村上RADIO

村上RADIO

記事コンテンツ

村上春樹「SNS全盛の現代だと、周りはもう…」ヘミングウェイの言葉について考える

作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「村上RADIO」(毎月最終日曜 19:00~19:55)。6月25日(日)の放送は「村上RADIO~再びアナログ・ナイト~」をオンエアしました。エルヴィス・プレスリーのデビューアルバムから、村上さんがボストンの中古レコード店の1ドル・コーナーで買ってきたレコードまで、自宅から厳選して持ってきたアナログ・レコードを村上DJの楽しい解説付きで紹介しました。
この記事では、後半3曲、今日の言葉を紹介した内容をお届けします。



◆San Francisco Gay Men's Chorus「Pilgrim's Chorus from Tannhauser」
次はちょっと変わったレコードを聴いてください。サンフランシスコ・ゲイ・メンズ・コーラスがワーグナーの「タンホイザー」から「巡礼の合唱」を歌います。名前のとおり、サンフランシスコ近辺に住むゲイの男性たちが集まって作った合唱団です。その人たちが全米公演をやってまわりまして、レコードを作りました。写真を見ると全部で60人くらい団員がいます。きっとサンフランシスコじゃないと、こんなにたくさんのゲイの団員は集められませんよね。このレコード、ボストンの中古レコード屋の1ドル・コーナーで売れ残っていたものを、僕が買ってきました。

◆Greg Phillinganes「Girl Talk」
以前、ホームページを持っていたとき、北海道では「中途半端」のことを「途中半端」って言います、というメールをいただきまして、「ほんとかよ?」みたいなことを言ったら、北海道のみなさんから「ほんとだよ」というメールを数多くいただきました。「うちのお母さんは中途半端と途中半端を、場合によって使い分けています」という人までおられました。信じられませんよね。いったいどんなふうに使い分けるんだろう? この途中半端問題に関して、僕はまだ「ほんとかよ?」モードなんですが、ほんとうでしょうか? 北海道在住のリスナーのみなさん、どうか教えてください。グレッグ・フィリンゲインズが歌います。「ガールトーク」

◆Cliff Richard「Daddy's Home」
この間、水族館に行ってふと気づいたんですが、マグロとかが回遊している巨大水槽の前に立った中年のご婦人って、必ず「ああ、おいしそう」って言うんですよね。それもわりに切実な、大きな声でね。マグロがそれを聞いて怯えないといいなあと思います。

マグロとは関係ありませんが、クリフ・リチャードがドゥワップの名曲「ダディーズ・ホーム」を歌います。



今日はここまでです。ラストの曲は女性ハープ奏者ドロシー・アシュビーさんの演奏する「Wild Is The Wind (風は荒く)」です。ハープとヴァイヴラフォンの音の組み合わせが美しいですね。ヴァイヴを弾いているのはテリー・ポラード、やはり女性です。
今夜は、うちからいろんなアナログ・レコードをひと抱え持ってきました。ほんとはうちに来て聴いていただけるといいんですが、なかなかそうもいきませんので、こうして放送局からお送りしています。お宅の猫の頭は十分撫でられましたでしょうか? にゃあ(猫山)。
  


そして、昨年7月、早稲田大学の大隈記念講堂で行った山下洋輔トリオのライブが、アナログ・レコードとして発売されます。「村上春樹 presents 山下洋輔トリオ再乱入ライブ」。これは僕が司会をしてやったコンサートのライブ録音です。本当に素晴らしい演奏だったので、ぜひ皆さんに聴いてほしいと思います。詳しいことは、番組のサイトを見てください。



今回は、本のプレゼントがあります。まず、新作の長編『街とその不確かな壁』を3名の方に。僕の6年ぶりの新作です。サイン入りで差し上げます。そして、2020年に出した『村上T 僕の愛したTシャツたち』が文庫になったので、この文庫を10名の方に差し上げます。これもサインを入れて送ります。


他にも25年ぶりの新版『ふわふわ』を5名、村上春樹新訳『世界で最後の花 絵のついた寓話』を10名、それぞれサインを入れてプレゼント。詳しくは番組特設サイトをご確認ください。



今日の最後の言葉は作家アーネスト・ヘミングウェイさんの言葉です。

私は試合中、決してスコアボードを振り返らない

自分の書いたものについて、いちいち批評なんか読まない。自分のやるべきことを黙ってやるだけだ、という意味です。かっこいいですね。ハードボイルドですね。しかしSNS全盛の現代だと、周りはもうスコアボードだらけで「振り返らない」というのはだんだん難しくなっていくみたいです。がんばって乗り切りましょう。

