青木源太と足立梨花がパーソナリティをつとめ、暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていくTOKYO FMのラジオ番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」(毎週日曜 7:30~7:55)。4月9日(日)の放送では、大人の社会科見学企画第7弾として、経済産業省 商務情報政策局 情報産業課 総括補佐の羽原健雄(はばら・たけお)さんに、「目指せ日本復権! 半導体の世界」をテーマに話を伺いました。
(左から)青木源太、羽原健雄さん、足立梨花
◆私たちの暮らしに必要不可欠な「半導体」
半導体とは、スマートフォン、パソコンなどの電子機器や、電車、自動車など、電気で動いたり、制御されたりしているほぼすべてのものに入っており、その頭脳の役割を果たすものです。つまり、半導体がなければ、スマホもパソコンも使い物にならないため、私たちの暮らしになくてはならないものと言えます。
今後さらにデジタル化、脱炭素化を進めていくなかで、「その実現に半導体はなくてはならないもの」と羽原さん。そのため、世界の主要な半導体メーカーは、「テクノロジーや製造技術に磨きをかけ、熱戦を繰り広げている状況」と言います。
半導体の種類は、“先端半導体”と“従来型半導体”とに大きく分けられます。先端半導体は、パソコンやスマホ、自動運転の車などに用いられて高度な計算や情報処理をおこないます。一方で、従来型半導体は、家電などによく用いられ、単純な計算や情報処理、電流や電圧の制御などをおこないます。
なお、その先端半導体分野に強くてシェアが高い国・地域は、アメリカや台湾、韓国で、日本の現状はどうかというと、「SDカードやUSBメモリなどの情報を記憶する半導体は作れるのですが、高度な計算や情報処理をする先端半導体分野には参入していない」と説明。
日本はかつて、半導体の世界シェアで50%を超える時期がありましたが1990年代以降、パソコンや携帯電話などの需要が伸びるようになると、徐々にその地位が低下していき、今では10%を切る状況です。
日本が、先端半導体の分野に参入できていない背景の1つとして、日本の半導体が好調だった時期に、日米間で半導体の貿易摩擦が生じ、日本政府が半導体産業を支援しづらい時期がありました。そのあいだに、台湾や韓国政府が国内の半導体産業の支援に力を入れたため、従来型半導体だけではなく先端半導体分野の開発も進め、シェアを高めていきました。
今、世界はデジタル化、脱炭素化を進めているため「今後も半導体の需要が増大していくことは確実です」と羽原さん。この大きな市場で、「日本が存在感を示し、世界に貢献していくポテンシャルは十分にあると考えています。また、経済安全保障の観点からも、半導体に力を入れていくことは非常に重要」と力を込めます。
◆半導体製造の経済波及効果は絶大!?
半導体を作るにはさまざまな素材や製造装置が必要で、それらすべてを1つの国で賄うことは不可能なため「同盟国や有志国と連携することが重要」と話します。また、半導体の工場を整備するには多額の投資が必要です。そこで日本は法律を改正し、予算を計上して、先端半導体の生産施設の整備、及び生産をおこなう企業に助成することとしました。
羽原さんによると、昨年は3件の助成が決定し、そのうちの1つは、半導体製造メーカーの世界最大手・台湾のTSMCです。現在、2024年の稼働を目指して熊本県に新工場を建設中で、日本政府はその誘致にあたって基金をつくり、最大4,760億円の支援を決定しています。
そして、この工場の運営を担うのは、TSMCの子会社で日本の企業も出資しているJASM(ジャスム)です。現在、JASM熊本工場では、本来3年を要する建設を1年半で終わらせる速さで工事が進められています。
さらに、人材育成の面でも、高等専門学校で半導体の専門知識や技術を習得するための新しいカリキュラムづくりが進められていたり、熊本大学では、半導体の製造・開発に携わることができる人材育成をおこなう新しい学部創設の準備が進んでいます。
そして、雇用に関してはJASMが直接雇用する1,700人を含めて、地域全体で7,500人の雇用が見込まれています。また、JASM熊本工場の誘致が公表されると、半導体関連企業も熊本を中心に、九州の工場に新たに投資することを公表。その数は、わかっているだけで31社です。実際にJASM熊本工場が稼働すれば、熊本県内の経済波及効果が、2024年からの2年間で1兆8,000億円、2022年から31年までの10年間では、4兆2,900億円にものぼる試算もあります。
◆「次世代半導体」の開発に乗り出した日本
未来の社会で、完全自動運転の車やドローンによる配送、超精密な気象予測などを実現させるためには「次世代半導体」の開発が必要不可欠です。
次世代半導体とは、2nm(ナノメートル)以下という非常に小さい半導体で、「まだ世界中のどの企業も実用化に成功していない」と羽原さん。そのため、半導体トップメーカーを有するアメリカ、韓国、台湾だけでなく、欧州も乗り出し、今、世界中で次世代半導体の開発が加速しています。そんななか、「すでに日本は、アメリカや欧州と一緒に次世代半導体の開発を推進していくことに合意している」と話します。
アメリカは先端半導体のシェアは高いものの、自国だけで次世代半導体の開発をしていくのは厳しい状況。一方、日本は先端半導体の生産には他国に遅れを取っていますが、「半導体の製造装置や素材の分野では強さを発揮しています。なので、日本とアメリカ、欧州がタッグを組めば、次世代半導体の開発も夢ではありません」と期待を寄せます。
最後に、羽原さんは「今、政府では半導体産業の国際的な競争力を強化するため、力を注いでいます。半導体産業の競争力が強化されることで、みなさんの生活が今よりもっと便利になるだけでなく、経済的にも潤う社会が期待されています。ぜひ、これからの半導体産業に興味を持って見守ってください!」と呼びかけました。
足立は、現在、熊本に工場が建設中であることに着目し、「(半導体関連の)工場ができると、いろいろな可能性が広がることが面白いなと思いました。半導体は自分たちで作れるわけじゃないから遠い存在のものに思えていたけど、意外と身近にあるものなんだと改めて感じることができました」とコメント。
青木は、日本が次世代半導体産業に参入することについて、「先端半導体の開発に遅れを取っている現状はあるが、半導体の製造装置や素材の分野では強さもありますし、まだまだ日本に求められる役割やできることがあると思うので、期待しています」と、さらなる可能性を感じているようでした。
(左から)青木源太、足立梨花
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聴取期限 2023年4月17日(月) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:青木源太・足立梨花 Sunday Collection
放送日時:毎週日曜 7:30~7:55
パーソナリティ:青木源太、足立梨花
番組Webサイト:
https://www.tfm.co.jp/collection/