モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。8月17日(木)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「ガソリン価格1リットル200円時代に向けた国の対策」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。
※写真はイメージです
経済産業省は8月9日(水)、レギュラーガソリンの店頭価格に関する調査結果を公表。前の週より3.6円値上がりして、1リットル180.3円でした。180円を超えるのは2008年8月以来15年ぶり。すでに高速道路のサービスエリアでは1リットル200円を超えるところも出てきています。
◆高騰が続くガソリン価格…10月には補助金打ち切り
吉田:ガソリン価格の問題は毎年のように取り上げていますが、リッター200円時代を前に政府はこの事態にどのような対策を準備しているのでしょうか?
ユージ:塚越さん、ガソリン価格の高騰の背景について改めて教えていただけますか?
塚越:一言で言えば、円安と原油価格の上昇に加えて、政府が支援しているガソリンの補助金を減らしていることが大きな要因です。政府は昨年1月から、ガソリンの全国平均価格が170円を超えないように補助してきました。1リットルあたり170円を超えた場合、政府は石油元売り会社に補助金を(1リットルあたり)上限5円を出して、卸売価格から差し引く仕組みでした。
その後すぐにウクライナ侵攻によって原油価格が跳ね上がったため、政府は上限額を25円、35円と段階的に引き上げ、補助期間も延長してきたこともあり、価格は170円以下になっていました。
補助金の総額は今年3月までの時点で総額3.1兆円と巨額になっています。お金もかかりますし、緊急手段としての補助がいつまでも続くのは問題だということで、政府は今年の1月から上限額や補助額を徐々に下げ、10月にはゼロにする方針です。
しかし最近、一旦は下がった原油価格が再び上昇傾向にあり、円安なので輸入にもお金がかかっている状況です。
◆与党内でも補助延長を検討 野党からは「トリガー条項を発動せよ」の声も
吉田:ガソリン価格の高騰によって、どんな影響が考えられますか?
塚越:打撃が大きいのは、やはり物流業界です。全日本トラック協会によると、燃料が1円上がると業界全体で150億円程度負担が増えるということです。物流業界は、ドライバーの時間外労働の制限や人材不足が問題となる「2024年問題」がすでに課題となっているのに、ここにきて燃料価格の高騰はさらに大打撃です。
もう1つは、やはり私たちの生活への影響です。特に地方では車での移動が当たり前で、車がないと生活できないという人も多く、ただでさえ物価高のなかで、燃料の高騰はダメージが大きいです。
ユージ:国は、この事態にどんな対策を準備しているのでしょう?
塚越:現状のままだと9月で補助は打ち切りになり、さらに(ガソリン)価格が上がる可能性があるので、政府・与党内でも補助の延長論が出ています。
また、野党からはガソリン税についての指摘もあります。ガソリンは、ガソリン自体の価格に加えて、ガソリン税や石油税が課税されており、そこに消費税も乗っかって「二重課税」とも言われ、これまでも批判が多いです。
そこで野党の一部は、ガソリン平均価格が1リットルあたり160円を3ヵ月連続で超えた場合に、ガソリン税の一部を軽減する「トリガー条項」を発動せよ、と指摘をする人もいます。
現在のところ、東日本大震災の復興財源を確保するためにトリガー条項は凍結されているのですが、発動すればこれだけで25円程度ガソリンが安くなります。国と地方合わせて1年で1兆5700億円分くらいの税金が減ることになりますが、現在も補助金でお金がかかっているわけで、これをどう捉えるかという議論はあります。
吉田:与野党から上がっている声に岸田文雄政権はどう応えそうですか?
塚越:与党でも物価高対策の延長論が出ています。ガソリンだけでなく、1月使用分から電気・ガス料金についても補助されていましたが、こちらも9月で打ち切り予定なので、これについても延長が想定されています。予算としては、トリガー条項でも補正予算の編成ではなく、予備費の活用とみられていて、今月内に延長の是非を判断するとみられています。
◆「予備費」を使う利点・問題点は?
ユージ:補正予算の編成ではなく「予備費」を活用するのはなぜですか?
塚越:補正予算の編成には時間がかかるというのが理由として挙げられます。コロナ以前の予備費の計上上限は3,500億~5,000億円でしたが、2020年度は10兆円に膨らみ、その後も予備費は巨額が計上されています。23年度予算では、一般予備費に5,000億円のほか、コロナ対策などに計5兆円が計上されています。
予備費は予算編成時には想定できなかった事柄に使うものですが、国会審査を経ることなく政府が使い道を決定できるので、国会の監視がおよびにくく、歳出拡大の問題もあります。緊急手段としては良いのですが、お金の使い道をきちんと考えないでバラマキのようになると問題です。補助金にしても大切だとは思いますが、全部ばらまくとなると、どんどん予備費が増えてしまうので、使うにしても「どこに」使うかという議論をもっとする必要があると思います。
吉田明世、塚越健司さん、ユージ
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8月17日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2023年8月25日(金) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世