手島千尋アナウンサーがパーソナリティを務めるTOKYO FMのラジオ番組「防災FRONT LINE」(毎週土曜 8:25~8:30)。3月25日(土)の放送では、都市防災に詳しい東京大学大学院教授の廣井悠先生に「防災行政無線」について伺いました。
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防災行政無線とは、区民・市民の生命や安全を守るために必要な緊急情報を伝える情報伝達手段です。地震などの災害が起きたときは、この防災行政無線から避難行動や自治体の情報を知ることができます。設置数は自治体によって異なりますが、例えば、TOKYO FMがある千代田区には、115ヵ所ほど設置されています。
ちなみに、災害時には、スピーカーからどんな情報が流れてくるのでしょうか? 廣井先生によると、「(防災行政無線は)災害に関する情報を伝えてくれます。例えば、『○○区の人は避難してください』『給水拠点は○○にあるので、ここに集まってください』『○○で火災が発生しているので逃げてください』などです」と説明。災害時は情報が錯綜しますので、この防災行政無線から流れる情報を確認するようにしましょう。
また、この防災行政無線は情報を知らせてくれるだけではありません。災害時に、ここから流れてくる“言葉”にも注目してください。
「緊急避難命令、緊急避難命令」「大至急、高台に避難せよ」
この言葉は、東日本大震災の際、大津波警報が出された茨城県大洗町が防災行政無線で住民に避難を呼びかけた“命令調”の文言です。沿岸部に巨大津波が押し寄せ、東北を中心に大勢の方が亡くなり、行方不明者も出ました。茨城県では、津波によって6人の方が亡くなりましたが、大洗町では4メートルを超える津波に襲われながら、死者は1人も出ませんでした。
もちろん、東北の津波よりも規模が小さかったことが(要因として)挙げられますが、大洗町では、防災行政無線を使って普段は使わない命令調で住民に呼びかけ、次々と内容を差し替えて継続的に放送をおこないました。
津波避難をめぐる課題として、“正常バイアス(集団と異なる行動を取りにくい心理状態)”や“オオカミ少年効果(警報を出しすぎて、実際に災害が起きても誰も信用せずに被害を受けてしまうケース)”など、警報が出ていることを知りながら避難しない心理的な働きが指摘されてきました。
このような視点などから、命令調で避難を呼びかけたことなどによって市民に届いた可能性はあります。このように、流れてくる情報だけでなく“言葉の使い方”にも注目して聞くことも大切です。
私たちの命を守ることへとつながる防災行政無線ですが、廣井先生は「弱点もある」と話します。「都市部は(防災行政無線の音声が)反響してしまって、(スピーカーの)近くに行かないと聞き取りにくいときもあるし、雨が降っているときもなかなか聞こえづらいということもあります。
宮城県名取市では、東日本大震災のときに防災行政無線が壊れてしまって避難できずに亡くなってしまった方もいるので、とても重要なインフラです。(事前に設置場所を調べておくなどして)防災行政無線が聞き取りやすい場所を知っておくといいかもしれません」
自治体によっては、各自治体のWebサイトに防災行政無線の場所が載っています。あなたの町の防災行政無線がどこにあるかを確認しておくと安心です。
<番組概要>
番組名:防災FRONT LINE
放送日時:毎週土曜 8:25~8:30
パーソナリティ:手島千尋
番組Webサイト:
https://www.tfm.co.jp/bousai/