売上収益“1兆円”超え! 中外製薬が掲げる“未来のヘルスケアの形”とは?

笹川友里がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「DIGITAL VORN Future Pix」(毎週土曜 20:00~20:30)。この番組では、デジタルシーンのフロントランナーをゲストに迎え、私たちを待ち受ける未来の社会について話を伺っていきます。4月29日(土・祝)の放送は、中外製薬株式会社 上席執行役員デジタルトランスフォーメーションユニット長の志済聡子(しさい・さとこ)さんをゲストに迎え、お届けしました。


(左から)志済聡子さん、笹川友里



志済さんは、1986年に日本アイ・ビー・エム株式会社に入社。官公庁システム事業部、ソフトウエア事業部などで部長を歴任後、ニューヨークのIBM Corporationに出向し、帰国後、2009年に執行役員公共事業部長に就任。その後も執行役員としてセキュリティー事業本部長や公共営業本部長を歴任した後、2019年に中外製薬に入社。デジタル・IT統轄部門長を経て、2022年より現職に就いています。

◆独自の技術力を活かした中外製薬の“創薬力”

自社の事業内容について、志済さんは「研究開発型の製薬企業で、“薬の種”を作る独自の技術力をもって開発しているところが強みです」と説明。また、今年4月に創薬エンジンである新研究拠点「中外ライフサイエンスパーク横浜」が稼働を開始し、「創薬力を最大限に発揮できる体制が整いました」と自信をのぞかせます。

昨年の実績では、売上収益が初めて1兆円を超え、Core営業利益も4,517億円と好調で、6期連続の増収増益を果たしていると志済さん。「約7,700人規模の従業員を抱え、がん領域の売上は国内トップ。そして、バイオ医薬品の1つ、抗体医薬品を多数取り扱っているのが特徴です」と話します。

また、同社は世界のトップ製薬企業であるスイスのロシュ・グループの重要なメンバーであるとともに、東京証券取引所プライム市場の上場企業として自主独立経営のもと、「新たな治療法を待ち望む世界の患者さんに、革新的な医薬品がお届けできるよう、イノベーションに挑戦している会社です」と胸を張ります。

◆中外製薬が打ち出す新たなデジタル戦略とは?

志済さんが中外製薬に入社したのは、2019年5月。当時社長だった特別顧問の小坂達朗(こさか・たつろう)さんから「デジタルを使って本気で中外製薬を変えるつもりで来てほしい。特にビジネスの根幹である創薬の部分での活用を進めて欲しい」と声をかけられ、「心を動かされました」と振り返ります。

そして、2030年に向けた新たなデジタル戦略として「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」を2020年3月に発表しました。

これを打ち出した理由について、「創薬だけではなく、デジタル技術を活用して事業全体を効率化していくことを目指していたので“全社でDX(デジタルトランスフォーメーション)化を進めていきたい”という大きな目標がありました。

そのためにも、社員一人ひとりが“何のためにDXをやるのか”“中外製薬がDXで何を目指すのか”をしっかり共有するようなビジョン、方向性が必要だと感じて策定しました」と志済さん。現在も、デジタルを活用した革新的新薬の創出、すべてのバリューチェーンの効率化、デジタル基盤の強化を3つの基本戦略として取り組んでいます。

また、「創薬の領域はAIと相性が良い」と力を込めます。例えば、新薬の候補となる抗体(特定の異物にある抗原に特異的に結合して、その異物を生体内から除去する分子)の分子設計は膨大にあることから、膨大な試行錯誤が必要で、研究者にとってはすごく難しく骨の折れる作業でした。

そこで、効率的かつ迅速におこなうことができる機械学習のアルゴリズムを自社で開発。AIを用いた抗体創薬支援技術「MALEXA(マレキサ)」を活用することで「研究者が思いつかなかったような配列や思わぬものを生み出してくれる。さらに、機械学習などを用いて効率化することで創薬にかかる時間を縮められないか、という大きなチャレンジとして期待しています」と話します。

◆中外製薬が掲げる“未来のヘルスケアの形”

高齢化が進むなか、以前は「不治の病」と言われていた病気でも治療薬が開発されたものもあります。そうした背景について、志済さんは「今までよりも病気に対する理解が進んできていて、技術の進歩などによって、これまでに多くの医薬品が開発され、新たな医薬品を待ち望む患者さんにお届けすることができるようになってきた」と力を込めます。

そこで笹川が、特に開発が待たれているジャンルを尋ねると、「がんについては、まだまだすべてのがん領域がカバーされているわけではありませんし、希少疾患領域などではいまだに有効な治療薬がない。私たちにとっての挑戦は、まさに『アンメット・メディカル・ニーズ(Unmet Medical Needs/医療ニーズを満たせていない領域)』(に応えていくこと)だと思っています」と志済さん。

また、中外製薬が得意としている分野として、「特定の疾患を目指した医薬品の開発というよりも、まずは創薬技術でもって疾患を特定せずに標的に対してしっかりと効果が出せるような化合物を世の中に生み出す“技術ドリブン”」と解説。

例えば、がんや生活習慣病といった括りではなく、「ある特定の化合物に対して作用するのを“抑える”“追い出す”などの方法に注目し、化合物の設計を一部変えたり、今まで1つでやっていたものを2つ組み合わせてやってみるなど、疾患に対して技術で幅広く適応できるようにすることが創薬では重要」と説明します。

そして最後に、中外製薬が掲げる未来のヘルスケアの形について伺うと、「デジタルとサイエンスの掛け合わせによって、『アンメット・メディカル・ニーズ』に応えていけるような創薬技術を持つこと」と声を大にします。

さらに、もう1つ目指していることとして“個別化医療”を挙げ、「同じ疾患でも人によって症状は少しずつ違いますから、人に合った最適な治療法が選択できる、あるいはそういったものを生み出すことによって、社会全体の患者さんのクオリティ・オブ・ライフ(生活の質)を上げる。そして、患者さんに合った医薬品を提供することによって、無駄のないサステナブル(持続可能)な社会保障制度への貢献を目指していきたい」と展望を語りました。

次回5月6日(土)の放送も、引き続き志済さんをゲストに迎えてお届けします。社内におけるDXや志済さんのキャリアや仕事術についてなど、貴重な話が聴けるかも!?

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<番組概要>
番組名:DIGITAL VORN Future Pix
放送日時:毎週土曜 20:00~20:30
パーソナリティ:笹川友里
番組Webサイト: https://www.tfm.co.jp/podcasts/futurepix/

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