「25mプール2万8,000杯分」の除去土壌…“福島の復興”のために環境省がおこなっている取り組みとは?

青木源太と足立梨花がパーソナリティをつとめ、暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていくTOKYO FMのラジオ番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」(毎週日曜 7:30~7:55)。3月12日(日)の放送では、環境省環境再生・資源循環局 参事官補佐の西川絵理(にしかわ・えり)さんに、「あゆみ続ける福島の今と、その先の未来」をテーマに話を伺いました。


(左から)足立梨花、西川絵理さん、青木源太



◆福島の復興に欠かせない「除去土壌」の処分

当番組では、昨年10月にも“福島の復興”をテーマとして取り上げ、「廃炉」や「ALPS(アルプス)処理水」について深掘りしていきましたが、福島復興のためには「除去土壌」の処分も必要です。

福島第一原発の事故により、周辺地域に放射性物質が放出され、環境汚染が発生したため、環境省では、生活環境を取り戻すために“除染”と呼ばれる作業をおこなってきました。除染にもいくつか方法があり、例えば、地面に付着している放射性物質は、ある程度の深さまでしか浸み込まないことが分かっているため、「表面を剥ぎ取ることで、放射性物質を取り除くことができます」と西川さん。

そのほか、建物や道路を“洗う”といった除染作業をおこなったこともあり、「現在の福島の空間線量率、つまり1時間あたりの放射線量は、海外の主要都市とほぼ同じ水準になっています」と説明します。

そんななか、地面の表面を剥ぎ取る作業により発生したのが、大量の「除去土壌」です。福島の深刻な環境被害と、それによる住民の方々への大きな負担を考慮して、2045年3月までに、この除去土壌を福島県外で最終処分することが、国の責務として法律で定められています。

これまでは福島県内各地に仮置きをしていましたが、現在は事故による被害が深刻だった大熊町と、双葉町に立地している中間貯蔵施設へ運んでおり、2015年3月以降、これまでに1,341万㎥の除去土壌が搬入されました。これは25mプール2万8,000杯分に相当する量です。

福島県外で最終処分されるまで、この施設で一時的に安全に集中管理することになっており、「この受け入れに関しては、大熊町、双葉町の地元のみなさまに、大変に重いご決断をしていただきました」と西川さん。

また、県外最終処分の実現に向けて、除去土壌の再生利用の実証事業や、除去土壌の量を減らすための技術開発に加えて、全国的な理解醸成活動などを実施しています。

◆「除去土壌」は再生資材として活用可能!?

最終処分に向けて、カギになっているのが「除去土壌の再生利用」。保管されている除去土壌の約4分の3は、放射能濃度が低い土壌のため、「除去土壌を50cmの厚さの普通の土で覆えば、99%以上の放射線がカットできます。なので、その表面を普通の土などで覆って、風で飛んだり、流れ出したりすることを防ぐ対策を講じることで、土木工事などの基盤となる盛土として利用することも可能になると考えています」と説明。

なお、除去土壌の再生利用は、“安全性の確保”を大前提として、追加被ばく線量が年間1mSv(ミリシーベルト)を超えないように、適切な管理のもとでおこなうこととしています。ちなみに、日本で普通に生活するなかで受ける放射線量は1年間に1人あたり平均約2.1mSVだそうです。

除去土壌を再生資材として活用することができれば、最終処分する除去土壌の量を減らすことができると考えられていることから、「現在、再生利用の安全性を確かめるための実証事業を福島県飯舘村の長泥地区で進めており、花や野菜などの栽培実験もおこないました」と報告します。

このような取り組みを進めるために必要なのが、若い世代の方にも“福島の復興へのあゆみ”を知っていただくことです。そこで環境省では、福島の今と未来を伝えるため、全国から集まった学生などが復興の現状や福島県が抱える課題を見つめ直し、次世代の視点から情報を発信することを目的とした「次世代ツアー」を実施。

このツアーについて、「地域・まちづくり、観光、農業、新産業・新技術、脱炭素の5つのテーマに沿って福島の現状を知ることができる場所を巡ってもらいました」と西川さん。

また、このツアーに参加した若者たちからは、例えば、中間貯蔵施設の見学では、「実際に目の当たりにすることで、除染土壌の量の多さやプロセスの難しさ、苦労を肌で感じた」という声や、東日本大震災・原子力災害伝承館の見学では、「被災した人たちのリアルな声を知ることができた。自分事として考えることができた」といった声があったそうです。

最後に、西川さんは「今回紹介したような、除去土壌の県外最終処分に向けた取り組みの現状や、未来志向の復興に向けた取り組みについても、ぜひ現地を訪ねていただいて、自分の目で見て感じていただきたいと考えています。

現地見学会の情報や福島の未来に向けた取り組みは、環境省の特設サイト『福島、その先の環境へ。』に順次掲載しておりますので、ぜひご覧ください」と紹介。

さらには、「除去土壌の再生利用について、その必要性や安全性に関する対話フォーラムなども全国で開催し、情報発信をしています。次回は、3月18日(土)宮城県仙台市にて対話フォーラムを開催します。ゲストとして、フリーアナウンサーの政井マヤさんにご登壇いただきます。オンラインでも参加できますので、そちらの情報も『福島、その先の環境へ。』をご覧ください」と参加を呼びかけました。

足立は、環境省が「次世代ツアー」を実施していることが印象に残ったそうで、「若い子たちが、実際に福島のあゆみを知るために福島に行って、いろいろなことを学ぶのは素敵なことだと思うし、これから風化させないためにも必要なことですので、また開催してほしい」と言います。

青木は、「除去土壌」を再生資材として活用することができることに着目。「もちろん“安全性の確保”が大前提で、適切な管理のもとではあるんですけど、除去土壌再生資材として活用することができれば、最終処分する除去土壌の量を減らすことができますから、こうした取り組みも進めてほしい」と話しました。


(左から)青木源太、足立梨花



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<番組概要>
番組名:青木源太・足立梨花 Sunday Collection
放送日時:毎週日曜 7:30~7:55
パーソナリティ:青木源太、足立梨花
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/collection/

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