今の「日本の医療」の課題点とは?ファストドクター水野代表取締役「患者の医療情報のリレーが途切れてしまうこと」

笹川友里がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「DIGITAL VORN Future Pix」(毎週土曜 20:00~20:30)。この番組では、デジタルシーンのフロントランナーをゲストに迎え、私たちを待ち受ける未来の社会について話を伺っていきます。3月18日(土)の放送は、前回に引き続き、ファストドクター株式会社 代表取締役の水野敬志(みずの・たかし)さんをゲストに迎え、お届けしました。


(左から)水野敬志さん、笹川友里


◆診療現場に近いサービスならではのやりがい

2016年8月、医師である菊池亮さんがファストドクター株式会社を設立し、医療プラットフォーム「ファストドクター」の運営がスタートしました。水野さんはその後2018年からファストドクターの代表取締役に就任。当時の医療業界について、「カルテの電子化などは比較的進み始めていたフェーズでしたが、日々の診察のなかで1つひとつの現場にITやデジタルの力を活用していくというところは、まだまだ進んでいませんでした」と振り返ります。

そこを推し進めていくことに可能性を見出した水野さんは、外資系コンサルティングファームや楽天株式会社で培ってきた経験を活かし、デジタルの力を活用した“仕組み化”に注力。

スタート当初は手探り状態だったものの、「我々のサービスの良いところは、患者さんから直接感謝をされること。患者さんからお手紙をもらったことも何度もありますし、患者さんから寄せられた感謝の声が毎日、社内SNSで全社員に届くんです。そうした声がすごく励みになって、“日本全国のインフラにしていきたい”という思いの原動力になっています」とやりがいを語ります。

◆「ファストドクター」の強みと今後の課題

現在「ファストドクター」には2,000人以上の医師が登録、約600人の看護師が活動しており、北海道、東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県、愛知県、大阪府、兵庫県、奈良県、京都府、滋賀県、福岡県の対象エリア(※番組放送時/一部対応エリア外あり)にて、日々、救急往診をおこなっています。

「我々の強みは“リアルオペレーション”があること。医師・看護師だけではなく、ロジスティックやプラットフォーム運営に関わる多くの人員を抱えながら、日々の診察を回している状態をベースとする仕組みを作れていることが強みだと思っています」と胸を張ります。

サービスの対象エリアを地方へと広げていくにあたり、地域医療現場との連携における課題があると水野さん。サービスを開始した当初は、夜間に救急往診をおこなったものの、その後の経過が良くならず、その当日や翌日に救急車で運ばれてしまったり、かかりつけ医に診てもらったりするケースが時折あったそうで、「そうしたときに、ファストドクターで診察した内容が全然引き継がれておらず、後で診察された医師からお叱りを受けたこともありました」と明かします。

その反省を活かし、現在は紹介状で連携を図っているものの、まだ紙ベースでの対応のため、時間や負担がかかってしまうなどの課題点も。

その解決案としては、「現在、紙ベースでやりとりされている紹介状を、電子カルテ上で、1クリックで紹介先の病院と共有可能になれば、地域医療連携として患者さんを送るだけでなく、その患者さんに関する情報(既往歴など)も一緒に送れるようになる。そういった世界をつくれると、我々にとっても望ましい」と前を向きます。

◆これからの日本の医療現場に必要なこと

これからの日本の医療現場に必要なこととして、水野さんは「医療情報共有」を真っ先に挙げます。「患者さんが今どういう状況で、医師たちがどのような処置をおこなったのかなど、情報のリレーが途切れてしまうのが、日本の医療の課題」と強調します。

例えば、「我々が初めて救急往診に伺ったときに、患者さんのこれまでの医療的な情報が一切ない状態から診察を始めなければならず、かかりつけ医が普段どのような処置をしていたのか、普段どんなお薬をもらっているのかを患者さんから直接聞き出さなければならない。これらを事前に共有された状態で診ることができれば、もっと良い品質の処置ができると思うのですが、そこの情報が分断されてしまっている」と指摘します。

それは逆もしかりで、ある程度は改善されてきましたが、ファストドクターが診察した内容も、その後、患者さんがかかりつけ医や救急病院に行く際にすべてを共有しきれていないのが現状であって、「もっとスムーズに患者情報が流れていければ、日本の医療の質も上がりますし、初診での診断も、もっと早く、もっと精度を上げて効率的におこなうことができるようになります。ファストドクターは初診かつ救急で患者情報がないなかで勝負をしてきたからこそ、そういった課題に貢献できるサービス開発をしていきたい」と展望を語ります。

さらに、今後を見据えて大きな変革に取り組み始めていると水野さん。「救急往診は患者さんの治療体験にとって、一時的な”点”でしかありませんでしたが、これからは地域医療や行政との連携をさらに強めていくことで、線的・面的に貢献できるようにしていきたい」と声を大にします。

そのためにも、「先ほど課題として挙げた患者さんの医療に関する情報、パーソナル・ヘルス・レコード(PHR)をファストドクターに預けてもらうことで、いざというときにより良い救急の診察体験を提供できる。また、そういう関係を患者さんだけではなく地域の医療機関とも築くことができれば、もっと日常的に我々を頼ってもらえるようになるのではないかと思いますし、医療者からは安心して患者を預けてもらえるのではないかと思っています。救急だけのファストドクターから、患者さんの治療体験に寄り添い、医療者の負担を軽減させるファストドクターになれれば」と力を込めていました。

次回3月25日(土)は、ゲストにバイエル薬品株式会社 オンコロジー事業部 消化器領域・デジタル マーケティング部長 石倉浩司さんをお迎えしてお届けします。製薬業界の未来についてなど、貴重な話が聴けるかも!?

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<番組概要>
番組名:DIGITAL VORN Future Pix
放送日時:毎週土曜 20:00~20:30
パーソナリティ:笹川友里
番組Webサイト: https://www.tfm.co.jp/podcasts/futurepix/

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