笹川友里がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「DIGITAL VORN Future Pix」(毎週土曜 20:00~20:30)。この番組では、デジタルシーンのフロントランナーをゲストに迎え、私たちを待ち受ける未来の社会について話を伺っていきます。8月12日(土)の放送は、ADKホールディングス 執行役員グループCIOの柴﨑貴志(しばさき・たかし)さんをゲストに迎え、お届けしました。
(左から)笹川友里、柴﨑貴志さん
柴﨑さんは、1996年からIT業界に入り、外資系企業を中心にインフラから基幹業務システムまで幅広いソリューションの企画、導入、運用及びマネージメントを経験した後、2017年にWalmart傘下の株式会社西友に入社。そこで楽天西友ネットスーパー事業の立ち上げ、社内大型プロジェクトの立て直し、M&A後のシステム全刷新の計画策定などを担当。そして、2022年5月に現職に就任し、IT体制の抜本的な立て直しと並行して社内業務プロセス改革をリードしています。
◆“アニメ”関連業務の幅の広さに驚き
総合広告会社のADKホールディングスは、広告やマーケティング業務に加え、アニメ作品のIP事業の歴史が長く、古くは「8マン(エイトマン)」「超電動ロボ 鉄人28号FX」のほか、「ドラえもん」「クレヨンしんちゃん」といった国民的アニメや「プリキュア」シリーズに「ONE PIECE(ワンピース)」、「テニスの王子様」など、名立たる作品の数々に携わっています。
これまで外資系企業で長くキャリアを積んできた柴﨑さんは、2022年5月に現職に就くと、アニメに関する業務の幅の広さに驚いたと言い、「単に制作してテレビで放映するだけでなく、例えば『ドラえもん』だと、いろいろな企業さまとのタイアップやグッズの販売、『テニスの王子様』だと舞台などに広がっていきますし、アニメは海外での展開もありますので、本当に幅が広い」と言及。
アニメなどにおけるデジタルマーケティングについても、ひと昔前のテレビアニメは、家庭における余暇の時間の多くを占めていましたが、最近では、さまざまな動画配信プラットフォームやソーシャルメディア、ECサイトなど観る側の選択肢が増えたことで、「アニメ好きの方でも(テレビではなく)スマホで完結してしまうことも結構ある。そういった幅広い余暇の時間の使い方のなかで、どうやってアニメで(テレビの)シェアを取っていくか」と課題を語ります。
そのためにも、「ただテレビで垂れ流してもしょうがないので、(作品に)興味を持っていただける方がどんな場所にいて、どんな年齢の方で……といったことをきちんと絞り込みながら、一般の視聴者からファン、そこから熱烈なファンになっていただいて、さらにいろいろな広がりを持たせていくことが、マーケティングとして重要なポイントになってきます」と話します。
◆広告業界にも大きな変化が…
アニメやコンテンツのマーケティングもさることながら、もう1つの主力事業である広告代理店業務についても、デジタルやITの進化によって、その手法は多岐に渡り、「ひと言で言ってしまえば、広告とデジタルは切っても切れない世界になっている」と言います。
顧客接点についても、「スマホの普及によって“どんな方が何を見ているか”というのが、より分かりやすくなった」と時代の変化に触れます。ではどのように変化したのかと言うと、新聞、雑誌、テレビ、ラジオのいわゆる“4マス広告”は効果測定が難しいものの、「デジタル広告の場合、興味を持った方がクリックしたかどうか、また、クリックした方はその会社のWebサイトに来て商品ページを見たか、さらに、そこから購買したか、というのを追えるようになった。そこが今までとはまったく変わっています」と柴崎さん。
そして、すでに数年前にインターネット広告費が4マス広告費を上回っていることから、「この勢いはもう止まらない。新しいSNSが出てくると、またそこで何をするかみたいなことが出てきますので、どんどん(インターネット広告のほうが)広がっていく」と現状を語ります。
インターネット広告が主流の時代に突入した今、「デジタルマーケティングは、単に広告を打つだけではないんです。戦略として、どこで何を打ち出していくか。そういったことを具体的なデータをもとに分析し、実際に投資した分に対してちゃんと効果があったかどうか。そうしたことも見ながら(運用を)やっていくことが今や普通になってきたのは、広告業界とデジタルがもたらした効果なのかなとも思います」と感じ入ります。
◆会社が強くなっていくために求められることとは?
続いて、インターネット広告市場が大きく成長しているなかでの今後の展望について伺うと、柴﨑さんは「“データ分析やデジタルデータをどう活用するか”が重要になってきます。とはいえ、従来のマスメディアへの広告出稿もおこないながら、その一方で(インターネット広告市場の)データ分析もきちんとおこなって、テクノロジーを活用した統合的なマーケティングをやっていく。そして、それを商品の開発などにフィードバックするなど、そういったことを横断的にきちんとできる会社が強くなっていく」と力を込めます。
とはいえ、ビッグデータをはじめとしたさまざまなデータ分析をするには、デジタル人材が必要不可欠ですが、「IT業界もマーケティングも、規模が大きい会社がどんどん(優秀な)人を抱えて内製化でやっていこうとする。その一方で、(社内で)できない仕事は、きちんと専門の業者に任せるということが、よりハッキリ区分けされていく。今はそういった時代になってきている」と声を大にします。
そのうえで、「データサイエンティスト(データを収集・分析し、企業の課題解決や戦略・意思決定などにつなげる人)を社内で抱えられる会社はそれほど多くはないと思いますので、そういったところをどういうふうに取り組んでいくのかは、日本全体の非常に大きな課題だと思います」と話していました。
次回8月19日(土)の放送も、引き続き柴﨑さんをゲストに迎えてお届けします。柴﨑さんのこれまでの経歴や“リーダー論”についてなど貴重な話が聴けるかも!?
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8月12日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2023年8月20日(日) AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。
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<番組概要>
番組名:DIGITAL VORN Future Pix
放送日時:毎週土曜 20:00~20:30
パーソナリティ:笹川友里