本部長・マンボウやしろと秘書・浜崎美保がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「Skyrocket Company」。毎月第2水曜日に、我々が知っているようでよく知らない「お金」や「経済」の仕組みなどを、専門家の方に詳しく解説してもらうコーナー「スカロケ資産運用部」をお届けしています。
6月14日(水)の放送では、愛と経済の伝道師“宗さま”こと三井住友DSアセットマネジメント株式会社フェローの宗正彰(むねまさ・あきら)さんに、「バブル後最高値の“日経平均株価”と最近よく聞く“シン富裕層”」というテーマでお話を伺いました。
(左から時計回りに)宗正彰さん、マンボウやしろ、浜崎美保
◆日経平均株価がバブル後最高値を更新
浜崎:宗さま、今回はバブル後最高値の“日経平均株価”と最近よく聞く“シン富裕層”についてお話しいただけるということですね。
やしろ:日本の株式市場が今、急上昇しているようですが、株価が上がるのに必要なことは何なのでしょうか。まずはそこから教えていただきたいです。
宗正:今日も日経平均株価は、バブル後最高値を更新しました。3万3千円台は約33年振りの水準です。一般的な株価上昇の要因としては、大きく2つあります。1つは、企業自体に由来するもの。もう1つは、株式市場を含むマーケット全体に由来するものです。
企業自体に由来するものとしてまず挙げられるのは、企業業績です。そして、株の配当金や売上の増加につながる新商品や新サービス。その他には企業による自社株買いの動きなどが挙げられます。
マーケット全体に由来するものとしては、景気や金利。他には円安・ドル高のような為替市場の動向、そして海外の株式市場などが挙げられますね。何が最も株価に効いてくるのかはその時々で違いますし、理由も1つだけの場合よりも、複合的に絡み合うことの方が多いですね。
やしろ:日本の株式市場は、外国人投資家の動き次第だというお話をこの番組では宗さまからよく聞きますが、今回の日本株の急上昇もそれが主な要因なのでしょうか?
宗正:その通りです。株価が上がるためには、「購入株数の方が売却される株数よりも多い」ことが大前提ですよね。日本株の外国人保有率は、全体のおよそ3割ですから。
やしろ:これって多いのでしょうか? それとも少ないのでしょうか?
宗正:多いですね。そして外国人投資家が日々売ったり買ったりする日本株の売買シェアは、全体の6割を超えています。つまり外国人投資家の動き抜きで、日本の株式市場が上がることは、まずありません。昨年の4月に東京証券取引所が、それまで5つあった市場を3つに再編しました。これは60年ぶりの改革です。「東証改革」と呼ばれるもので何を最も意識しているかと言えば、外国人投資家からの日本の株式市場の分かりやすさと見えやすさです。
新たにマーケットを3つ(プライム・スタンダード・グロース)に区分けして、それまで分かりづらかった上場基準や様々なルールを明確にしました。昨年までの東証一部や東証二部といった区分けができたのは今から約60年前なので、今回の改革は60年ぶりの大改革と呼ばれています。
やしろ:それが今の日本株の上昇に効いているということなんですね。
◆株価上昇は株を持っていない人にも影響する
やしろ:ここまでのお話以外に、国内外の投資家が株を買い始めた理由は何かありますか?
宗正:以前にこの番組でもお話しましたが、アメリカのシリコンバレー銀行が3月に破綻しました。その際に、欧米では一時的な金融不安が生じましたが、それが収まった後は株式市場で時価総額のウェイトの高い銀行や保険などの金融関連銘柄が株価を一気に戻して、株式市場全体の上昇につながりました。これが、まず1つ。
そして、4月に就任した日銀の植田新総裁の発言も今の株高の主な要因の1つです。彼は従来からの金融緩和政策を当面の間は続けることを明言しました。潤沢な資金を市場に供給し続けることは株高につながります。
少し変わったところでは、アメリカに“投資の神様”と呼ばれるウォーレン・バフェットという人がいますが、彼が4月に来日した際に「日本株はまだまだ安い。だから積極的に投資をしたい」と発言したことが国内外の投資家の新たな買いを促しました。
やしろ:すごい。たった1人の発言が市場に大きな影響を及ぼしているのですね。
宗正:ただ、何よりも今の株高に効いているのは、昨年度の2022年度業績と同時に発表された今年度の会社計画です。昨年度に引き続き、今年度も上場企業の業績は好調といった見方が安心感につながっています。コロナ禍で滞った経済活動も正常化に向かっていますし、引き続き円安効果も見込まれるということで、これが一番効いていますね。
やしろ:不安要素がいくつか払拭されて、プラスの要素も重なってきたことが株価上昇の理由なんですね。僕は株式投資をやっていないので、株式市場が上がっても「自分には関係ない」というふうに考えてしまいますが、そう考える人も多いのではないでしょうか?
