家庭から排出された汚水が「肥料」に!? 循環型社会に貢献する取り組み「BISTRO下水道」とは?

青木源太と足立梨花がパーソナリティをつとめ、暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていくTOKYO FMのラジオ番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」(毎週日曜 7:30~7:55)。2月19日(日)の放送では、東京大学 大学院工学系研究科都市工学専攻 特任准教授 下水道システムイノベーション研究室の加藤裕之(かとう・ひろゆき)さんに、「食の恵みを育む! BISTRO下水道」をテーマに話を伺いました。


(左から)青木源太、加藤裕之さん、足立梨花



◆「BISTRO下水道」の取り組みとは?

加藤さんは、国土交通省や農林水産省、関係団体、自治体などで構成される「下水汚泥資源の肥料利用の拡大に向けた官民検討会」に副座長として参加しており、今回のテーマである「BISTRO下水道」の取り組みにも関わっています。「BISTRO下水道」とは、下水道で流れてくるさまざまな資源を集め、価値を高めて、食料として生産する取り組みです。

家庭などから排水したものには、リン、炭素などの有機物、窒素など、さまざまな資源が含まれているものの、「今までは地中に埋めてしまうことが多かったのですが、廃棄するのではなく(それらを使って)肥料やエネルギーなど、いろんなものに替えることができるんです」と加藤さん。

日本は、農業の肥料の原料となるリンの需要量、年間およそ30万トンのほぼ100%を輸入に頼っています。昨今、肥料の値段は、世界的な食糧需要の高まりや、リン鉱石の主要産出国の輸出制限などにより安定せず、乱高下を繰り返している状況です。こうした背景もあり、「BISTRO下水道」の取り組みに期待が集まっています。

そんな農業に欠かせないリンは、「家庭から出る水のなかにも多く含まれていて、下水道に集まる量は、年間のリンの需要量の1~2割もあるんです」と加藤さん。さらに、家庭などから出る水には、リン以外にも窒素、炭素などの資源が含まれており、リンと窒素はカリウムと共に“肥料の三大要素”であることからも、下水道から出てくる汚泥などを肥料として活用することにも注目が集まっています。

また、下水道から出てくる汚泥と聞いて“良くない物も含まれているのではないか”というイメージを持つ方も少なからずいますが、「私たちの健康に問題がないように、法律によって基準が定められています。(汚泥などを)肥料として使うには、どのぐらいの濃度でどのような物質が入っているかを分析し、安全なものだけが流通する仕組みができあがっています」と説明。

実際、下水汚泥から肥料を作っている自治体によっては、毎月肥料を分析し、その結果をWebサイトなどで公表するなど、安全性と安心感を確保するための取り組みもおこなわれています。

そして、下水汚泥からできた肥料を使って農作物の栽培試験をおこなったところ、収穫量が増えたことに加え、“味が良くなった”“土がふかふかになった”など、「今までよりもより良い農作物ができるという報告がたくさん届いている」と実績を紹介。このように、下水道は進化し、循環型社会にも貢献しています。

◆下水道に集められた資源で発電!?

番組後半では、「BISTRO下水道」を積極的におこなっている具体例として、佐賀市下水浄化センターの取り組みを紹介。

佐賀市下水浄化センターでは、下水汚泥に微生物を含む菌を加えて90度以上の超高温発酵をおこなうことで、雑草の種や病原菌を死滅させ、その後、さらに熟成させることで、良質な肥料が作られています。

実際、この肥料を用いて栽培したお米で効果を調べたところ、化学肥料で栽培されたお米よりも、アミノ酸がなんと55%も増えていたそうです。そして、その品質の良さが口コミで広がり、発売日には多くの農業関係者が行列を作るなど、毎年約1,400tが完売するほどの人気を博しています。

また、下水処理の過程では、再生可能エネルギーであるバイオガスも発生しますが、佐賀市下水浄化センターでは、このバイオガスを“発電”に利用しています。これによって、浄化センターで使う電力のうち約40%をまかなっているそうで、「カーボンニュートラルにもつながる取り組みを実施していることも、佐賀市のすごいところ」と加藤さん。

ほかにも、山形県鶴岡市では、市やJA、大学、民間企業等が連携して「BISTRO下水道」を推進しており、佐賀市と同様、肥料やエネルギーの活用など、さまざまな取り組みを展開しています。また、「BISTRO下水道」の取り組みによって生産された食材に「じゅんかん育ち」というブランドネームをつけて販売しているところもあります。なかには、ひと目でそれとわかるように「じゅんかん育ち」というシールを貼って販売されているものもあるそうです。

加藤さんは、「世界は今“水と食とエネルギーをいかに確保していくか”という時代になっています。地域や我々個人が、世界的な問題にどう貢献できるかが問われているなかで、下水道が世界に貢献していくための1つの道具になっていくと思いますので、ぜひ皆さんにも応援していただきたいです」と話しました。

今回の話に、足立は「『BISTRO下水道』という取り組みが、もっといろいろなところで広がってほしい。そのためにも、私たちにできることとして『じゅんかん育ち』というブランドネームで販売しているものを見つけたら買ってみる。そうすると、その処理場がさらなる取り組みをしてくれることにもつながるので、応援していきたい」とコメント。

青木は、「下水道のポテンシャルを感じました。肥料だけでなく、バイオガスを発電に利用しているとは驚きでした」と感服。「今まで単純に捨てられてきたもの、利用できないと思われていたものでも、環境や社会のためにいろいろな形で再利用していくのはとてもいいこと」と、一連の取り組みに賛同していました。


(左から)青木源太、足立梨花



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<番組概要>
番組名:青木源太・足立梨花 Sunday Collection
放送日時:毎週日曜 7:30~7:55
パーソナリティ:青木源太、足立梨花
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/collection/

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