「国内総生産」3期連続プラスも懸念点は「外需強く・内需弱い」物価高&実質賃金減少…“手放しで喜べない理由”を専門家が解説

モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。8月16日(水)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「2023年4月~6月のGDP(国内総生産)3期連続プラス」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。


※写真はイメージです



◆GDP3期連続のプラス

内閣府が8月15日(火)に発表した、今年4月~6月までのGDP(国内総生産)の速報値は、物価変動を除いた実質の伸び率が、前期と比べてプラス1.5%となりました。これが1年間続いた場合の年率に換算すると、プラス6.0%で3期連続のプラスとなります。

吉田:塚越さん、今年4月~6月のGDPについて改めて教えてください。

塚越:GDPの速報値は、物価の変動を除いた実質伸び率が前の3ヵ月と比べてプラス1.5%でした。これが1年間続いた場合の年率換算はプラス6.0%で、3期連続のプラスになります。民間の予測は、年率換算3.1%程度でしたので予想以上の数字になります。

これにはさまざまな要因がありますが、まず輸出です。半導体の不足が緩和したこともあり、自動車輸出の伸びをけん引しました。また、外国人観光客のインバウンド消費が注目されましたが、統計上では外国人観光客も「輸出」にカウントされます。こうしたこともあり、輸出は前の3ヵ月と比べて3.2%増加しています。

ユージ:観光客の消費も輸出なんですね。

塚越:そうです。逆に「輸入」は原油や携帯電話の輸入が減って、マイナス4.3%です。すると、輸入は減るのですが輸出量は多く、外国からの需要が多い「外需」がGDPを引き上げたことになります。

一方、GDPの半分以上を占める「個人消費」はマイナス0.5%と、3四半期ぶりのマイナスになります。こちらは国内需要、つまり「内需」にあたります。5月の新型コロナウイルスの5類移行に伴い、旅行や外食といったサービス消費は伸びるのですが、昨今の物価高で食料品などの日々の生活に関する消費が減り、冷蔵庫などの白物家電の販売も低下しました。

企業の「設備投資」はソフトウェアなどへの投資は伸びたものの、研究開発費は減ったので、プラス0.03%と、ほぼ横ばいになっています。いろいろな動きがあるのですが、GDPは実額ベースだと年換算で560.7兆円と、データが比較できる1994年以降で最も大きくなっています。

◆他国と比較しても日本が一番伸びた

吉田:4月~6月のGDPは、海外も伸びているのですか?

塚越:海外との比較も重要です。結論から話すと、アメリカもEUも中国も伸びているのですが、数字だけでみれば一番伸びたのは日本です。アメリカは前の3ヵ月と比べた実質伸び率が、年率換算でプラス2.4%です。アメリカは、企業の設備投資や個人消費は伸びているのですが、利上げの影響などもあり今後はまだ分かりません。

ユーロ圏は年率換算でプラス1.1%。インフレとヨーロッパ中央銀行の利上げが1年にわたって続いている影響で、企業の景気見通しも悪化しています。プラスですが、先行きは不透明な状況です。

中国は、内閣府の試算では年率換算でプラス3.2%です。ゼロコロナ政策が終わって、飲食などは回復しつつも人々は節約志向で、不動産産業が長期低迷化、企業の輸出も減少傾向にあり、こちらも先行きは不透明です。というよりも、実体はかなり厳しいという予測もあります。

こうした問題もあり、日本の7月〜9月のGDPについても、どこまで輸出が伸びるかがポイントかなと思います。4月〜6月期は円安もあって輸出が伸びているのですが、最大の貿易相手国である中国が減速していることで、長期的に日本経済にも影響します。中国の貿易比率が大きい日本企業のなかには、中国向けの売上が減るなかで、最終的にインドへの販路拡大を目指す企業も出ています。

◆「外需」頼りなのは問題

ユージ:今年4月~6月までのGDPについて、塚越さんはどのようにご覧になりましたか?

塚越:GDPが伸びたことは良いのですが、外需(輸出)が大きく、内需(個人消費)が減っているのがポイントです。他国の要因や円安が収まれば、今後の輸出が減るという外需の懸念点があります。

大きな問題は、国内需要である「内需」の問題です。給料の伸びより物価の伸びのほうが高く、実質賃金が下がりっぱなしの状況があるので、内需が弱くなっています。GDPが伸びても、私たちの日々の暮らしがキツイ感覚は、ここから来ています。

日本経済の根本的な問題は大きく変わっていないので、GDPが伸びることは手放しでは喜べない状況かなと思います。そして日銀総裁が植田和男さんに変わって、10年続く異次元の金融緩和からの脱却、つまり事実上の利上げの道を探り始めている見方もあります。これにはさまざまな議論がありますが、10年続いた金融緩和をやめたときに、日本経済にどのくらいの影響があるのか。これもさまざまな角度から考えつつ、我々も注目する必要があります。


吉田明世、塚越健司さん、ユージ



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8月16日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2023年8月24日(木) AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。

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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/one/

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