本部長・マンボウやしろと秘書・浜崎美保がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「Skyrocket Company」。毎月第2水曜日に、我々が知っているようでよく知らない「お金」や「経済」の仕組みなどを、専門家の方に詳しく解説してもらうコーナー「スカロケ資産運用部」をお届けしています。
5月10日(水)の放送では、愛と経済の伝道師“宗さま”こと三井住友DSアセットマネジメント株式会社フェローの宗正彰(むねまさ・あきら)さんに、「“インバウンド”の本格再開と新型コロナ5類移行の“経済効果”」というテーマでお話を伺いました。
(左から)宗正彰さん、マンボウやしろ、浜崎美保
◆コロナ禍前の水準に戻りつつあるインバウンド
浜崎:今回は「“インバウンド”の本格再開と、新型コロナ5類移行の“経済効果”」についてお話しいただけるということですね。
やしろ:ゴールデンウィーク期間中、その前のタイミングからも、都内では外国人観光客の方を目にすることが本当に多かったですね。外国人観光客の存在が当たり前になりましたし、すっかり戻ってきた印象です。
宗正:コロナ禍前の「インバウンド需要」を思い出す動きでした。当時のインバウンド需要のピークも4月から7月にかけて、ちょうど同じ時期です。
やしろ:春からピークが始まるんですね。
宗正:桜が咲き始めた頃からゴールデンウィーク、初夏にかけてがピークの時期です。直近で把握できる訪日外国人の数は今年の3月で181万7,500人。3年ぶりに150万人を超えました。
2020年1月以来の水準です。新型コロナが拡がる前の2019年3月と比べると、ちょうど3分の2くらいまで回復しています。
やしろ:そんなに戻ってきているんですね。
宗正:今年3月の訪日外国人数は、国別の1位が韓国で、46万6,800人。2位が台湾、3位がアメリカ、4位が香港、5位がタイと続いています。
やしろ:タイの方も見かけますね。でも中国人観光客は……。
宗正:まだまだですよね。
やしろ:2019年の訪日外国人数と3分の1くらいの開きがあるのは、中国人観光客が戻ってきていないのが要因として一番大きいのでしょうか?
宗正:ちょうど中国からの訪日数に相当します。ちなみに、3月の国別トップ5は2月と同じです。順位の変動はありますが顔ぶれは変わっていません。
◆アフターコロナで変わる消費活動
やしろ:今後ますます外国人観光客の数が増えそうですが、受け皿として日本に必要なことは何でしょうか?
宗正:今、特に観光地では急増するインバウンドに対応できるだけの人手が足りていない状況です。コロナ禍で雇用を大幅に減らしたのが観光業界ですが、急速にインバウンドが戻ってきたので、今はまだ需要増に追いついていません。
コロナ禍前には「オーバーツーリズム」なんて単語もよく耳にしましたよね。インバウンド需要の増加がもたらす、観光地の地元住民への迷惑行為や弊害。これも人手不足によるところが大きいですね。
今後は航空定期便も夏ダイヤの変更タイミングに合わせて順次再開されます。コロナ禍前の訪日外国人数全体の3割を占めていたのが中国からでしたが、中国はまだ日本への団体旅行を解禁していません。解禁になった後は、きっとすごいことになりますよ。
やしろ:飲食店もそうですが、ホテルとか旅館も部屋をフルで稼働できない。それは経済的に考えたらもったいないことだと思いますが、人手をどう確保するかっていうところもあると思います。ゴールデンウィーク明けの5月8日から、新型コロナの感染症法上の位置づけも5類に移行しました。これは経済効果的にも大きいのでしょうか。
宗正:大きいですね。私たちの生活がウィズコロナからアフターコロナに移ったということですから。特に大きな変化は、個人の消費活動ですね。国内景気を意味する「GDP国内総生産」の半分以上の割合が個人消費です。つまりお買い物ですよね、人の活動そのものです。
アフターコロナへの移行は、経済活動や景気動向に直結します。行動制限でこれまで抑えられてきた消費の機会が拡がりますから、消費意欲も一気に拡大します。つまり1人当たりの消費金額の上昇も見込まれます。
