愛と経済の伝道師“宗さま”こと宗正彰「酷暑の“夏の経済活動”と3年連続過去最高の“ふるさと納税”」を解説

本部長・マンボウやしろと秘書・浜崎美保がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「Skyrocket Company」。毎月第2水曜日に、我々が知っているようでよく知らない「お金」や「経済」の仕組みなどを、専門家の方に詳しく解説してもらうコーナー「スカロケ資産運用部」をお届けしています。

8月9日(水)の放送では、愛と経済の伝道師“宗さま”こと三井住友DSアセットマネジメント株式会社フェローの宗正彰(むねまさ・あきら)さんに、「酷暑の“夏の経済活動”と3年連続過去最高の“ふるさと納税”」というテーマでお話を伺いました。

(左から)宗正彰さん、マンボウやしろ、浜崎美保



◆百貨店では高額品が売れ筋?

浜崎:宗さま、今回は「酷暑の“夏の経済活動”と3年連続過去最高の“ふるさと納税”」についてお話しいただけるということですが。

やしろ:今年は酷暑ですが、経済活動への影響はあるのでしょうか? ここまで暑いと、どんなものが売れ筋になるのでしょうか?

宗正:夏には夏らしい天候が、経済活動にとってはプラスです。最近は最高気温35℃以上の酷暑、正式な気象用語で「猛暑日」が続いていますが、最高気温30℃以上の「真夏日」くらいまでが理想的ですね。

やしろ:そうですよね。夏物を準備して商売されている方もたくさんいますしね。35℃以上になると、昼間外に出る方も一気に減りますよね。

宗正:人の行動を抑えてしまうので、暑すぎる夏は景気を冷やします。この暑さの中の売れ筋商品として、例えば大手百貨店の7月は、帽子やサングラスなどの夏物雑貨・夏物衣料の売れ行きがいいですね。特に今年は浴衣が人気です。

やしろ:久し振りに、いろいろなお祭りや花火大会なんかも開催されますもんね。

宗正:浴衣は一年前と比べて、1.5倍の売れ行きです。特に目を引くのが、高級ブランド品や宝飾品といった高額品。この夏、かなり売り上げを伸ばしています。

やしろ:百貨店で高額品を買う方は日本の方ですか? それとも海外の方ですか?

宗正:鋭いですね、本部長! 高額品が売れているのは円安効果と、日本を訪れる外国人の増加によるものです。免税品の売上高は昨年の同時期の3倍にも達しています。

やしろ:外国人観光客のお買い物パワー、かなり戻ってきているという感じがします。フジロックに行っても、本当にいろいろな国の方が来ていました。僕は新宿が好きでよく行きますが、インバウンドの戻りがよく分かります。しかもコロナ禍前よりも、いろいろな国の方が観光に来ていると感じますね。

◆インバウンドが戻りつつあるも、人手不足がネック

やしろ:インバウンドが戻ってきて、お金を使ってくれるのは良いことだと思いますが、懸念材料はないのでしょうか?

宗正:国内の人気スポットは、今どこも混んでいますよね。今年の6月に日本を訪れた外国人の数は、2020年の2月以降で初めて200万人を突破しました。コロナ禍前の2019年の同じ月と比べて、7割程度の水準まで回復しています。

やしろ:かなり戻ってきましたね。

宗正:6月の国別では1位が韓国で、2位が台湾、3位がアメリカ、4位が中国、5位が香港です。最近までストップしていた中国からの訪日が4位まで回復しているのが分かります。

やしろ:少しずつ戻ってきたっていうことですか?

宗正:そういうことです。新型コロナの5類移行で一気に人が動き始めたのと同時に、恒常的な人手不足で人気スポットが混むという構図です。

やしろ:懸念材料の人手不足は、今後も続くのでしょうか。解消できなければ、経済活動にとってはマイナスですよね?

宗正:人手不足は今後も続きますし、経済活動的にはマイナスです。しかも、国内ではかなり前からジワジワと人手不足が続いているんです。人手不足の要因は大きく2つ。先ず1つが「労働力人口の減少」、働く人が減っているということです。そしてもう1つは、「人材のミスマッチ」です。希望する職種に偏りが生じた結果、特定の職種で人手不足が生じるということです。実はこの国の生産年齢人口のピークは、1995年です。

やしろ:えっ!30年近くも前ですか?

宗正:はい。そして総人口のピークは2008年ですから、実はかなり前から人手不足が続いていました。人材のミスマッチという点で人手不足が続いている業種は、医療福祉や建設。そして今、混雑の原因になっている物流運輸やサービスですね。

やしろ:どれも我々の生活には欠かせない職種ですね。

宗正:最近、都内で空車のタクシーってなかなかつかまらないと思いませんか?

