モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。2月22日(水)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「『失業給付』のあり方を見直し 政府の狙いは?」。情報社会学が専門の学習院大学 非常勤講師・塚越健司さんに解説していただきました。
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仕事を失った人に国が支給する「失業給付」について岸田文雄首相は2月15日(水)、「自己都合で退職した人」の給付のあり方を見直す意向を示しました。この見直しについて岸田首相は「労働移動を円滑化するため」、つまり転職を促すためだと回答しています。
◆見直される「失業給付」…何が変わる?
吉田:まずは「失業給付」とはどのような制度なのか、改めて教えてください。
塚越:失業給付とは、働く意思と能力があるけれど“失業の状態”にあって、仕事を探している人が安定した生活を送るために払われるものです。財源は労働者と、使用者=会社が負担する保険料や国費で賄われています。失業給付には2種類あり、会社の倒産や解雇などによる「会社都合離職」と、転職やキャリアアップなどによる「自己都合離職」があり、それぞれ給付の内容などが異なります。
吉田:「会社都合」と「自己都合」で、失業給付の内容はどう変わるのでしょうか?
塚越:まず給付額は同じで、失業直前の6ヵ月分の平均賃金を出して、そのうちの5~8割となります。給付期間は、その人の年齢や雇用保険を払っていた期間などで変わってきますが、「会社都合離職」の場合は原則90日~330日支払われます。そして「自己都合離職」の場合は原則90日~150日の給付期間と、会社都合の離職のほうが給付期間が長いです。
重要なのは、この失業給付の受け取りが始まる時期が「会社都合」と「自己都合」の2つで異なる点です。どちらも手続きをしてから7日間待機しますが、会社都合離職は待機後にすぐ給付金が受け取れます。一方、自己都合離職の場合は、7日間の待機後に、さらに2ヵ月間給付を受け取れない「給付制限」という期間があり、その後で受け取り可能となります。
なぜ自己都合離職が給付までに時間がかかるかといえば、意図的に就職と離職を繰り返して失業給付を受給することを防ぐためです。今回の岸田首相の発言は、この自己都合離職の給付制限を見直そうというものです。簡単にいえば、会社都合離職のほうが有利になっているので、そこのバランスを見直す感じだと思います。
◆「失業給付」見直し…その狙いは?
ユージ:自己都合で退職した場合の「失業給付」を見直す意向ということですが、これにはどのような狙いがあるのでしょうか?
塚越:一言でいえば、この自己都合離職の給付制限期間を短くして、転職しやすい環境をつくることだと考えられます。例えば自己都合の離職で失業給付の支払いが遅くなると、(転職希望者が離職中生活できるだけの十分な資金がない場合は)転職に踏みだすための意欲などを妨げることになってしまいます。
2月15日(水)に開かれた会議で岸田首相は、失業給付の見直しについて「労働移動を円滑化するため」だと述べています。つまり、成長分野や人手不足の業界に転職しやすいような環境をつくり、経済の活性化を狙っているとみられます。
実際、3年前までは給付を受け取れない「給付制限」期間は3ヵ月でしたが、安心して転職できる環境づくりのため、期間を1ヵ月短縮して2ヵ月になりました。おそらく、この期間をさらに短くしようということを意図した発言だと考えられます。
一方で、意図的に就職・離職を繰り返して失業給付を受給する人が出てくるのでは? という点に関してはすでに、“転職後1年以上働かないと新たな失業給付をもらえない”といった制度などもありますが、より一層の対策をおこなうというアピールも必要だと思います。
ユージ:「失業給付」のあり方を見直すことについて、塚越さんはどのように受け止めていますか?
塚越:日本の企業は昭和の時代に、年功序列や新卒一括採用などとともに定年まで同じ会社に勤め続ける、いわゆる「終身雇用」の習慣が定着しました。しかし、昨今はこうした制度を維持するのは難しく、またグローバルな経済環境では求められる技能も目まぐるしく変化します。
そこで、自分の技能を活かして、能力に合ったさまざまな企業で働くことで、結果的に国全体で高賃金で生産性の高い労働ができます。いわゆる「ジョブ型雇用」というもので、岸田政権もこの流れを促進しようとしています。
これに加えて、「自己都合と会社都合の離職で待遇が違い過ぎるのはおかしい」という声もあるので、今回の見直しは基本的に歓迎されるものです。これによって、転職は当たり前という風潮を生み出すことになります。そうなれば、企業も必要な人材を確保しようと高待遇、高賃金を提示するようになるので、労働者にとっても良いことです。
一方で、今後想定される給付制限期間を短くするような対策で、「本当に転職が促されるのか?」という疑問の声もあり、より踏み込んだ対応が必要という意見もあります。例えば、再就職が決まると給付が止まりますが、失業期間が短い人が損をしない仕組みをつくることで、より素早い転職を後押しすることも必要です。
加えて言えば、失業給付を受給中に就職に必要なスキルを身につける「離職者訓練」という制度もあります。要するに、今話題の「リスキリング」(※Reskilling……スキルを付け直すこと、学び直すこと)です。こうした制度の一層の周知・充実も必要だと思います。
<今日のユジコメ>
僕が気になった部分は、失業給付をもらう場合、会社都合で辞めたほうが、早くお金をもらえて、もらえる期間も長いところです。一方で自己都合の場合は、お金をもらえるのが遅く、その期間も短いです。
会社から離れるきっかけが、自分であるか、会社であるかによって、状況は変わります。携わってきた業務は変わらないはずなのに、辞めるきっかけでもらえる金額が変わってしまったり、違いがあったりするのは疑問に思います。
会社を辞める理由は何であれ、誰にでもやり直すチャンスは必要です。辞め方でフォローの差をつけるのではなく、平等に待遇してほしいと感じました。
吉田明世、塚越健司さん、ユージ
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聴取期限:2023年3月2日(木)AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世
番組Webサイト:
https://www.tfm.co.jp/one/