宗正:実は株式市場の上昇は、全ての人に関係してきますよ。
やしろ:つまり景気に影響するって話ですか?
宗正:はい。「資産効果」と呼ばれる経済用語があります。株式や不動産などの資産を持っている人が、保有資産の価値が上がったことで「欲しいものは、いつでも手持ちの株式や不動産を売って買うことができる」という気持ちになる。
なんだか気分もウキウキして買い物したくなる人も増えるし、実際に買い物をする人も増えるじゃないですか。これが「資産効果」です。国内景気の半分以上は個人の消費活動で決まりますから、「資産効果」が高まれば景気も良くなるということです。
そして企業も株式を持っていますから、新たな設備投資の増加など同様の動きが出やすくなりますし、株価が上がれば業績の下支えになります。あとは、日本は国民皆年金の国ということで、年金の原資も株式運用で増やしています。運用が上手くいけば、年金の手取り額も増えるということで、老後の生活にも大きく関係していきますよね。
◆日米の金融教育の違い
やしろ:投資先進国といわれるアメリカですが、何がどれくらい日本と違うのか、分かりやすい事例を教えていただきたいです。
宗正:一番分かりやすいのは、個人の金融資産の内訳ですね。日本国内の金融資産の割合は、全体の約5割が現金と預金です。一方、資産運用に振り向けている金融資産、例えば株式や投資信託の割合は、約15パーセント。アメリカでは、これが全く逆の割合になります。つまり、株式や投資信託が金融資産全体の約5割で、現預金が全体の約15パーセント。つまり、それだけ資産運用に使われる金融資産の割合が大きいわけですよね。
やしろ:すごいですね。
宗正:年金制度や医療制度などの諸制度が日米で異なるという理由もありますが、アメリカでは子どもの頃から金融教育が盛んです。日本でも昨年から高校のカリキュラムで金融教育が義務化されましたが、幼い頃からの教育による意識の違いは大きいですね。
やしろ:今の日本政府としては、アメリカのようになって欲しいという思いが、強く出てきているのでしょうか。
宗正:それもそうですし、新しいNISA(資産運用で得た利益にかかる税金が一定額で非課税になる制度)も来年2024年から始まります。これは必ず追い風になると思います。日本は今後ますます少子高齢化も加速しますし、労働人口も確実に減っていくので、個々人の資産運用は生きていく上で必要最低条件です。もうすでに、そういう時代に入っていますけどね。
◆「シン富裕層」とはどんな人たち?
やしろ:「シン富裕層」という言葉が最近クローズアップされているようですが、株式投資でお金持ちになる人も、これに含まれているのでしょうか。
宗正:一般的には含まないですね。「シン富裕層」はボリュームゾーンで言えば、金融資産で10億円から20億円くらいは持っている人。しかも自分の代1代で、比較的若い年齢の内に一財産を築いた人を「シン富裕層」と呼びます。
具体的には、「主なビジネスが不動産投資」だったり、「暗号資産やFXのような、比較的新しい投資対象を基に財産を築いた人」。それから、「ユーチューバーやオンラインサロンの運営者のようなネットビジネスで大成功した人」などがそう呼ばれています。大きな判断が求められる局面を素早くこなしながら、個人でどんどん決断していく、そんなビジネススタイルをイメージしてもらえば分かりやすいかもしれません。
やしろ:そういう人たちが「シン富裕層」なのですね。ありがとうございました。
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<番組概要>
番組名:Skyrocket Company
放送日時:毎週月~木曜17:00~19:52(※コーナーは毎月第2水曜18:15ごろ~)
パーソナリティ:本部長・マンボウやしろ、秘書・浜崎美保
番組Webサイト:
http://www.tfm.co.jp/sky/