モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。7月3日の週は、夏休みのユージに代わってJOYがパーソナリティつとめています。
7月6日(木)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「鉄道車両への防犯カメラ設置、義務化」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。
※写真はイメージです
鉄道の車両内で刃物を使った凶悪事件が多発している事態を受けて、国土交通省は、新幹線全線と利用者数が一定の基準を上回る3大都市圏の在来線に“防犯カメラ設置”を義務化する方針を固めました。早ければ9月から義務化に必要な省令の改正が行われる見通しです。その後、導入される車両に防犯カメラの設置が求められます。
◆すべての車両に防犯カメラが設置されることに
吉田:はたして、防犯カメラの設置が義務化されることによって、犯罪の抑止効果は本当に期待できるのでしょうか? 各車両から送られてくる膨大な映像データは、どのように管理されるのか? 塚越さんに解説いただきます。
JOY:先日、料理人の方が持っていた包丁を「凶器」だと勘違いした乗客によって、電車内がパニックに陥る出来事があったばかりです。今回の「義務化」につながるような、鉄道の車両内で起きた事件といえば、どのような事件が挙げられますか?
塚越:2015年に東海道新幹線の車内で焼身自殺をした男性が死亡し、煙を吸った女性が巻き添えで亡くなりました。新幹線の歴史で初めての列車火災事故となりました。2018年には、新幹線車内で刃物を振り回した男によって1人が亡くなりました。
大きく話題となったのは、2021年10月31日(ハロウィン)、映画「ジョーカー」のジョーカー役に扮した男が東京の京王線の車内で男性を刺し放火した事件です。先日裁判があったのですが(懲役25年求刑。判決は7月31日)、被害者の男性は重症を負って、当時心肺停止状態になりました。その後、回復したのですが退院は翌年の4月で、現在も後遺症で手足が不自由になり、杖や車椅子を使い、家族の介助が必要な状態です。さらに同年夏にも小田急線内で男が刃物を振り回し、10人が重軽傷を負いました。
吉田:車両内の「防犯カメラ」については、自主的に設置を進めている鉄道会社もありますよね?
塚越:国土交通省が去年2月に鉄道各社におこなった調査では、全国のおよそ5万2,500両のうち、カメラが設置済みなのは全体の約4割の2万両でした。その後、最新の設置状況は、新幹線はJR西日本の山陽新幹線が96%を除いて100%設置されています。
他にも、JR東日本の首都圏の在来線は100%、東急電鉄が100%設置されています。京王電鉄は87%で、小田急電鉄は2025年末までに全車両に設置する方針です。
一方、東京メトロは約60%、東武電鉄は3月末時点で17%、JR西日本の京阪神地区の通勤電車は約30%と、各社でばらつきがある状態です。
◆なぜ「3大都市圏」のみ対象?
JOY:そうした状況にあるなかで、9月に導入される見込みの「防犯カメラの設置義務化」では、どのような運用が求められるのでしょうか?
塚越:まず、防犯カメラの設置が義務化されるのは、密度の高い東京、大阪、名古屋の3大都市圏を走る車両と、全ての新幹線になる見通しです。カメラの性能については、1日分以上の録画機能は求めますが、映像をリアルタイムで車掌室や司令所に送る機能までは求めない方針だそうです。
一方、西武鉄道は2026年度までに、指令所等でもリアルタイムで映像を確認できるカメラを100%にする方針ということで、リアルタイムなのでトラブルが起きたときに、すぐに対応ができるということです。
吉田:乗客の多い「3大都市圏」の設置に限定されたのはどうしてなのでしょうか?
塚越:もともと国は、地域を問わず新たに製造される全ての列車にカメラを設置することも検討していたのですが、有識者や鉄道各社から、実効性の問題や費用負担を巡って意見が出たそうです。つまり、そこまで密度の多くない車両に取り付けるのは、費用面での負担を考慮すると割に合わないという意見がありました。実際、鉄道関係者からは、乗客の安全という意味で防犯カメラは重要ですが、カメラの設置と維持は莫大な費用がかかるという声や、国の財政的支援を求める声もありました。日本の人口が減り、収入よりも支出が増えるなかで、インフラをどうするかという問題も考えられます。
◆“100%の安全”はない!?
JOY:今回、義務化される目的は「犯罪の抑止効果」だと思いますが、実際「抑止効果」は、どの程度あると思われますか?
塚越:鉄道という不特定多数の人が利用するサービスでは、安全を考えれば防犯カメラの設置は重要なのですが、維持にはコストもかかります。犯人には一定の抑止効果・威嚇効果・痴漢防止があると思いますが、犯人のなかには捕まることを恐れない、いわゆる“無敵の人”(注:財産や社会的信用など失って困るものがないため、犯罪を起こすことに躊躇がない人を意味する言葉)がいることも事実で、どこまで効果があるかは疑問です。
また、プライバシーの問題もあります。リアルタイムで(映像が確認)できるようにすればいいという話もありますが、コストの面で限界があります。難しいですが、私たちは100%の安全はないということをこれからの時代、意識しなければいけません。何を対策しても限界があると、頭のなかに入れておくしかないかな、と思います。
吉田明世、塚越健司さん、JOY
<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世