女優、ビッグバンド「渋さ知らズ」のメンバーとして活動する玉井夕海がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「サステナ*デイズ」(毎週木曜11:30~13:00)。“子どものあした大人のきょう”をテーマに、子どもたちが安心して暮らせる未来のために、「SDGs(エスディージーズ:持続可能な開発目標)」の考えを軸にした“新しい毎日”を提案します。
今回の放送テーマは「“キッチン”の中に探すSDGs」。この日、注目したのは牛乳パック。
スタジオゲストに、“紙パックのプロ”として日本製紙株式会社・紙パック営業本部の金﨑さんと岡部さんをお迎えして、紙パック製品の品質、牛乳パックの回収・リサイクル活動などについて伺いました。
(左から)岡部さん、玉井夕海、金﨑さん
以前の放送では、「牛乳パック」が「高品質なパルプ」を使って作られていることを紹介しました。今回は、「製造過程」や「リサイクル」について探っていきました。
◆プラスチック製品の削減につながる学校給食の牛乳パック
日本製紙で作っている紙パックは、スーパーやコンビニなどで販売されている牛乳や、ジュースやコーヒーなどが詰められている紙で作られた容器です。いろいろな大きさのものがありますが、学校給食で提供されるような小さな紙パックもあるとのこと。パッケージの表示欄に「紙パックマーク」が付いているので、確認してみてください。
そんな紙パックに入った代表的な飲料といえば牛乳。牛乳パックは紙だけだと中身が染みて漏れてしまうので、厚い紙の両面にポリエチレンというプラスチック素材を薄くコーティングしているそうです。中身の“漏れ”を防ぐ材料として、このプラスチックが必要とのこと。
日本製紙では、環境配慮型の紙パックの開発も積極的に進めています。その代表が、「School POP」という容器です。その名前の通り、主に学校(School)給食用の牛乳パックに採用されているものです。
ちなみに、「School POP」の「POP」とは、「Push」「Open」「Pull」の頭文字をつなげた言葉。これまでは、牛乳パックにストローを刺して使って飲んでいたものを、ストローを使わず、牛乳パックの開け口に直接口を当てて飲めるようにしました。ストロー不要のため、プラスチックの削減にもつながっています。これまで学校給食では年間14億本ほどのストローが使われていましたが、もし全ての牛乳パックが「School POP」に代わると、年間で700トンのプラスチックの削減につながります。
◆牛乳パック…どのようにリサイクルされる?
牛乳パックのリサイクルについて質問すると、「細菌やカビが生えないよう、まずは飲み終わった牛乳パックは水ですすいでください」と金﨑さんと岡部さん。そのあとは手やハサミを使ってかさばらないように切り開き、表面を乾かせばリサイクルできる状態になると言います。
リサイクルのルートについては、各市町村のゴミ置き場に置かれた紙パックを回収する「行政回収」、地域や公民館などに置かれた回収ボックスを使用する「集団回収」、スーパーマーケットなどの店頭に置かれた回収ボックスから集める「店頭回収」などがあります。
そうして回収された牛乳パックは古紙回収業者によって収集され、リサイクル設備がある再生紙工場へ運ばれます。運ばれた紙パックは、「パルパー」と呼ばれる大きなミキサーによって、パルプの「紙繊維」とポリエチレンに分離されます。「紙繊維」については、その特性を生かしたトイレットペーパーやティッシュなど身近な商品に生まれ変わります。
一方、ポリエチレンはエネルギー源として利用されることが多くなっています。なお、アルミも使った紙パックからはポリエチレンとアルミの混合物(以下、ポリアル)が分離されますが、これまで再生利用における技術的な難しさがあり、アルミ付き紙パックの回収が進まない原因ともなっていました。これを何とか有効利用できないかとその可能性を探り、企業と連携して「ポリアル」を原料とした土木建築資材などを開発中です。
「ポリアル」が原料の境界杭(写真左下)。隣り合う土地や道路との境界を示すために用いられます
また、試験段階ではありますが、大学と連携して「ポリアル」をアート作品に応用するなど、飲料用アルミ付紙パックを再生利用した、さまざまな可能性を探っているそうです。
ちなみに、紙パックリサイクル推進団体「全国牛乳容器環境協議会」の調査によると、実は牛乳パックの回収率は4割程度。ペットボトルは8~9割回収されているので、それにくらべるととても低い状態です。「洗って、開いて、表面を乾かす」という手間や、紙パックを分別対象としていないため、雑がみに混ぜられてしまう市町村があることなどが理由に挙げられます。
◆紙パックのリサイクルは手近なSDGs
日本製紙をはじめ、多くの紙パックのメーカーは「森林認証」という持続可能な森林資源の利用と保全のために、計画的に伐採、管理された木材を原料とした紙を使っています。
「森林認証」を受けた木材で作られた紙については、紙パックにも「森林認証マーク」が書かれており、「FSC」や「PEFC」などと記載されているそうです。
日本製紙では、紙パックの回収率を上げるために昨年の10月、静岡県富士市に食品・飲料用紙容器専用のリサイクル設備を設立。「今後こちらを活用してどんどんリサイクルの輪を広げていきたいと考えております」と展望を語ります。
最後に、子どもたちに伝えていきたいことについて伺うと、「紙パックはもともと木材が原料です。木材の中心部分は建築用の材料になっていますが、紙パックにはその余った端材を使い、木材を余すところなく使って作られています。これを、飲んだあとに捨ててしまうと、単にゴミになってしまい、非常にもったいないです。ゴミにせずにリサイクルすれば新しい資源に生まれ変わりますし、ゴミの削減にもつながります。また、二酸化炭素を吸収してくれる森林の保護にもつながります。このラジオを聴いてくださった方は早速、お子様と一緒にリサイクルをはじめていただくと、身近にできるSDGsの取り組みの一つになると思います」とコメントしました。
▶▶この日の放送は音声アーカイブ「AuDee(オーディー)」でも配信中です。
<番組概要>
番組名:サステナ*デイズ
放送日時:毎週木曜 11:30~13:00
パーソナリティ:玉井夕海
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/sustaina/