モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。3月30日(木)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「『110番映像通報システム』、4月1日から本格導入」。情報社会学が専門の学習院大学 非常勤講師・塚越健司さんに解説していただきました。
※写真はイメージです
「110番」通報した人と警察が、スマートフォンなどで現場の映像などを共有できる「110番映像通報システム」の導入が、4月1日(土)から本格的にスタート。これにより迅速な初期捜査が期待される一方で、システムの利用には注意点があります。
◆「事件・事故現場」の様子を「画像・映像」で共有
ユージ:新しい通報システム「110番映像通報システム」とは、どのようなものですか?
塚越:この通報システムは、警察に通報する際、音声だけではなかなか伝えづらい事件や事故の現場状況をスマホやタブレットから動画や画像で送り、リアルタイムで状況を伝えられる警視庁のシステムです。
通報を受けた職員が現場の映像が必要と判断した際、通報者の同意を得てスマホなどのショートメッセージに専用のURLを送り、通報者はそこにアクセスして映像を送る……という流れになっています。
あくまでも、職員が「映像が必要」と判断したときのみに利用されるシステムということで、常に映像を共有できるわけではありません。また、動画などを送る際には、通報者に事前の同意が求められ、映像や画像は原則として取得から7日後に自動消去されます。
ユージ:なるほど! こちらからではなく、向こうから「送ってください」と求められたら、指定のURL経由で送るんですね。この通報システムは、期待できそうですか?
塚越:事件や事故に遭遇したときは、冷静ではいられないですよね。誰でもスマホで動画を撮れる時代なので、状況を伝えるという意味では、非常にわかりやすいかなと思います。
実はこのシステムは、去年10月から試験運用されていて、今年の2月末までの5ヵ月で受理した件数は、映像・画像あわせて約2,300件。その内訳は、行方不明者の捜索など「保護・救護関係」が48%、不審人物や車などの「各種情報」が18%、事故や違反といった「交通関係」が16%となっています。
実際に、行方不明になった子どもの画像を母親が送ったことで子どもが発見されたり、当て逃げの車の画像から犯人の割り出しにつながったり、非常に効果はあったということです。特に迅速な対応が求められる場合などは、写真のほうが圧倒的にわかりやすいかなと思います。
◆システムの利用上の注意点は?
ユージ:ただ、利用の注意点もあるそうですね?
塚越:いくつか注意が必要です。まず、画像・動画送信にかかる通信費用は、自己負担になっています。また、警視庁のWebサイトでは、「動画撮影では公の場所から肉眼で見える範囲に限定して撮影する」など、肖像権やプライバシーへの配慮を求めています。
例えば、「変な音が聞こえるから……」と言って、他人の家の敷地内に勝手に入って撮影するようなことになってしまうと、状況によっては逆に通報者側の問題になってしまう可能性もあります。
ユージ:「より良い状況証拠を……」という気持ちもわかりますが、一線は超えてはいけないですよね。
塚越:そうです。その一線は超えないように注意が必要です。あとは虚偽通報。例えば、嫌いな人を不審者として通報するようなイタズラも含めて、そうしたものは処罰の対象になる可能性があると警視庁のWebサイトには記載されています。
大きな問題としては、手続きが煩雑ということが挙げられます。最初に通報して、URLが記載されたショートメッセージが送られてきて、URLをクリックして映像を送る……という流れですが、事件現場は緊迫していて余裕がありません。
また、プライバシーの問題などもありますが、今後、簡略化できるシステムの構築が課題かと思います。例えば、スマホの緊急通報システムがありますので、場合によっては、最初から動画を撮影しながら通報できるシステムなども、今後は運用によっては考えられるかなとも思います。
あともう1つは、やはり「野次馬問題」です。これはスマホ時代の1つの問題でもあります。事件を撮影するのは大事です。しかし、状況によっては、目の前の被害者を救済するほうが大事な場合もあります。
(状況証拠として)事件・事故を撮影することも大事ですが、なんでも撮影して送るシステムに依存し過ぎてしまうと、“自分で助けよう”という判断ができなくなってしまいます。これは本当にバランスの問題ですが、「通報するのか?」「その場で行動したほうがいいのか?」は、各自が考える必要があるかと思います。
◆“犯罪の抑制”につながる可能性も?
ユージ:110番通報にも映像などが使えるようになるとのことで、今後、スマホの機能や通信システムなどの進化が“犯罪の抑制”にもつながっていくのでしょうか?
塚越:こうしたシステムが普及・周知していくと、(事件・事故現場付近に)人さえいれば“全国どこでも監視カメラ”の状況が作れますよね。今でも「何かあれば、すぐに撮影されるのでは……?」と多くの人は考えていますが、この意識がより強くなるので、一定の抑止力にはなるかもしれません。
ただ、先ほど申し上げた通り、「不審だ」という理由でなんでも通報できてしまうと、プライバシーの侵害になり、善意からの通報でも、他人に迷惑をかける可能性もあります。状況にもよると思いますが、運用のあり方も含めて、今後、警視庁のほうでもいろいろと実態を見て、やり方を変えるといったことも必要かと思います。
先ほども申し上げましたが「今、通報して動画を送るべきなのか?」「すぐに助けるべきなのか?」などの選択肢が増えるので、(現場に居合わせた人は)迷って大変だと思いますが、その辺の判断は、これからみなさんと考えていければと思います。
吉田明世、塚越健司さん、ユージ
<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世
番組Webサイト:
https://www.tfm.co.jp/one/