2024年度から“年間1,000円”の徴収…「森林環境税」の目的は? 専門家が解説!

青木源太と足立梨花がパーソナリティをつとめ、暮らしに役立つ情報や気になるトピックを深掘りしていくTOKYO FMのラジオ番組「青木源太・足立梨花 Sunday Collection」(毎週日曜 7:30~7:55)。7月23日(日)の放送では、林野庁 森林利用課 森林集積推進室長の城風人(しろ・かざと)さんに、「森のある暮らしを守る! 森林環境税」をテーマに話を伺いました。


(左から)青木源太、城風人さん、足立梨花



◆2024年度から課税が始まる「森林環境税」とは?

日本は、国土面積の約7割が森林である森林国で、国際機関「OECD(経済協力開発機構)」に加盟する先進国38ヵ国のなかで、日本の森林率はフィンランド、スウェーデンに次いで第3位です。

森林には「地球温暖化防止」「災害の防止」「生物多様性の保全」などに役立つ機能が備わっています。例えば、森林の土壌はスポンジのように小さな穴が無数にあり、そうした土壌の隙間や岩の割れ目を水が通るうちに“ろ過”され、そこに適度なミネラルも溶け出し、最終的においしい水になります。

このように、森林が国土面積の約7割もあることは、まさに日本の強みとも言えますが、近年は整備が行き届かず、森林ならではの多面的機能が十分に発揮されない森林が増えています。主な要因は「林業の採算性の低下」「担い手不足」「所有者の世代交代」などです。

そこで、新しく始まるのが「森林環境税」です。こちらは、2019年度に創設された新しい税の仕組みで、城さんは「森林整備などに必要な地方財源を安定的に確保するため、2019年に『森林環境税及び森林環境譲与税に関する法律』が成立し、国民のみなさまに等しく負担を分かち合っていただくものとして創設されました2024年度から国内に住所がある方で、一定の所得を得ている方1人あたり年間1,000円の課税となり、住民税と併せて徴収される仕組みとなっています」と説明します。

◆森林整備促進の事例を紹介

森林環境税は、今後「森林の整備」「人材育成」「木材利用・普及啓発」の取り組みなどに活用される予定ですが、すでに各地で別の財源を活用した森林整備促進のためのさまざまな取り組みが進められています。そこで、すでに取り組みが始まっている「人材の育成」と「木材利用・普及啓発」の事例を紹介します。

徳島県では、即戦力となる若手林業就業者を養成する「とくしま林業アカデミー」に対して運営経費の補助をおこない、研修に必要な林業機械のリース代などに活用されています。

「とくしま林業アカデミー」の研修カリキュラムは、現場で即戦力となることを目指した“現場力重視”のカリキュラムとなっており、例えば、高性能林業機械シミュレーターを活用した研修もおこなわれています。

林業というと“力仕事”のイメージが強いですが、「今は機械化、いわゆるスマート林業化が進んでいて、機械を上手に扱う技術が求められているため、研修ではこうしたシミュレーターも活用されているんです」と城さん。

また、近年は林業でもドローンを活用することが多いので、ドローンの操作技術を研修に盛り込んでいる県や、林業への就職を希望される方の受け入れ体制を強化するために、村が空き家を改修して林業従事者の居住用に貸し出す、といった取り組みも実施されています。

ちなみに、これまでの「とくしま林業アカデミー」の卒業生全員、県内の林業事業体へ就職しており、卒業生の求人倍率は、なんと3倍を超えているそうです。

「木材利用・普及啓発」については、公共建築物に積極的に木材の使用を進めるなど、都市部を中心に全国の約4割の市区町村が、さまざまな取り組みをおこなっています。

例えば、青森県の大鰐町(おおわにまち)では、出産のお祝い品として、木製品を贈呈する事業を実施しており、これまで子どもが生まれた世帯に町内の木材加工場で制作された木のお椀とお箸をセットにして贈呈しました。

この事業の素晴らしい点は、出産のお祝いの品に木材が利用されたというだけではなく、「幼い頃から木材の食器を使えば、自然と木に親しみを持ち、大人になってからも、木材を積極的に利用してくれることが期待できます。これは『木育(もくいく)』と呼ばれている取り組みで、子どもから大人まで、木材や木製品への触れ合いを通じて木材への親しみを育んでもらうことで、木材利用・普及啓発につなげます」と解説します。

そのほか、都市部の市町村と森林地域の市町村が連携して、森林整備や木材利用の取り組みを進めている事例も。

奈良県の田原本町(たわらもとちょう)と川上村(かわかみむら)では、都市部であり森林のない田原本町が、山間部の川上村にある森林を整備し、川上村と協力して、その森林を活用する事業をおこなっています。

例えば、田原本町の子どもたちの森林環境教育を川上村でおこなったり、2022年には、川上村の森林整備で出た間伐材を使って、黒板などに貼り付けられる木製のマグネットバーを作成し、それを町民の方々に配布するなどして、森林環境への理解を深めたりしています。

改めて城さんは、「2024年度から森林環境税の課税が始まります。国民の皆さんには“国土の7割を占める森林”に関心を持っていただき、森の恵みを支えていただけるよう、ご協力をお願いいたします」と呼びかけました。

今回の話に、足立が印象に残ったこととして「木育」を挙げ、「木育をすることによって、子どもたちがまた森林を好きになって興味を持ってもらう。こういう循環って素敵だなと思いました」と感想を述べます。

青木は、森林環境税が活用される取り組みの1つでもある「人材育成」に着目。「とくしま林業アカデミー」の事例を引き合いに、「(日本は森林国なので)森があるということは、そこに従事する林業就業者が増えないといけないですし、人材を育成するだけでなく、林業従事者が暮らしやすい環境を整えることも大事だなと思いました」と話していました。


(左から)青木源太、足立梨花



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7月23日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2023年7月31日(月) AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。

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<番組概要>
番組名:青木源太・足立梨花 Sunday Collection
放送日時:毎週日曜 7:30~7:55
パーソナリティ:青木源太、足立梨花

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