宇多田ヒカルの名曲をサンプリング 佐藤千亜妃「OKがでたときは夢のようだなと思った」新曲「タイムマシーン」制作秘話

小説家のカツセマサヒコがパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「NIGHT DIVER」。「東京の夜」に潜り、注目の音楽や映画、小説といったエンタメ作品から、街にあふれる喧騒や何気ない生活音まで、 あらゆるコンテンツやカルチャーにダイブして、リスナーを「想像」と「創造」に駆り立てます。

1月19日(木)の放送では、ゲストにシンガーソングライターの佐藤千亜妃さんが登場。新作EPの制作エピソードや、初オンエアとなった新曲「タイムマシーン」について語ってくれました。

(左から)パーソナリティのカツセマサヒコ、佐藤千亜妃さん


自身がボーカル、ギター、作詞作曲を担当していたバンド「きのこ帝国」が2019年に活動を休止した以降、ソロで音楽活動を継続。2023年1月25日(水)にはニューEP『TIME LEAP』をリリース。宇多田ヒカルの「Automatic」をサンプリングした収録曲の「タイムマシーン」が注目を集めています。

◆レーベル移籍によって変化したことは?

カツセ:前回にお越しいただいたのが2021年10月なので、1年ちょっとお会いしていなかったんですね。

佐藤:お久しぶりですね。あっという間に月日が経ってびっくりしています。

カツセ:元気にしてました?

佐藤:めっちゃ元気にしてました! 『KOE』のリリース後はツアーをしたりして、そのあとは大きな変化がありまして。実は、レーベルを移籍したんですよ。

カツセ:それが2022年のことですもんね。

佐藤:はい。A.S.A.Bというところに移籍しまして、今回は2作目のEPを出します。

カツセ:ご自身としてはかなり大きな引っ越しですよね?

佐藤:そうですね。制作スタイルもちょっとアップデートされている感じもあって、刺激的で楽しい日々です。

カツセ:前回の『KOE』がフルアルバムで、しっかりとしたバンドサウンドでずっしりとした印象があったんですね。この時代にアルバムを出すからには、という思いが凝縮された感じがすごく好きでした。

そして、去年出たEP『NIGHT TAPE』は5曲入りで軽やかに聴ける感じ、生活に寄り添う印象がありましたね。音も打ち込みが増えて、レーベルが変わっただけではなく、佐藤さん自身の変化を感じておりました。楽曲の作り方も変化があったのでしょうか?

佐藤:はい。時代が変化していくなかで、クリエイターとリスナーという、表現するものと受け取る人たち側の感覚がどんどん変わってきているなと、いろんなSNSとかを見て思うようになったんですね。

あと、昔から興味があったジャンル、ソウルとかR&Bみたいなところにも着手したいなという気持ちが出てきました。というのも、『KOE』で自分の納得できるバンドサウンドを追求したなという手応えもあったので、そこからさらに一歩進んだ形のクリエイティブを研究したいと思ったんですね。デモ楽曲も自分で打ち込みでビートを組んでいます。

カツセ:そうなんですね!

佐藤:あとは、ベースをリアルタイム入力してから、本当に弾いている風に書き込んだりとか、トラックメーカーがやるようなことを自分でやったりしながら曲を作るようになっていきました。その変化のなかで、どのレーベルがベストかなと考えて移籍に繋がっていったって感じです。

カツセ:じゃあ、楽曲ありきのレーベル異動だったんですね?

佐藤:音楽性と制作スタイルの変化といい感じにリンクして、レーベル移籍も決まっていった感じでしたね。

◆憧れのアーティストの名曲をサンプリング

カツセ:1月25日に新しいEP『TIME LEAP』がリリースされます。今日はそのなかから1曲、「ラジオで初オンエアしていいよ」と聞いているのですが、本当にいいんですか!?

佐藤:はい(笑)。ぜひお願いしたいと思います。

カツセ:オンエアする「タイムマシーン」は、宇多田ヒカルさんの名曲「Automatic」のイントロ部分がサンプリングされた楽曲です。「イントロのサンプリングがここまでドカンと入れたのがすごく挑戦的だな」と感じたのが第一印象でした。どういう経緯があったのでしょうか?

佐藤:「『TIME LEAP』というEPを作ろう」というテーマが最初にあって、そこから「過去の楽曲をサンプリングにして曲を作るのっていいよね」って話になったんです。海外の有名な曲だったりクラシックなんかもいいなと思ったんですけど、「あえてJ-POPもいいよね」って話にもなりました。

米津玄師さんが(楽曲「KICK BACK」で)モーニング娘。さんの曲をサンプリングした話もあって、そこから「好きなアーティストの名曲でもいいんじゃない?」となり、「私にとっての“神”は宇多田さんです」となりました。

宇多田さんのデビュー曲「Automatic」は、私が衝撃を受け、歌う人間を志したきっかけとなっています。

カツセ:へえ~!

佐藤:すごいプレッシャーのなか、曲を作ってはボツにして、作ってはボツにしての繰り返しでした。憧れの曲をサンプリングで使うっていうのは、自分でも本当に納得できないと宇多田さんに顔向けできないし、「宇多田ヒカルオタクとして頑張らなきゃ」と思いました(笑)。OKが出たときは本当に嬉しくって、夢のようだなと思いましたね。

カツセ:そうですよね。一生に一回しか切れないカードがあったとしたら、どう考えてもこれじゃないですか?

佐藤:本当にそうですね。

カツセ:あと、クレジットの作曲が「宇多田ヒカル・佐藤千亜妃」って並ぶんですね。知りませんでした。

佐藤:私も知らなかったので「エモ~!」って思いました(笑)。

◆「時間旅行」をテーマに据えた新作EP

カツセ:EP『TIME LEAP』のテーマが「時間旅行」ということで、昨年リリースされた「1DK」など全5曲が収録されています。先にテーマが決まっていたんですね?

佐藤:はい。『NIGHT TAPE』を作り終わったあたりで次の構想を始めていて、そのときにTIME LEAPという響きがいいなと思って、韻を踏みたくなっちゃったんです。NIGHT TAPEからのTIME LEAPみたいな。最初は言葉遊びみたいなところから思い浮かんだんですけど、考えれば考えるほど、いろんな要素を詰め込めそうなタイトルだなと思いました。

音楽の時代観だったり、ジャンルを盛り込めるし、過去、今、未来に思いを馳せるのも歌詞で描けそうだし、すごく幅の広いテーマになりそうだなと感じたので、そこからどんどん深めていった感じでしたね。

カツセ:なるほどなあ。

佐藤:最初から5曲のEPにしたいなってことは決まっていました。

カツセ:前作から「ここは絶対に変えよう」と思ったことはあります?

佐藤:前作はけっこうアーバンというか、チルな感じでテンポが落ち着いた曲が多かったんですね。なので、新作ではよりダンサブル、ダンスチューンみたいなアップテンポめの曲を入れたいなと思いました。そこが前作からアップデートしたいと考えていた部分ですね。他の3曲がどんな曲になるか楽しみにしていてほしいです。

<番組概要>
番組名:NIGHT DIVER
放送日時:毎週木曜 28:00~28:30
パーソナリティ:カツセマサヒコ
番組Webサイト:https://audee.jp/program/show/54455