モデル・タレントとして活躍するユージと、フリーアナウンサーの吉田明世がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「ONE MORNING」(毎週月曜~金曜6:00~9:00)。9月7日(木)放送のコーナー「リポビタンD TREND NET」のテーマは「旧統一教会への解散命令」。情報社会学が専門の城西大学 助教・塚越健司さんに解説していただきました。
※写真はイメージです
政府は「宗教法人 世界平和統一家庭連合(旧統一教会)」に対して、来月10月をめどに、裁判所に対して「解散命令」を請求する方向で調整に入るという報道がなされています。昨年7月、安倍晋三元首相が殺害された銃撃事件をきっかけに、長年に渡る政界と旧統一教会の深い関係が取り沙汰され、法人による高額な寄付の勧誘を禁止する法律が作られるなど、大きな社会問題となりました。
(※本番組放送後、文部科学省は旧統一教会に行政罰の「過料」を科すよう求める通知を東京地裁に郵送。これに対して旧統一教会は8日(金)、対抗措置を表明)
◆旧統一教会問題とは?
吉田:「解散命令」は、実際にどのような段取りで出されるのでしょうか? また、命令を受けた宗教法人はどうなるのでしょうか?
ユージ:塚越さん、改めて昨年の銃撃事件をきっかけに取り沙汰された「旧統一教会」をめぐる社会問題を整理していただけますか?
塚越:統一教会は高額な寄付金等が問題となっており、信者が億単位の借金を負わされたり、それによって家庭崩壊したりするケースもありました。安倍元首相を殺害した山上徹也被告の家庭もそうしたケースに該当しているのは、報道などでご存じの方も多いでしょう。
他にも旧統一教会は、自由民主党議員を中心に地方議員から国会議員など、政界にも影響力を行使してきました。(旧統一教会と関わりの深い人物として挙げられるのは)元経済再生担当大臣の山際大志郎議員(自民党)や、井上義行議員(自民党)などがいます。
(旧統一教会による)選挙応援や議員秘書の派遣などもあり、特にジェンダー政策の推進に反対するように影響力を行使するようなことも見受けられました。
◆「解散命令」請求…その背景は?
ユージ:今回、宗教法人法に基づく「解散命令」を請求するそうですが、これはどういうことですか?
塚越:宗教法人法81条には「解散命令」が定められており、さまざまな規定があります。大きなところでは、「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為をしたこと」です。日本には信教の自由があるのですが、他人の権利や自由を奪うこと(や公共の福祉を害する行為)はできないことになっています。
(旧統一教会では)高額献金で苦しむ元信者の存在や、過去の教団に関する民事訴訟の判決もあります。また、宗教法人法に基づいた、教団への質問(質問権行使)に対して、教団が適切に回答していないとして、「行政罰」として10万円以下の過料を科す方向で調整が進んでいるとニュースになりました。
吉田:過去に「解散命令」を受けた教団はあるのでしょうか?
塚越:これまで解散命令を受けたのは、2団体あります。地下鉄サリン事件などを起こした宗教団体「オウム真理教」(1996年)と、霊視商法詐欺事件で幹部らが有罪判決を受けた和歌山県の宗教法人「明覚寺(みょうかくじ)」(2002年)です。どちらも最高裁まで争われ、解散命令確定までにかかった時間はオウム真理教が7ヵ月、明覚寺は約3年です。
◆「一区切り」がついて報道が減ってしまう懸念も
ユージ:「解散命令」の請求を裁判所は認めるでしょうか?
塚越:解散命令が請求されると、所轄の文科省と教団の間で裁判が開かれ、一般的な裁判と同じく地裁、高裁、最高裁まで争います。教団の姿勢から考えて、おそらく最高裁まで争うと思われます。したがって、解散命令が出るとしても(確定するまでは)しばらく時間はかかるのではないかなと考えられます。
憲法学者のなかには、「解散命令は可能」と言う人もいる一方で、「政府が特定の宗教団体を狙い撃ちにするのは憲法違反だ」という意見もあります。解散すれば宗教団体としての法人格を失い税制優遇などがなくなるのですが、活動自体はおこなうことはできます。
故に、信仰自体は規制されているわけではありませんが、優遇措置がなくなってしまうので、現役信者に対して教団側がより苛烈に「寄付してください」と迫るのではないかと懸念されているところです。
ユージ:解散命令を請求して、岸田政権は統一教会問題と区切りをつけられるのでしょうか?
塚越:「岸田政権の対応は不十分だ」という指摘もあります。例えば、いわゆる被害者救済新法(不当寄附勧誘防止法)は、保護の対象が主に寄付者本人に限定されています。家族親族の生活を困難にするような寄付は禁止ではなく、あくまで配慮義務とされているので、信者の家族がどこまで救済されるかという課題があることも指摘されています。
また、解散命令が出されたことで区切りが出て、統一教会関連の報道が減ってしまうことも問題です。元信者の方や家族の方など、苦しんでいる方にとっては、まだまだこの問題は終わっていません。
政治家と教団の関係についても、「まだ問題はあったのではないか?」と(旧統一教会問題を追っているジャーナリストの)鈴木エイトさんが話していますが、この問題に関する報道が減ってしまうことも問題ですので、引き続き注目していかないといけません。
吉田明世、塚越健司さん、ユージ
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9月7日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2023年9月15日(金) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:ONE MORNING
放送日時:毎週月曜~金曜6:00~9:00
パーソナリティ:ユージ、吉田明世