アップルの新製品「Apple Vision Pro」でデバイスの常識が変わる!? 普及のカギは? 専門家が解説

モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。6月14日(水)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「AppleのMRゴーグル型端末『Apple Vision Pro(アップル・ビジョン・プロ)』で暮らしはどう変わるのか?」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。


吉田明世、塚越健司さん、ユージ


Apple社は6月5日(現地時間)、ゴーグル型のMR(複合現実)デバイス「Apple Vision Pro」を発表しました。

◆VR、AR、MR…違いは?

吉田:塚越さん、まずは「MR(複合現実)」とは何なのか、教えてください。

塚越:まず、よく聞く「VR」 は「仮想現実」といわれるものです。ゴーグルをかけることで、すべてがコンピュータで作り込まれた世界に没入できます(例:PlayStation VRなど)。

「AR」は「拡張現実」と呼ばれるもので、スマートフォン向け位置情報ゲームアプリ「ポケモンGO」が代表例です。スマホをかざすと、現実空間にポケモンが存在しているかのように見える機能が搭載されています。

また、スマホのカメラで人の顔を写すと、目が大きくなったり、リアルタイムで加工されたりできるアプリなどもあります。そういった「現実空間に、情報が追加される」タイプのものが「AR(拡張現実)」です。

「MR(複合現実)」はこの両方、あるいは「AR」をさらに発展させたものです。ゴーグルをかけると現実空間に巨大なスクリーンを出したり、(ゴーグルを装着している人が体験しているMR映像を、モニターなどに映し出すことで)ビデオ会議など現実空間のなかに示したりすることができます。

◆「Apple Vision Pro」では何ができるの?

吉田:Apple社が発表した、MRのゴーグル型端末「Apple Vision Pro」。これは、どのようなことができるのでしょうか?

塚越:ゴーグルをかけると目の前に巨大なスクリーンが現れたり、場所を問わず、使っているパソコン画面を出せたり、そのサイズも自由に調節して使ったりすることができます。

ただ、それだとコンピュータに没入してしまうので、近くに人がきたときは「人がいる」とマークで教えてくれる機能もあります。現実とコンピュータをうまくつなげる工夫がされていて、現実空間の光や人といった情報を収集して教えてくれます。だからこその「複合現実」ということになります。

もう1つは、人間の「目」を重視している点も特徴です。目線を追う機能があり、今まで私たちが手を使って選択する必要があったものを、目線を合わせるだけで選択することが可能になります。スマホのタッチも、ちょっとした手のジェスチャーや、音声認識などでもできるので、基本的にコントローラーで操作する必要がなく、これまで以上に人間の身体を使ってコンピュータを動かしていくことになります。

こうしたMRの分野では、先行したものだとMicrosoft社が同様のMRゴーグル「HoloLens 2(ホロレンズ2)」を販売しているのですが、ビジネス向けのアプローチのため大きく普及していないので、時間をかけて開発したAppleがついに攻めて来た、という感じです。

ただ、肝心の「Apple Vision Pro」の値段は3,499ドル(約49万円)と高額で、発売も来年のいずれかの時期ということで、実際に市場に出るのはまだ少し先です。Apple社としては、新しい領域の製品と捉えていて、2015年に発売した「Apple Watch」以来、新領域の製品としては久しぶりなので力を入れています。

◆すぐに普及するかは未知数だが、デバイスの常識が変わる可能性も

ユージ:僕も「Apple Vision Pro」が気になっています。この製品によって、私たちの生活はどのように変わると思いますか?

塚越:Appleは、これまでiPhoneなどの製品で世界を変えてきました。例えばパソコンはマウスを「手」で使います。次がスマホで「指」を使います。「Apple Vision Pro」は「目」を使うことで、やや専門的に言えば、ユーザーインターフェイスを変革する新しい領域を目指します。

Appleは「Apple Vision Pro」を新たな変革をもたらすデバイスだと考えており、「空間コンピュータ」と呼んでいます。独自性を強調しているのが重要です。そのため発表会でもMeta社(旧Facebook社が販売するVRゴーグル「Meta Quest(メタ・クエスト)」)と差別化を図るためにも、「VR」という言葉は使いませんでした。

ユージ:ゴーグル型の端末は、スマホのように広く普及し、多くの人が使うものになると思いますか?

塚越:やはり値段が高いので、すぐに普及するのは難しいですね。あとは、やはり見た目です。あのゴーグルの日常使いは、ちょっと難しいと思います。そのあたりを、どう改良できるかを今、IT分野の方が考えているところです。

ちなみに、「Apple Vision Pro」は(来年の販売まで)少し早い発表になりましたが、実際に触った人の話だと、「本当にすごい」という声が多いそうです。数年前までAppleで「Apple Vision Pro」の開発に関わったエンジニアが、言える範囲で技術についてSNSで述べたことが話題になっています。

「Apple Vision Pro」にはたくさんのセンサーが入っていて、心拍数、筋肉活動、脳内の血液密度、血圧などのさまざまな生体情報を取得・分析しています。例えば「ユーザーは今、怖がっているのか?」「好奇心を感じているのか?」といった情報分析の開発もおこなっているそうです。

私たちのさまざまな生体情報を分析して、私たちが楽しいと感じることや、健康にもつながれば、新たな広告などの分野にも広がります。アメリカのビッグテックは先の未来まで考えているのは間違いないです。この製品が普及するかどうかは分かりませんが、注目したいと思います。

<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/one/

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