ローカル新聞「週刊とうきょう」92歳の現役記者が語る編集ポリシー「絶対に人の悪口を書かない」「投書を扱わない」

放送作家・脚本家の小山薫堂とフリーアナウンサーの宇賀なつみがパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「日本郵便 SUNDAY’S POST」(毎週日曜15:00~15:50)。7月16日(日)の放送は、東京・中野区のローカル新聞「週刊とうきょう」の主筆兼記者である涌井友子(わくい・ともこ)さんをゲストに迎えてお届けしました。


(左から)小山薫堂、涌井友子さん、宇賀なつみ



◆1974年創刊「週刊とうきょう」のポリシーとは?

涌井さんは、1931年生まれ、静岡県藤枝市出身の御年92歳。終戦後、鉄道会社での勤務を経て、1958年に結婚。当時、新聞社勤めをしていた夫がのちに独立し、1974年に夫婦で「週刊とうきょう」を創刊。しかし、8年後の1982年に夫が他界し、以降は涌井さんが夫の思いを引き継いで、これまで「週刊とうきょう」を発行し続けています。

そんな「週刊とうきょう」について、涌井さんは「題名に偽りありで、(発行するのは)月2回です。10日と25日付です」と説明。紙面の内容はというと、中野区の話題が中心で、「主人はたぶん、東京の行事を取り扱いたい気持ちがあったと思うんですよ。だから大きく“とうきょう”になっちゃったんですけど」と話します。

この日、涌井さんにはこれまで刊行してきた「週刊とうきょう」の一部をスタジオに持参していただき、小山と宇賀はそれらに目を通しながら話を聞くことに。

創刊当初は、新聞を作ったことはなく、主に集金を担当していたこともあって、夫が亡くなったときは勝手が分からず、夫の友人が割り付けや構成など紙面づくりの“いろは”を3回ほどレクチャーしてくれて、連載も受け持ってくれたそうです。

現在、編集部に在籍する記者は、涌井さん1人。夫との間に4人の子宝に恵まれ「2番目の娘は高校の頃から出勤したり、私が(取材や業務が)重なって行けないときは写真だけ撮ってきてくれて。区役所の広報の人たちは、当時は職人的な人がいたんですよ。その人たちが、私が作ったものに赤(訂正)を入れてくれて『間違っているよ』って。『10行くらいでマルにして、行替えするように書くと読みやすいからね』と(教えてくれるなどして)本当にみなさんにお世話になりました。だから怖いもの知らずですよね」と笑顔をのぞかせます。

宇賀からの「お休みはあまりないんですか?」との質問に、「10日と25日に発行すると決めていましたからね。1回、『どうしようかな、まあ(新聞をお休みしても)いっか』ってなったら、それはズルズルと流されちゃうので、絶対に10日と25日は何があっても出そうと(笑)。それだから続けられたんです」と涌井さん。

今は子どもたちの支えもあって存続させることができているとし、「本当にありがたいと思います」と感謝の言葉も。


「週刊とうきょう」を手にする宇賀なつみ



小山が「これまで涌井さんが取り上げた記事のなかで、一番印象深いものは何ですか?」と尋ねると、涌井さんは「もちろん、サンプラ(中野サンプラザ)ができたときとか、日本閣、東中野にあった結婚式場が閉館するときに特集を組ませていただいて、喜んでいただいたこと。日本閣で結婚式をなさった方は結構多いんです。新聞を見て、『そういえば……』なんて話も出て、印象に残っています」と振り返ります。

また、「週刊とうきょう」は中野区の話題が中心ということもあって、涌井さんはこれまでずっと中野区在住。「(他の地域に)引っ越したほうが、経費が安く済むこともあるんだけど、やっぱりその土地に住んでいるからこそ、入ってくるニュースもあるわけですね。そうすると、やっぱり引っ越せない」と話します。

地域に根付いた新聞ならではの話として「『涌井さん、実はこういうネタがあるんだよ』と教えてくださる方もいるんですよ。今ではあまり(現場に)出向かないものですから、娘が行くと『お母さんは元気ですか?』って聞かれたり、私がいると『おっ、元気でよかったな』って言われたり。他人行儀じゃないお付き合いをしてくださるのは、すごくありがたいことですね」と語ります。

そんな「週刊とうきょう」の編集ポリシーを聞かれると、涌井さんは「独立したときに主人と約束したのは、絶対に人の悪口を書かないこと。それから、投書を扱わないこと。ローカルだと、投書は結局、人の悪口になってしまったり、誰かがどうしたとか書かれたりするのがすごく嫌なんです。“読む方の身になって”ということを守っていかないと。うれしい記事はやっぱり、書いていても楽しいですからね」と答えます。

