坂本真綾「私が先にストーリーを書き、そこから曲を…」最新アルバムでチャレンジした驚きの制作方法とは?

ジョージ・ウィリアムズ、安田レイがパーソナリティをつとめるTOKYO FMの生放送ラジオ番組「JA全農 COUNTDOWN JAPAN」(毎週土曜 13:00~13:55)。6月17日(土)の放送は、坂本真綾さんが登場。5月31日(水)にリリースされた11枚目となるニューアルバム『記憶の図書館』について語りました。


ジョージ・ウィリアムズ、坂本真綾さん、安田レイ



◆“記憶”をテーマに物語を制作

――ニューアルバム『記憶の図書館』はどういった作品になりましたか?

坂本:これは、私が先に“記憶”というテーマでショートストーリーを書きまして、それをいろいろな作家さんに読んでもらって、自由に発想を膨らませて楽曲を作ってもらったという、ちょっと面白い作り方をしたアルバムになります。

――もともと文章は好きだったのですか?

坂本:書くことはすごく好きですね。今回は初めてご一緒する作家の方も多かったので、普通に会議をして「こんな曲にしてください」と事務的に終わるのではなく、(踏み込んだ)クリエイティブな面白い楽曲作りができたらいいなと思って、この形にしてみました。

――どういうストーリーですか?

坂本:私たちの頭のなかには、記憶をしまっておく図書館みたいなものがあるんじゃないか、また、覚えられる記憶の量には限りがあるので、無意識のうちに忘れていくものは捨てられているのではないか、というところから発想しました。

そこで働く回収係の少年が捨てられた記憶を廃棄するために運びながら、それぞれの素敵な思い出に触れ、ほんの出来心から、いくつかをポケットにしのばせて持ち主にそっと返しにいくという内容です。

私たちは全部の記憶を覚えて生きていくことは不可能ですけど、もしかしたら自分では忘れてしまうような何気ない景色でも、他人が見たらものすごく素敵なものもあったのかな、っていうところから書き始めました。

――それはどういう瞬間に閃いたのですか?

坂本:子育てをしながら、私が今こんなに頑張って一生懸命に育てていることも、子どもはすべて忘れていくんだろうなと感じて(笑)。自分も(親にしてもらったことを)忘れてしまっていて、でも急に(子どもの)世話をしながら自分が親にしてもらったことを思い出す瞬間があったりして。

だから、忘れてしまったことも細胞のどこかに埋まっていて、今の私を作っているんじゃないかと思ったんです。記憶ってすごく不思議なもので、忘れちゃうのに自分の人生にはすごい影響を与えてくれるもの、消えないものなんだなって思います。

◆“出産前後”で作詞方法に変化

――作家さんたちから曲が届いたときはどうでしたか?

坂本:みんな、その(物語の)世界に自分の記憶をダイブしているように感じて、わりと内省的というか、自問自答しているような曲が多かったですね。いわゆるパーティーチューンみたいな曲はあまりなくて、心のなかをのぞいているような曲が多かった印象でした。

――歌詞は、曲が届いてから考えたそうですね。

坂本:私自身も何を書くかを決めないで、(曲を聴きながら詞を)書いていったんですけど、今自分が思っていることを(曲に)引っ張り出されたような感覚がありました。

それは、やっぱり曲へのリスペクトもあるし、作家の皆さんが自分のなかにダイブして作ったような曲だから、私も自分自身を内側から見つめ直すようにして作詞した曲が多かった気がします。

――普段はどういう環境で詞を書かれているのですか?

坂本:今までは、煮詰まったらカフェに行ったり、乗り物に乗ると浮かんだりするので、バスに乗ったり、夜中でもドライブしたり、いろいろなことをしていました。

――バスに乗りながら歌詞を書くのですか?

坂本:そうなんですよ。(曲を)聴きながら、なんとなく景色を見ていると、家にいるよりも発想がパッと閃いたりして。ただ、子どもが産まれてからは(気分転換する)時間が持てなくなってきて、ずっとリビングで作業していたので……煮詰まりましたね(笑)。でも、それはそれで“新しいやり方を見つける”という意味では面白かったです。“このなかで何が書けるんだ”というチャレンジにもなったと思います。

次回7月1日(土)の放送は、OWV(オウブ)の本田康祐さん、中川勝就さんさんをゲストに迎えてお届けします。

<番組概要>
番組名:JA全農 COUNTDOWN JAPAN
放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット
放送日時:毎週土曜 13:00~13:55
パーソナリティ:ジョージ・ウィリアムズ、安田レイ
番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/cdj/