法務局で管理されている地図の「約4割」は150年前のもの!?「地籍調査」が進むことによるメリットを解説

青木源太と足立梨花がパーソナリティをつとめ、暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていくTOKYO FMのラジオ番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」(毎週日曜 7:30~7:55)。7月16日(日)の放送では、国土交通省 地籍整備課長の實井正樹(さねい・まさき)さんに、「あなたの土地を再確認! 地籍調査 進行中」をテーマに話を伺いました。


(左から)青木源太、實井正樹さん、足立梨花



◆「地籍」とは何? 地籍調査が進まない理由

私たち日本人には、出生から死亡までの親族関係を公的に証明する「戸籍」がありますが、それと同じように、土地にも「地籍」と言って、その土地の所有者や面積などを記録する地籍簿と地籍図があります。

しかし現在、全国の法務局で管理されている地図は、今の土地の境界や形状などと必ずしも一致しているとは限りません。というのも、現在、法務局で管理されている地図の約4割は、今から約150年前の明治時代に作られた図面を元にしているからです。この主な理由として“地租改正”があります。

地租改正とは、明治政府が導入した土地の課税改革のことで、それまで明治政府の財源の多くは農民が収める“お米”いわゆる“年貢”でした。しかし、年によって収穫にバラつきが出て政府の収入が安定しないため、年貢方式をやめて土地に課税することになります。

そのため、明治政府がまずやらなければならなかったのは“土地の所有者と面積を確定すること”だったのですが、いろんな事情から、その測量を住民自らおこないました。

そうした背景もあって、明治時代に作成された図面は、土地の境界が明確ではなく、測量の誤差があることも多かったため、塀を立てたり、家の建て増しのときに近隣トラブルになったり、土地を売買する際、実態を正確に把握するのに時間がかかる、などのデメリットが多いことから“地籍調査”が必要とされています。

地籍調査とは、一つひとつの土地の所有者、地番、地目、境界、面積などを調査して地籍簿と地籍図を作成することです。“地番”とは一つひとつの土地を特定するために付けられる番号、“地目”は土地の用途(田んぼ、畑、宅地、山林など)のことです。なお、地籍調査は主に市区町村が実施しており、その成果は法務局へ送られた後、登記簿が修正されて法務局の備え付けの地図になります。

この地籍調査は1951年から実施されているものの、「(進行度で言うと)2022年度末の時点で約半分、津波浸水想定地域など地籍調査の必要性が高い地域に限れば8割です」と實井さん。

しかも、都道府県によって進み具合にバラつきがあり、北海道や東北、中国、四国、九州・沖縄地方はおおよそ平均を上回っていますが、関東、中部、近畿地方は平均を下回り、特に近畿地方のほとんどの府県が20%も進んでいない状況です。

地籍調査が進まない理由はいろいろとありますが、實井さんは「地籍調査に関する理解不足もあるように思います。個人の場合、生涯に土地取引をおこなう回数は非常に限られており、地籍調査の必要性や効果が住民の方々に十分理解されていないため、地籍調査実施に向けた機運が高まらないのも、進まない要因の1つではないかと考えています」と推測します。

◆地籍調査がおこなわれることによるメリット

では、地籍調査をすると、私たちにどういったメリットがあるかというと「まず、土地取引をスムーズにおこなうことができます」と實井さん。地籍調査がおこなわれていないと、登記簿や法務局にある地図と実際の土地の形状などが合っていない場合がありますが、「地籍調査がおこなわれていれば、土地に関する情報が正確なものに改められるため、土地境界をめぐるトラブルなどを未然に防止できます」とメリットを挙げます。

また、土地を売りたい場合、地籍調査がおこなわれていないと、所有している土地の測量を自らおこなう必要があり、義務化はされていないものの、測量をおこなっていないと、そもそも買い手がつかなかったり、隣接する土地所有者とのトラブルにもなりかねません。

一方、地籍調査済みの土地であれば、測量する手間と費用を省くことができ、道路の整備や市街地の再開発事業、適切な森林の管理なども円滑に進めることができるうえに、所有者不明の土地が発生するのを抑制することにもつながります。さらには、地籍調査は市区町村が実施するため費用負担もありません。

なお、地籍調査の流れとしては、まず実施主体である市区町村などが地籍調査の計画を立て、調査に先立ち該当する地域住民にハガキなどでお知らせして説明会を実施します。

続いて、土地所有者などの立会いのもと、境界などを確認します。ちなみに、最近は飛行機などを使った最新の測量技術を活用しておこなうため、山林などの立会いが大変なところでは、現地での確認を省くこともできます。

そして、土地の確認が終わると、実際に土地ごとの測量を実施して正確な地図を作り、面積を測定します。その後、地籍簿と地籍図の案ができたところで、住民にそれらを閲覧していただき、誤りなどがあれば訂正します。この閲覧期間は20日間です。

こうしてできあがった地籍簿と地籍図は都道府県知事が認証し、法務局に送付されます。その結果、古い登記簿が改められることに加え、地籍図が新しい地図として備え付けられることになります。

なお、国土交通省の地籍調査Webサイト上にある「地籍調査状況マップ」では、お住まいの市町村の地籍調査実施率や自宅周辺で地籍調査がおこなわれているかどうかなどを確認することができます。また、地籍調査の実施状況については、お住まいの市区町村の地籍調査の窓口にお問い合わせいただければ分かります。

改めて實井さんは、「地籍調査では、土地の境界を決めていく際に、原則として土地の所有者の方に立ち会ってもらい、境界の位置を一緒に確認しながら進めています。そのため、土地所有者の方のご協力がなければ、調査が円滑に進みません。もし今後、市区町村から地籍調査の案内が届いたら、調査への積極的なご協力をお願いします」と呼びかけました。

今回の話に、足立は「古い図面をもとにした地図が今も法務局で公の地図として利用されていることにビックリした」と率直な感想を述べ、「皆さんのご協力で、ちゃんとした地図に変えていくことによって、土地についても考えられるし、もし(土地を)売買するとなった際に(地籍調査をおこなっていれば)スムーズに進められる、ということも知ってほしいなと思いました」と話します。

青木は、地籍調査に先立ち、該当する地域住民にハガキなどでお知らせが届くことに着目。「もしお知らせが届いたら協力したいですし、土地所有者であれば立会いなども必要になるので、積極的に協力していきたい」と話していました。


(左から)青木源太、足立梨花



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聴取期限 2023年7月24日(月) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:青木源太・足立梨花 Sunday Collection
放送日時:毎週日曜 7:30~7:55
パーソナリティ:青木源太、足立梨花
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/collection/

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