モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。8月8日(火)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「ビッグモーター問題、なぜ不正を止められなかったのか?」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。
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損害保険料率算出団体に関する法律に基づいて設立された団体であり、損害保険会社を会員とする組織「損害保険料率算出機構」は8月5日(土)までに、中古車販売・買取会社「ビッグモーター」による保険金不正請求が、自動車保険全体に与えた影響を精査する方針を明らかにしました。
◆大きな広がりを見せる「ビッグモーター問題」
吉田:ビッグモーター問題は大きな広がりを見せています。ここまでの流れをまとめていただけますか?
塚越:まず7月25日(火)、兼重宏行社長と息子である副社長が辞任を発表しました。会見は現場への責任を問うものが多く、元社長の対応のまずさが指摘されています。
また、10年以上前から「(店舗が道路から見えやすくなるように、店舗付近の)街路樹に除草剤を撒いたのではないか」という疑惑もありました。会見では「現在はしてない」と話していましたが、後に複数の店舗でここ数年も除草剤を使った可能性が高いと認めることになりました。
特に、石川県かほく市にある商業施設「イオン」の敷地内にテナントとして出店しているビッグモーターでは、店舗前にあった植え込みがコンクリートで舗装されていたことが分かりました。舗装されたところは共有部分で、ビッグモーターに貸している土地ではありません。イオンはビッグモーターに事実確認を求め、場合によっては法的処置も含めて対応するとしています。他にも行政からもさまざまに調査されており、ビッグモーターには国交省の事情聴取や、抜き打ちの立ち入り検査などもおこなわれています。
◆なぜここまで不正が立て続けに起きた?
ユージ:なぜここまで不正と思われることが続いてしまったのでしょうか?
塚越:やはり企業の体質の問題が大きいと思います。例えば、消費者庁は8月3日(木)に、ビッグモーターが内部通報体制を整えていなかったとして、「公益通報者保護法」に基づく報告を求めています。
2022年に改正された、「公益通報者保護法」では、従業員が301人以上の企業に対して、内部通報ができる体制整備を義務付けているのですが、こうした体制ができていなかったため、消費者庁が報告を求めたということです。
要するに、ガバナンス(企業統治)が機能せず、コンプライアンス意識が欠如していることが分かるものとなっています。会見でもあったような、社員からの通報を「上司との個人的な確執」として取り合わなかったり、もみ消していたりした可能性も考えられます。こうしたことから企業の体質が見えてきます。
ユージ:この問題で指摘されているのが、悪しきトップダウンの影響ではないか、ということです。いかがでしょうか?
塚越:いろいろと報道されているように、ビッグモーターの経営はトップダウン型、つまり「上司の言うことは何でも聞く」という体制です。利益追求型のため、上司が檄を飛ばし圧力をかけるのは当たり前で、上司からの査定やパワハラが横行していたことが分かります。そうしたなかで、部下が不正に手を染めることになりました。短期的な売上を求めるのも問題です。
吉田:この問題(保険金不正請求)では、損害保険大手の「損保ジャパン」側にも問題があったのでは、と指摘する報道が出ています。
塚越:金融庁は、損保ジャパンをはじめとした損保会社7社に対して、保険業法に基づく報告徴求命令を出しています。要するに「この件に関して細かく報告せよ」というものです。金融庁は、なかでも損保ジャパンに関しては、特に細かく調査する方針を出しています。
というのも、損保ジャパンはビッグモーターへの出向者が37人おり、他の大手損保企業への出向者が各3人だったのと比べても多すぎる点や、2019年には簡易査定を簡略化したことなどが問題視され、金融庁はこうした対応がビッグモーターの不正請求につながったのではないかを確認する方針です。
さらに報道されているように、ビッグモーターに事故車を紹介する代わりに、ビッグモーターから自賠責保険を損保側に割り当てる“持ちつ持たれつ”の関係も指摘されており、こうした点からもコンプライアンスが働かなかったと考えられます。
◆企業のトップダウン体制に起因する問題…私たちも“他人事”ではない?
ユージ:塚越さんは、一連のこの問題を見ていて、どう感じましたか?
塚越:多くの方が気になっている話題ですが、これはトップダウン体制の問題だと思います。パワハラ体質が常態化してしまったこと、そして内部告発が機能しない、風通しの悪い企業体質が問題だと思います。
一方で、多くの社員は普通の人で、除草剤を撒くような行為は普通できません。パワハラを前提として、「空気を読む」ことや「忖度」が働くと、普通の社員に道徳的一線を超えさせてしまうという状況は、決してビッグモーター問題だけではないと思います。
忖度が蔓延すると人間の思考は制限され、道徳を踏み越えたり、「善悪」が分からなくなったりしてしまいます。狭く息苦しい空気が蔓延すると、「外」が見えなくなります。「空気には水を差すことが大事」と言われたりすることがあるのですが、“水を差す”のはある種の内部通報だとすると、それができない体制になってしまったということです。
吉田明世、塚越健司さん、ユージ
<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世