作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「村上RADIO」(毎月最終日曜 19:00~19:55)。5月28日(日)の放送は「村上RADIO~アカペラで行こう~」をオンエアしました。今回のテーマは「アカペラ」。ビートルズやビーチ・ボーイズ、サザンオールスターズなどによる、さまざまな名曲のアカペラカバーを村上DJの楽しい解説付きで紹介。この記事では、前半2曲を紹介した内容をお届けします。
村上RADIO~アカペラで行こう~
こんばんは、村上春樹です。村上RADIO、今夜はアカペラで歌われる音楽を集めてみました。アカペラ(注:a cappella イタリア語)は、伴奏を伴わないコーラスだけの音楽のことです。中世の教会音楽が起源ですが、これが形を変えながら現代に受け継がれ、1950年代にはドゥワップ・ミュージックのひとつのスタイルとなりました。そして21世紀には、また新しい個性を身につけたアカペラ音楽が生まれています。今日はいろんなスタイルのアカペラ音楽を楽しんでください。
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アカペラとは全然関係ないのですが、僕は生まれてこの方、二日酔いというものを経験したことがないんです。まあ、そこそこお酒は飲んできたんだけど、なぜか二日酔いになったことはありません。周りの人たちは「二日酔いくらい苦しいものはない」って言います。どんなふうに苦しいのか聞いてみると、みんなすごく具体的に親切に教えてくれます。でも、自分で実際に経験したことのない苦しみって、どれほど詳しく説明されても、今ひとつうまく理解できないんですよね。そういえば、頭痛も一度も経験したことがありません。まあ、ありがたいことなんだけど、「ちょっと世間に申し訳ないかもな」とか、ときどき思います。
◆The Four Freshmen「Their Hearts Were Full Of Spring」
「アカペラで行こう」。まずはジャズ・コーラスの最高峰、Four Freshmen(フォー・フレッシュメン)の「Their Hearts Were Full Of Spring(彼らの心は春でいっぱい)」を聴いてください。この曲はビーチ・ボーイズが「A Young Man Is Gone」というタイトルで、歌詞も変えて、やはりアカペラでカバーしていますので、そちらをご存じの方のほうが多いかもしれませんね。ビーチ・ボーイズはフォー・フレッシュメンのファンで、彼らのハーモニーを綿密に研究しました。フォー・フレッシュメンもお返しにというか、ビーチ・ボーイズの「サーファーガール」を歌っています。
◆The Beach Boys「Wouldn't It Be Nice」
次は、そのフォー・フレッシュメン研究の成果を聴いてください。ビーチ・ボーイズの「Wouldn't It Be Nice(素敵じゃないか)」、アルバム『ペット・サウンズ』の1曲目に入っている曲ですね。ビーチ・ボーイズがこれをアカペラで歌います……といってもこれはアカペラで録音したわけではなく、できあがった曲からボーカルのトラックだけを抜き出して編集したものです。だから正確にはアカペラとは呼べないんだけど、でも素晴らしいハーモニーに思わず聴き惚れてしまいます。冒頭にだけ、ちらっと楽器が入ります。
<収録中のつぶやき>
このコーラスは全部ブライアン・ウィルソンが譜面を書いているんですけどね。すごくフォー・フレッシュメンのハーモニーに似ているでしょう。
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聴取期限:2023年6月5日(月)AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:村上RADIO~アカペラで行こう~
放送日時:5月28日(日)19:00~19:55
パーソナリティ:村上春樹
番組Webサイト:
https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/