自分は今でもその気持ちを持ち続けているなと思いながら読んでいます。

石丸:音楽って“あふれ出るもの”“湧きあがるもの”だと思うんですよね。僕も漫画を読んで、“どんな音がここから湧き出ているんだろう?”とすごく興味があったんです。それがいよいよ(上原さんの手によって)実際に音となってあふれ出てくるということですね! 皆さんにもぜひ聴いて欲しいです。

◆書き下ろし楽曲に込めた思い

石丸:主人公たちが結成するトリオ「JASS」のオリジナル楽曲は、上原さんの書き下ろしと言いますか、書き溜めていたものを形にしたということですが、どんな想いが込められていますか?

上原:最初に漫画を読んだときに(浮かんで)書き溜めていた曲をベースに作りましたが、そこに原作チームや監督など、映画に携わる人たちから「この曲はこうあって欲しい」「この曲はこういう気持ちで演奏している」という想いをいろいろ聞いて、どんどん肉付けしてブラッシュアップしていきました。

また(この作品には)“成長物語”でもあるので、同じ曲が何回も出てきても、その度にアレンジが違うところとか、いろんな楽しみ方ができるように、ありったけの情熱を注いで作りました。

石丸:すごく素敵です! そして、なおかつですよ! 上原さんが(劇中の)ピアノも担当されていらっしゃるんですよね?

上原:はい。

石丸:また、トリオですからサックスとドラムのプレイヤーもいますが、こちらのお2人は(以前から)お仲間だったんですか?

上原:いいえ、今回の作品で初めて出会いました。

石丸:そうなんですね。作品の過程で(3人での演奏が)よりうまくなっていく、というところも、彼らとともに作り込んでいかれたということですか?

上原:サックスさんは馬場智章(ばば・ともあき)さん、ドラムは石若駿(いしわか・しゅん)さん、ピアノは私が演奏していますけど、あくまで劇中で演奏しているのは、その漫画に登場する3人なんですよ。

なので、彼らの性格だったり、シーンごとの葛藤だったりを自分たちのなかに落とし込んでいかなきゃいけないんですね。だから、演じなければいけない部分が多かったです。

石丸:なるほど、そこは我々俳優と同じですね。“自分じゃない人を演じて演奏をする”のはどんな感じでしたか?

上原:私が、特に馬場さんに「主人公だったらこういうプレイをすると思う」などといろいろ言っていたので、そういう意味ではすごく大変な仕事だったと思いますが、(馬場さんは)とことん“主人公の宮本大になろう”という努力をしてくれました。いつも「(宮本)大を(自分のなかに)入れなきゃ」ってずっと言っていましたね(笑)。

石丸:我々俳優も「役になりきる」という言葉はあまり使わなくて、「役を生きる」と言うんですよ。“そのキャラクターを自分の身体を使って生きていく”という。(お話を聞いて)まさに音楽で(役を)生きられたのかなと思いました。

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<番組概要>
番組名:Grand Seiko THE NATURE OF TIME
放送日時:毎週土曜 12:00~12:25
パーソナリティ:石丸幹二
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/nature/

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