やしろ:先日も番組で「ゴールデンウィークをどうやって過ごしましたか?」というテーマでメッセージを募集したところ、リスナーから「今回は旅行をせず家でダラダラしようと思っていたけれど、せっかくのゴールデンウィークだし、おいしいものを食べようと思って、毎日いいものを食べていたら、旅行に行ったくらいのお金を使っちゃった」というメッセージもありました。でも、そういう気持ちになってきますよね。
外国人観光客や国内に住む人の消費活動以外に、(5類に移行したことで)経済効果の点で何か注目ポイントは、ありますでしょうか。
宗正:国内の生産力がアップすると思います。5類への移行で、新型コロナ感染者の待機期間が、これまでの原則7日から5日間の療養に変わりました。そしてこちらが大きいと思いますが、濃厚接触者の待機期間がなくなりましたね。
やしろ:本当ですね、確かに大きい。
宗正:つまり仕事を休む人が減るということは、生産力がアップする。それからテレワークを原則出社に切り替える企業も増えています。この辺りも影響すると思うんです。新型コロナの5類移行で想定される経済効果のうち、全体の6割がインバウンド需要で、3割が国内の生産力アップ、残りの1割が日本に住んでいる人が動き始めること。ざっくりとしたイメージですが、大体こんな感じですね。
やしろ:そう考えたら、本当にインバウンド需要って大きいんですね。
宗正:資源の少ない日本で、観光資源は本当に貴重なこの国の財産ですからね。大事にしなきゃいけないし、今後も育てる必要がありますね。
やしろ:円安ということで外国人観光客は日本に来やすいですし、お金も使いやすいっていう環境です。たくさん使ってほしいですね。新型コロナの5類への移行は、金額にしてどれくらいの経済効果になりそうでしょうか。
宗正:現在、4~5兆円といった見方が一番多いです。日本のGDPは550兆円ですから、1パーセント程度を占めます。これは大きいですよ。ただ、経済効果というのは前提条件の置き方によってその半分にもなれば、2倍にも3倍にもなるんですね。
経済効果は、大きく「直接効果」と「間接効果」に分けて計算します。例えば5類への移行で、国内で生産される自動車の数が増えました。ここで計算を止めれば、「直接効果」までの計算です。この増産された自動車に乗って旅行に行きました、旅先でお金をたくさん使って消費しました……と、この「間接効果」をどんどん含めていくと数字って膨らみますよね。こんな感じで、経済効果の数字は前提条件によって大きく変わってきます。
やしろ:どこまで追いかけるか、ということですね。
宗正:そういうことです。
◆今後は円高の可能性も?
やしろ:ゴールデンウィーク期間、あるいはその前後で、他に何か気になる動きはありましたか?
宗正:最近、外国人観光客の来日を後押ししてきた主な要因の1つが円安です。日本に行けば安くお買い物ができると。ゴールデンウィークに入る直前に、植田総裁就任後「初」の日銀の金融政策決定会合が開かれました。日本の金融政策を決めるこの会合では、これまでずっと使ってきた「新型コロナ感染症の影響を注視する」という文言が削除されました。
ゴールデンウィーク中の現地時間4日には、日銀の金融政策決定会合のアメリカ版とも言えるアメリカの連邦公開市場委員会(FOMC)で、続けてきた利上げを今回で打ち止めにする可能性を示唆する動きもありました。
昨年以降のアメリカは、短期間で大幅な利上げが続いたお話、このコーナーでは何度もしてきましたよね。今お話した日米2つの会合では、いずれも円高に向かう可能性が高い内容になりました。これまで外国人観光客の増加を後押ししてきた円安じゃない、逆の動きの円高になりそうな気配は、実に気になるところです。
そして来週の19日から3日間にわたって、広島でG7サミットが開かれます。この開催を境に、国内外の雰囲気が一気にアフターコロナに移ると私は見ています。そこからまた人の動きやお金の使い方、ひいては経済活動が大きく変わってくると思います。色々な意味で深く記憶に残るサミットになりそうですね。
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<番組概要>
番組名:Skyrocket Company
放送日時:毎週月~木曜17:00~19:52(※コーナーは毎月第2水曜18:15ごろ~)
パーソナリティ:本部長・マンボウやしろ、秘書・浜崎美保
番組Webサイト:
http://www.tfm.co.jp/sky/