涌井さんの言葉の数々に、小山は「読んだ人が幸せな気持ちになるような記事を書きたいということですよね」と感心しきりでした。

----------------------------------------------------
7月16日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2023年7月24日(月) AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。

----------------------------------------------------

<番組概要>
番組名:日本郵便 SUNDAY’S POST
放送日時:毎週日曜 15:00~15:50
パーソナリティ:小山薫堂、宇賀なつみ
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/post/

コンテンツ一覧

日本郵便SUNDAY'S POST番外編「心のままに」vol.66 音声

日本郵便SUNDAY'S POST番外編「心のままに」vol.66

日本郵便SUNDAY'S POST番外編「心のままに」vol.65 音声

日本郵便SUNDAY'S POST番外編「心のままに」vol.65

日本郵便SUNDAY'S POST番外編「心のままに」2024年9月 音声

日本郵便SUNDAY'S POST番外編「心のままに」2024年9月

日本郵便SUNDAY'S POST番外編「心のままに」2024年8月 音声

日本郵便SUNDAY'S POST番外編「心のままに」2024年8月

日本郵便SUNDAY'S POST番外編「心のままに」2024年7月 音声

日本郵便SUNDAY'S POST番外編「心のままに」2024年7月

日本郵便SUNDAY'S POST番外編「心のままに」2024年6月 音声

日本郵便SUNDAY'S POST番外編「心のままに」2024年6月

日本郵便SUNDAY'S POST番外編「心のままに」2024年5月 音声

日本郵便SUNDAY'S POST番外編「心のままに」2024年5月

日本郵便SUNDAY'S POST番外編「心のままに」2024年4月 音声

日本郵便SUNDAY'S POST番外編「心のままに」2024年4月

日本郵便SUNDAY'S POST番外編「心のままに」2024年3月 音声

日本郵便SUNDAY'S POST番外編「心のままに」2024年3月

詩人・谷川俊太郎さんを偲んで…小山薫堂も驚いた詩との向き合い方 谷川「お金に換わらない詩なんてリアリティがない」 記事

詩人・谷川俊太郎さんを偲んで…小山薫堂も驚いた詩との向き合い方 谷川「お金に換わらない詩なんてリアリティがない」

「SUNDAY’S POST」市制100周年の別府市で公開収録! 市長が町の魅力をアピール「右を見たら海があって、左を向くと山があって、温泉があって…」 記事

「SUNDAY’S POST」市制100周年の別府市で公開収録! 市長が町の魅力をアピール「右を見たら海があって、左を向くと山があって、温泉があって…」

宇賀なつみ「実は私、編み物得意なんですよ!」日本の文化・年賀状を盛り上げるべく「SUNDAY’S POST」独自のプレゼント企画が始動 記事

宇賀なつみ「実は私、編み物得意なんですよ!」日本の文化・年賀状を盛り上げるべく「SUNDAY’S POST」独自のプレゼント企画が始動

八嶋智人 役を演じるうえで心がけていることは?「“場所を楽しむ能力”みたいなものが俳優には必要なのかもしれない」 記事

八嶋智人 役を演じるうえで心がけていることは?「“場所を楽しむ能力”みたいなものが俳優には必要なのかもしれない」

エリザベス女王が“緑の魔術師”と称えた庭園デザイナー・石原和幸 世界最高峰の「英国チェルシーフラワーショー」に出続ける理由とは? 記事

エリザベス女王が“緑の魔術師”と称えた庭園デザイナー・石原和幸 世界最高峰の「英国チェルシーフラワーショー」に出続ける理由とは?

独自の民族行事、集落ごとに言葉が違う…四国の最西端・佐田岬半島にある「愛媛県伊方町」の魅力とは? 記事

独自の民族行事、集落ごとに言葉が違う…四国の最西端・佐田岬半島にある「愛媛県伊方町」の魅力とは?

“和食”をユネスコ無形文化遺産にした立役者 村田吉弘“ほんまにおいしい”を語る 記事

“和食”をユネスコ無形文化遺産にした立役者 村田吉弘“ほんまにおいしい”を語る

渡辺謙「真田広之くんが賞を獲って、ものすごく可能性を広げてくれている」日本のエンタメ事情に言及 記事

渡辺謙「真田広之くんが賞を獲って、ものすごく可能性を広げてくれている」日本のエンタメ事情に言及

巡った温泉は約3,000以上…『温泉百名山』の著者が選んだ“人生最後に入りたい温泉”とは?「ここで昇天してもいいくらい」 記事

巡った温泉は約3,000以上…『温泉百名山』の著者が選んだ“人生最後に入りたい温泉”とは?「ここで昇天してもいいくらい」