モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。7月20日(木)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「都立高校入試 英語スピーキングテスト実施問題」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。
※写真はイメージです
東京都内の中学校や都立高校に子どもを通わせている父兄や、中学高校で英語を教えている先生、英語教育の研究者などで構成されている「都立高校入試へのスピーキングテスト導入の中止を求める会」が、7月3日(月)に会見をおこないました。会見では、去年の秋から実施されている英語のスピーキングテストについて「さまざまな問題がある」として、東京都教育委員会に対し中止を求めました。
◆問題点が指摘された「スピーキングテスト」
吉田:この「スピーキングテスト」は今後、全国的に実施される可能性が指摘されていて、東京都に限った問題ではないようです。そこで今回は改めて「都立高校入試で、英語のスピーキングテストを実施する問題点」について、塚越さんに解説いただきます。
ユージ:そもそも「英語のスピーキングテスト」とはどのような内容ですか?
塚越:日本の英語教育は長年、実践的に「使える英語」、つまり話せる英語になっていないことが問題でした。そのため話すこと、つまりスピーキングを改善するために導入されたのがスピーキングテストです。受験生はマイクのついたヘッドセットをつけて、タブレット端末を見ながら答えます。問題は、英文を声に出して読み上げるものや、イラストを見て英語で答えるものなどがあります。
例えば、「電車に乗っていたら、花をくわえた鳥が入ってきて帽子の上に置いていった」というイラストがあるとします。複雑なイラストだと思うのですが、この状況について、英語で40秒以内に答える問題があります。このスピーキングテストは20点満点です。都立高校の入試は、学力検査が700点で、内申点が300点。これにスピーキングテストの20点が加わり、計1,020点です。このなかの20点は、全体的に決して少なくない点数だと思います。
◆「他人の解答が聞こえる環境での試験」…受験者からは「うるさかった」の声も
吉田:昨年の秋、スピーキングテストが実施される前から問題が指摘されていたそうですが、そのときはどのような点が問題になっていたのですか?
塚越:たくさんありますが、まずは不公平性の問題です。スピーキングテストは音声なので採点に時間がかかるため、秋に実施します。昨年はフィリピンにデータを送って、採点されました。秋に試験を実施すると、親の転勤などで急きょ都内に引っ越した生徒で都立高校受験を希望する人はテストが受けられず、また、病気やケガで当日の試験が受けられない人もいます。
そうした不受験生に対しては、「英語の筆記試験の得点が同じだった別の受験生達のスピーキングテストの平均点を加点」する対応をします。つまり、自分と同じくらいの英語学力だった、他人の試験結果の平均が自分の点数になるということです。スピーキングテストは新しい分野で、英語の実力とは異なります。なにより他人のテスト結果が反映されるというのは、公の試験という性質上、問題だと思います。
もう1つは、テストの実施事業者が民間企業の「ベネッセ」という点です。テストはベネッセ独自のシステムを使って実施されます。すると、ベネッセ方式のテストを導入している中学に通っている生徒や、ベネッセのスピーキングテスト講座を受けている生徒が有利になるのでは? という指摘があります。
また、試験内容がベネッセの実施している別の英語検定試験に似ている、といった指摘もあり、公平性が担保されていません。
そして、試験を受けるには、ベネッセが運営するサイトに、受験前に個人情報を登録しなければいけません。公的な試験で、なぜ民間企業に個人情報を登録しなければならないのか? という批判があります。
ユージ:実際に実施してみてどうだったのですか?
塚越:先日おこなわれた「都立高校入試へのスピーキングテスト導入の中止を求める会」の会見によると、昨年受験した生徒の親が、情報開示請求で音声データを取り寄せようとしたところ、加工済みのデータしか共有されなかったと話していたとのことです。
未加工の音声データは非開示でしたが、その理由として「他の受験者の音声等が含まれており、個人を特定できるため」だとしています。つまり、他の受験生の音声も混じっている環境での試験だということで、適切に採点されたか疑問に思ったそうです。受験生自身も「他の人の声がうるさい」と話していたようです。やはり、公平性の観点から問題だと思います。
◆都の教育委員会は継続していく方針
ユージ:この問題、今後どうなっていくと思いますか?
塚越:いろいろと問題点は指摘されているのですが、東京都の教育委員会は「問題がなかった」という認識で、批判があってもこのまま続ける方針です。場合によっては全国に広がる可能性もあります。
ただ、ベネッセは今年度限りで事業者を撤退し、来年以降の事業者には名乗りを挙げませんでした。来年度からはイギリスの非営利組織「ブリティッシュ・カウンシル」が運営します。
いろいろと変化がありますが、来年度以降どう変わっていくのか、その点も注意してみていく必要があります。数年前にも、国が大学入学共通テストに英語民間試験の導入を考えていたのですが、見送ったことがありました。しかし、東京都は民間企業で続けるということで、この辺も噛み合わないところがあり、来年度から運営も変わります。
ユージ:「英語」と一口に言ってもアメリカ英語とイギリス英語があり、発音も違えば言葉の言い回しもけっこう違います。そこも採点基準でどちらが重視されるのか気になります。
塚越:そうですね。そうなると、受験生がいちばん混乱します。親御さんも混乱しちゃうので、この辺はきっちりしないといけないなと思います。我々も注目していかないといけないなと思います。
吉田明世、塚越健司さん、ユージ
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7月20日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2023年7月28日(金) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世