“隣の土地から越境してきた木の枝”は切除できる!?「土地や相続」についての新ルールを解説!

青木源太と足立梨花がパーソナリティをつとめ、暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていくTOKYO FMのラジオ番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」(毎週日曜 7:30~7:55)。7月2日(日)の放送では、法務省 民事局付の森下宏輝(もりした・ひろき)さんに、「ここが変わる! 土地や相続についての新ルール」をテーマに話を伺いました。


(左から)青木源太、森下宏輝さん、足立梨花



2021年に民法などの法律が改正され、土地や相続についてのルールが変わりました。すでにスタートしているものもあれば、これからスタートするものもあるため、今回は、より私たちに身近な3つのポイントに絞って深掘りしていきます。

◆1. 隣の土地から木の枝が越境してきたら?

今年4月1日(土)から、隣の土地から越境してきた木の枝が切れるようになりました。あくまで原則は土地の所有者に枝を切ってもらうのですが、具体的なケースとして、

・隣の土地の所有者に枝を切るように要求したものの、相当の期間内(おおよそ2~3週間ぐらい)までに切除されないとき。

・木の所有者が特定できず、または、その所在を知ることができないとき

・差し迫った事情がある場合(例:台風で枝が折れて落下する危険が生じる可能性があるとき)

上記のように、頼んでも放置されていたり、そもそも所有者がわからないときは自ら切れるということです。

◆2.早めに遺産分割しないと…?

相続人同士の話し合いでは遺産分割の協議がまとまらずに、家庭裁判所の調停や審判によって遺産分割がなされる場合、まずは、民法で定められた相続の割合である「法定相続分」が1つの基準となります。

例えば、亡くなった方の相続人として子どもが3人いる場合、法定相続分の割合は3分の1ずつですが、生前に親から援助を受けていたり、逆に介護をおこなったなど、子どもたちにそれぞれ考慮する事柄がある場合は、家庭裁判所において、基準となる法定相続分をもとに、分割の割合を算出して財産を分けることになります。これを「具体的相続分」と言います。

具体的相続分で相続することになる場合は、生前に親から援助を受けていた子どもの相続分を少なくして、介護をおこなった子どもの相続分を多くするなどして、分割の割合を決めることになります。

そして、この遺産分割のルールに、 “遺産分割は、相続開始から10年が経ったら、基本的に具体的相続分ができなくなる”という新しいルールが4月1日から導入されました。

つまり、遺産分割をしないまま10年が経ってしまうと、生前に援助を受けたことや、親の介護をしたことなどは考慮されず、「法定相続分」により均等に分割されることになるため、具体的相続分で有利な遺産分割を受けることができる人は、相続人同士の話し合いがまとまらないのであれば、そのまま放置せず早めに家庭裁判所で遺産分割の手続きをしないと損をするということです。

◆3. 不動産の相続登記が…

土地や家などの不動産には、“この土地や建物は自分のもの”であることを法務局に申請して公に示す“不動産登記”という手続きがあり、これまでは、所有者が変わっても不動産登記の名義変更は自由でしたが、2024年4月1日から、相続によって土地や建物を取得したら、名義を変更する相続登記の申請が義務化されます。

“土地の持ち主が分からない”“持ち主は分かるが、行方が分からず連絡もつかない”といった土地のことを“所有者不明土地”と言いますが、国内にはこのような土地が九州本島の面積と同じぐらいあり、さらに年々増えていると言われています。

所有者不明土地は、管理が行き届かずに放置されることが多いため、周辺の地域に悪影響を与える可能性があったり、災害復旧作業などが円滑に進まず土地の有効活用ができないなど、さまざまな問題を引き起こす可能性をはらんでいます。

所有者不明土地が発生する主な原因は、「所有者が亡くなっても相続登記がされないことにあります」と森下さん。そのため、2024年4月からは(憲法改正によって)不動産登記法が改正され、相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をすることが義務となります。

そして、正当な理由がないのに登記申請を怠った場合は、“10万円以下の過料”というペナルティが科されることがあります。なお、2024年4月より前に相続した不動産についても義務の対象になるため、注意が必要です。

◆新ルール「相続人申告登記」とは?

例えば、家庭裁判所で調停中であったり、遺産分割がすぐに進まないなどのケースを踏まえて「相続人申告登記」という新しいルールも、2024年4月からスタートします。こちらは、簡単な手続きで相続登記の義務を履行することができる制度で、相続人申告登記をおこなえば、相続登記をしなくてもペナルティが科されることはありません。

例えば不動産の所有者がなくなったときに、「登記簿上の所有者が亡くなって相続が開始したこと」「自らが亡くなった人の相続人であること」の2つを法務局に申し出ることによっておこなうことができ、民法では、配偶者や子どもなど、亡くなった人との親族関係によって相続できる人が定められているので、自分が申し出できる立場にあるかどうかも分かります。ちなみに、相続人申告登記の手続き費用は無料で、必要となる資料も通常の相続登記よりも少なくて済みます。

ただ、相続人申告登記はあくまでも簡易的なもので、森下さんは「遺産分割の話がまとまり、正式にその不動産を相続することになった方は、相続登記をおこなう必要があります」と補足します。

相続登記は、相続関係を明らかにする戸籍関係書類とともに、申請書を法務局に提出することによっておこないます。詳しくは、法務省のWebサイトで確認してください。また、手続きは専門家である司法書士に依頼することもできます。

最後に、森下さんは「亡くなった方が遺した大切な財産を未来へ向けて受け継いでいくためにも、土地や相続についてご関心を持っていただければと思います」と呼びかけました。

足立は、“隣の土地から越境してきた木の枝は切れるようになった”ということに驚いたと言い、「今困っている人もいると思いますけど、これで解決できるのではないかと思います」とトラブルの減少に期待します。

一方、青木は、「所有者不明土地は、減ったほうが社会のためにも良いと思いますので、(3年以内の相続登記申請が)義務化になることは頭に入れておきたい」と話していました。


(左から)青木源太、足立梨花



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聴取期限 2023年7月10日(月) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:青木源太・足立梨花 Sunday Collection
放送日時:毎週日曜 7:30~7:55
パーソナリティ:青木源太、足立梨花
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/collection/

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