「私は試合中、決してスコアボードを振り返らない」

それではまた来月(にゃあ)。

----------------------------------------------------
▶▶この日の放送内容を「radikoタイムフリー」でチェック!
聴取期限:2023年7月3日(月)AM 4:59 まで
スマートフォンは「radiko」アプリ(無料)が必要です詳しくはコチラ
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。
----------------------------------------------------

<番組概要>
番組名:村上RADIO ~再びアナログ・ナイト~
放送日時:6月25日(日)19:00~19:55
パーソナリティ:村上春樹
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/

コンテンツ一覧

MURAKAMI JAM 第2弾を記念して、村上春樹さんからコメントが到着 音声

MURAKAMI JAM 第2弾を記念して、村上春樹さんからコメントが到着

【後編】村上RADIO 年越しスペシャル〜牛坂21〜 24時台 ゲスト  山極壽一さん 音声

【後編】村上RADIO 年越しスペシャル〜牛坂21〜 24時台 ゲスト 山極壽一さん

【前編】村上RADIO 年越しスペシャル〜牛坂21〜 23時台 ゲスト 山中伸弥 さん 音声

【前編】村上RADIO 年越しスペシャル〜牛坂21〜 23時台 ゲスト 山中伸弥 さん

村上RADIOステイホームスペシャル「あなたがいま語りたいこと」「村上春樹さんと考えたいこと」 音声

村上RADIOステイホームスペシャル「あなたがいま語りたいこと」「村上春樹さんと考えたいこと」

村上春樹 サイモン&ガーファンクルの解散を振り返る「まさに絶頂期にあるチームが突然ぽっかり消滅してしまった。みんなびっくりしました」 記事

村上春樹 サイモン&ガーファンクルの解散を振り返る「まさに絶頂期にあるチームが突然ぽっかり消滅してしまった。みんなびっくりしました」

村上春樹「映画『卒業』のサウンド・トラックは『ミセス・ロビンソン』。若者の切実な突破力みたいなところが共感を呼んだ」 記事

村上春樹「映画『卒業』のサウンド・トラックは『ミセス・ロビンソン』。若者の切実な突破力みたいなところが共感を呼んだ」

村上春樹「彼らの音楽と同時代を過ごせてよかった」サイモン&ガーファンクルを聴いていた10代を語る 記事

村上春樹「彼らの音楽と同時代を過ごせてよかった」サイモン&ガーファンクルを聴いていた10代を語る

村上春樹「できればなるべく嫌なこと、つらいことは忘れて、良いこと楽しいことだけを覚えて生きていたいものですね」 記事

村上春樹「できればなるべく嫌なこと、つらいことは忘れて、良いこと楽しいことだけを覚えて生きていたいものですね」

村上春樹 新人賞授賞式のあと、作家・吉行淳之介と「文壇バー」に行った時のことを語る「あとにも先にも行ったのはその1回だけ」 記事

村上春樹 新人賞授賞式のあと、作家・吉行淳之介と「文壇バー」に行った時のことを語る「あとにも先にも行ったのはその1回だけ」

村上春樹『風の歌を聴け』群像新人文学賞受賞式の思い出「VANジャケットのオリーブグリーンの三つボタンのコットンスーツで…思い出すと懐かしいです」 記事

村上春樹『風の歌を聴け』群像新人文学賞受賞式の思い出「VANジャケットのオリーブグリーンの三つボタンのコットンスーツで…思い出すと懐かしいです」

村上春樹、かつての青山通りに思いを馳せる「なんとなく自由っぽい、風通しのいい雰囲気がありました」 記事

村上春樹、かつての青山通りに思いを馳せる「なんとなく自由っぽい、風通しのいい雰囲気がありました」

村上春樹 かつて東京・表参道にあった小さな鰻屋さんの猫の思い出「ほかほか幸福な気持ちなれました」 記事

村上春樹 かつて東京・表参道にあった小さな鰻屋さんの猫の思い出「ほかほか幸福な気持ちなれました」

村上春樹「ミック・ジャガーが80歳になってもバリバリの現役でステージに立って熱唱しているなんて、10代の僕には想像もできませんでした」 記事

村上春樹「ミック・ジャガーが80歳になってもバリバリの現役でステージに立って熱唱しているなんて、10代の僕には想像もできませんでした」