浜崎:ありますね、そういう現象。

宗正:近年、都内のタクシードライバーの数は1年間で平均マイナス1,000人くらいだったんです。これが2020年にはマイナス4,000人になりました。2022年になると9,000人のマイナス。そして今は、登録車の数が過去最低なんですよ。

やしろ:アプリでタクシーを呼ぶ方も多いから、「空車が通ったら乗ろうかな」なんて思っていると、「予約車」とか「送迎」っていう文字が出ていて、なかなかつかまらないですよね。

宗正:本部長が言われたアプリで空車のタクシーを呼ぶ行為は、つまりセルフサービスですよね。人手不足が続けば、自分でできることは自分でやる、ある程度の商品やサービスのクオリティ低下も我慢する必要がある。人出不足を補うための人件費アップは、企業にとってコストアップですからね。ここから先の時代、お客さまは神様じゃないということです。

やしろ:荷物の配達にも言えますよね。配達の時間指定も、日本は海外に比べれば本当に細かく、正確に届けてくれますし。便利すぎたサービスを、利用者も少し見直さなきゃいけないですよね。

宗正:そういうことです。これからは我慢することも必要になります。

◆寄付金額が増加し続けるふるさと納税、一方で問題点も

やしろ:毎年恒例のふるさと納税ですが、2022年度の概要が発表されたようですね。

宗正:ふるさと納税は実際には納税ではなく、任意の自治体に寄付をする仕組みです。自己負担額の2,000円を超える寄付金額が、翌年の所得税や住民税から差し引かれます。

2022年度の寄付総額は、約9,654億円でした。前年度比で約1.2倍、3年連続過去最高を更新しました。今のペースで行けば、今年度の1兆円超えは、ほぼ確実と見ています。

寄付の件数自体も過去最多を14年連続で更新中です。毎年かつ継続的に件数が増え続けることは、この制度が確実に世の中に広がっているということを意味しています。

やしろ:気になるのが、ふるさと納税受入額上位の自治体です。昨年度の上位の顔ぶれは、どんな感じだったのでしょうか。

宗正:第3位が北海道の根室市。前年度も第3位でした。受入額は176億1,300万円ということで、これはけっこうな金額ですよ。ふるさと納税と言えば返礼品ですが、根室市の返礼品はウニ・イクラ・タラバガニ・ズワイガニ・サーモンなど、色鮮やかな海産物が並びます。

やしろ:トップ10に北海道の自治体が、けっこう入っていますよね。

宗正:トップ5に3つの自治体が入っています。ということで第2位も北海道で紋別市です。受入額は194億3,300万円。前年度は第1位でしたが、1つだけ順位が下がりました。返礼品は根室と同じく豊富な海産物に、ブレンド米・バターなどがあります。そして気になる第1位は宮崎県の都城市。受入額は195億9,300万円。ここは知る人ぞ知る食の宝庫ですよね。浜崎さんの出身は鹿児島県に近いですよね?

浜崎:とても近いです。

宗正:宮崎牛・宮崎の若鶏・豚。なんと言っても肉料理に欠かせない焼酎。挙げればキリがない。

やしろ:そして激しさを増すのが、返礼品競争。制度自体の人気とは裏腹に、さまざまな問題が取り沙汰されていますね。

宗正:これまでも返礼品競争が激しさを増すなかで、「寄付額の3割以下の地場産品に限る」といったルールを設けるなど、さまざまな対策がおこなわれてきました。その後も豪華な返礼品を送り続けた自治体は、制度から外されたりもしました。

今年の10月からは、さらに返礼品の規制が厳格化されます。寄付金受領証の発行や仲介サイトの手数料・送料を含めて、返礼品は寄付額の5割以下にするなどの対策が求められる予定です。

最近、特に問題視されているのは、ふるさと納税を多く利用する都市部の自治体から多額の住民税が流出することです。ふるさと納税で流出した全国税額ランキングの第1位は神奈川県の横浜市、第2位が愛知県の名古屋市、第3位が大阪府の大阪市です。

東京都は、第5位に世田谷区、第11位に港区がランクインしています。ふるさと納税ができた本来の理由は、この国は地方で生まれて、進学や就職のタイミングで都会に移り住む人が多いということ。

小さい頃から地元の医療や教育サービスを受けてきたのに、大人になって税金が払える年齢になると、地元に税金が入らない。移住した都市部で納税するようになるので、都市部の自治体ばかりが潤うのは良くないだろうということで始まりました。

だから、もともとの制度設計に返礼品は存在していません。一部の自治体が返礼品を送ることを始めたのが、いつしか義務みたいに拡がってしまいました。

ふるさと納税は税収の多様化にもつながりますし、この国でなかなか根付かなかった寄付をする文化を拡げた功績もあります。被災地支援にも活用できます。ただ、住民税の減少が続く都市部の行政サービスの低下は、やはり問題ですよね。

やしろ:本来は被災した地域を支援したいとか、親戚が住んでいる地域や、自分の出身の地域にお金を使いたい、という制度ですもんね。

宗正:そうなんです。

やしろ:でも制度的には盛り上がりも見せていますし、勢いはこのままに、今後はもうちょっといろいろ是正されていくと良いかもしれないですね。

宗正:新たに生まれた制度が一気に盛り上がると、一方で問題が生じやすいのはふるさと納税に限ったことではありませんが、世の中の変化に合わせて臨機応変に修正・対応して行く姿勢が必要だと思いますね。

*   *   *

もっといろいろな経済のお話が聞きたいという方は、宗さまのAuDee(オーディー)「宗正彰の愛と経済と宗さまと」でも聴けます。毎月10日、20日、30日に配信していますので、そちらもぜひチェックしてください。


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<番組概要>
番組名:Skyrocket Company
放送日時:毎週月~木曜17:00~19:52(※コーナーは毎月第2水曜18:15ごろ~)
パーソナリティ:本部長・マンボウやしろ、秘書・浜崎美保
番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/sky/

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