ワークマン、カインズ、ベイシア…31社を傘下に持つベイシアグループがおこなう「ハリネズミ経営」とは?

笹川友里がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「DIGITAL VORN Future Pix」(毎週土曜 20:00~20:30)。この番組では、デジタルシーンのフロントランナーをゲストに迎え、私たちを待ち受ける未来の社会について話を伺っていきます。7月22日(土)の放送は、株式会社ベイシアグループソリューションズ 代表取締役社長の樋口正也(ひぐち・まさや)さんをゲストに迎え、お届けしました。


(左から)笹川友里、樋口正也さん



1971年生まれ、新潟県出身の樋口さんは、京都大学工学部卒業後、IBMで26年間に渡り最先端のテクノロジー分野で研究開発、新規事業、事業戦略からデジタルマーケティング、ECなど16の事業を歴任。2021年7月よりベイシアグループにCDO/CIOとして参画し、2022年9月よりベイシアグループソリューションズ代表取締役社長に就任しました。

◆「動くのが当たり前」を実現し続ける“使命”

ワークマンやベイシア、カインズ、ハンズなど31社を傘下に持つベイシアグループは、2020年にグループ売り上げ1兆円を達成。さらに、グループ全体の店舗数は全国47都道府県に約2,000店舗、従業員数は約3万人を誇ります。

なお、正社員は全体の約2割となる6,000人で、残りの8割は“各店舗で働く人たち”なので、「(正社員が)地域の方と一体となって、我々を頼ってもらいながら楽しく働いていただく。この関係がすごく大事」と言います。

また、グループサポート事業として、自身が手腕を振るうベイシアグループソリューションズについて伺うと、「ベイシアグループ全体のIT、デジタルを統括する会社」と説明します。

ここで笹川が、「業態の異なる31社を統括するために、DX(デジタルトランスフォーメーション)の横串を通していくのは大変なことでしょうね」と案じると、「おっしゃる通りで、我々がやっているところはサプライチェーンですから、メーカーから物を仕入れて、在庫管理をして、店舗で売る。この一連の流れを、“人間が呼吸をする”ように当たり前に物が流れるようにする。ここが、サプライチェーンの“根幹”となるところ」と樋口さん。

ただ、今やECやネットスーパーなどで、便利に買い物ができるのが当たり前の世の中になっているなかで、「その裏側の機能は“動くのが当たり前”と思われていますが、これが止まってしまったら、まさに人間の呼吸が止まるのと一緒で、死に至るぐらい非常にインパクトがあるので、使命感が大きい」と言及します。

◆「需要予測」と「口コミ分析」

さらに同グループは、店頭に来たお客さまが“買いたい商品がない”というチャンスロス(機会損失)を招かぬよう、AI(人工知能)を活用したデータ分析も積極的に取り組んでおり、どのぐらいその商品が売れるのかを需要予測したうえで、どのぐらい仕入れたら良いかを算出し、欠品が発生しないように努めています。

ですが、特にスーパーマーケットで販売している総菜や生鮮食品などは「まさに鮮度との闘いで、その日に仕入れた物は、その日に売れないと廃棄することになりますから、発注量と在庫管理は商品特性によってまったく異なるので、非常に難しいです。SDGs(持続可能な開発目標)の観点からも、フードロスの典型的なところですので、(需要予測は)毎日が勝負」と語ります。

また、AIによる需要予測に加えて力を入れていることとして「口コミ分析」を挙げます。

膨大にある商品すべての口コミを人間の目でチェックしていくのは困難ですが、「(デジタルを活用して)関連する商品のカテゴリーのものを集めてきて、自然言語をサマリー(要約)することで“この商品ではこういうことが求められている”という要望や、お客さまがポジティブ、ネガティブな意見の要因をまとめています。これによって、商品ごとに求められていることが分かり、今後の商品企画にも活かせます」と話します。

◆グループ各社の強みを尖らせる「ハリネズミ経営」

続いて“ベイシアグループならではのDXのアプローチ”について伺うと、樋口さんは「ハリネズミ経営」と回答。その仕組みについて、「各社それぞれが個性を伸ばすために、ハリネズミの針のように自分の良さ(長所や強み)をどんどん尖らせていく(アプローチ術)。とはいえ、グループでまとめてやったほうが効率的なサプライチェーンや物流については、我々(ベイシアグループソリューションズ)が中心としておこなう。これがハリネズミの胴体となり、針は各社がもっと尖らせて太くしていく」と解説。

また、グループ各社の経営陣と話す機会があると、「私は縁の下の力持ちですから。みなさんにとって難しいこと、できないことを下支えしていきます。みなさんに気持ち良く(針を)伸ばしていただき、何か私どもで支えたほうが良いことをどんどんやらせてくださいと伝えています」と語ります。

そうした姿勢に「“(各社が)安心して尖れるためには胴体が大事”ということですね。そうした棲み分けがしっかりとできているんですね」と感心しきりの笹川でした。

次回7月29日(土)の放送も、樋口さんをゲストに迎えてお届けします。樋口さんの仕事の流儀や働き方の変化について、貴重な話が聴けるかも!?

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7月22日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2023年7月30日(日) AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。

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<番組概要>
番組名:DIGITAL VORN Future Pix
放送日時:毎週土曜 20:00~20:30
パーソナリティ:笹川友里

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