モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。6月21日(水)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「通常国会閉会、成立した主な法案は?」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。
※写真はイメージです
第211通常国会が6月21日(水)に会期末を迎え閉会しました。政府は61本の法案を提出し、「防衛費増額に向けた財源確保法」や「LGBTの人たちへの理解増進に向けた法律」など59本の法案が成立しました。「金融商品取引法 改正案」など残る2本の法案については、今の国会での成立を見送り、継続審議となる方向です。
◆「防衛費増額」のための増税は見送り
吉田:6月16日(金)には、政府が今国会の最重要法案と位置づけていた「防衛費増額のための財源確保法」が成立しました。まずは、この法律の内容を改めて教えてください。
塚越:こちらは去年、閣議決定された安全保障に関する3文書に書かれたことを実行するための財源確保法です。自民・公明の賛成多数で可決されましたが、立憲民主党をはじめ、日本維新の会や国民民主党といった野党は反対しました。
この法案は、歳出改革や決算剰余金、国有財産の売却などによって手にする税収以外の収入を複数年度利用できるよう、一般会計に「防衛力強化資金」を創設するものです。
これに対して野党は、「何に利用するか細かく決まっていない防衛費の増額を前提にしていることがおかしい」と批判しました。
また、税収以外の収入は不安定なものなので、今後も防衛費の財源として考えるには不十分です。さらに、防衛費に回した分の余剰金が足りなくなれば、結局、国債を発行=借金することになります。結局は防衛費のための国債発行ということになります。
政府は増税も視野に入れていますが、当初、「2024年以降に実施」としていたものを「2025年以降」と先送りにしました。法人税や所得税、たばこ税の増税も考えています。所得税については、東日本大震災の復興予算に充てる「復興特別所得税」の税率を1%引き下げて、その分を防衛費に充てます。要するに「復興財源を転用することだ」ということで、批判もあります。
◆保守派への配慮で大きく後退した「LGBT法案」
吉田:先週金曜には、LGBTなど性的少数者への理解の増進を図る法律も成立しました。こちらは、どういった法律でしょうか?
塚越:こちらは約2年前に超党派で合意されましたが、自民党保守派の反対もあり、国会が見送られた経緯があります。与党はそのときに内容を修正したものを国会に提出しました。これも当事者からは不満が多かったのですが、野党の維新・国民が与党の修正案をさらに修正させた「独自案」を提出しました。最終的に、この独自案を与党がかなり認めた再修正案を採用され、法案が成立しました。
2年前と比べて、特に維新・国民から出た独自案と、それをほぼ受け入れた今回の法律は、当事者にとってはさらに内容的に大きく後退したと批判が多いです。さらに言えば、自民党保守派はそれでも問題があるとして、採決の際に本会議を退席しました。
自身がゲイであることをオープンにして、当事者から情報発信している「一般社団法人fair」代表・松岡宗嗣(まつおか・そうし)さんによれば、今回の法律の実施にあたって、「全ての国民が安心して生活することができるよう留意する」という条文が新設されたのが特に問題でした。少数派を守り、性の多様性の理解を促進するのに、結局は多数派への配慮が必要ということです。企業や学校で理解を増進させようとしても、多数派の人が反対したら理解増進ができなくなるか、あるいは少なくとも現場が萎縮する可能性があります。
この条文の追加は、「男性でも女性と自称すればトイレや公衆浴場に入れてしまう」といった問題への懸念を払拭するために追加された文言とされています。とはいえ、法律で女性用トイレの利用基準を変えるわけでも、女性トイレがなくなるわけでもありませんし、トイレであれ浴場であれ、犯罪があれば取り締まるだけです。一部の問題を大きく取り上げて多数派の恐怖を煽っており、結局は理解増進になっていないと私は思います。
ユージ:1月23日に召集され、150日間の会期でおこなわれた今国会。塚越さんは、どのような印象を持たれましたか?
塚越:とにかく重要法案、社会的に注目される法案が多かったですが、結局のところ、与党が押し通したという印象があります。同時に、立憲民主党をはじめとした野党は追求が足りなかったばかりか、LGBTに関する法案では、むしろ維新や国民がより保守的な修正をおこなったことも注目だと思います。「社会的な分断が進んでしまったのでは?」というところが残念です。
あまりメディアでは聞かなくなりましたが、岸田文雄首相の「聞く力」という言葉があったと思います。今は岸田首相自身を含め、みんなそれを忘れてしまっていて、「これはどういうことなんだろう?」「社会はどうなってしまうんだろう?」と気になりました。
吉田明世、塚越健司さん、ユージ
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聴取期限 2023年6月29日(木) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世
番組Webサイト:
https://www.tfm.co.jp/one/