柄本明「くだらない芝居をやりたかったんですよね」“劇団東京乾電池”を立ち上げた経緯を語る

俳優・石丸幹二がパーソナリティを務めるTOKYO FMのラジオ番組「Grand Seiko THE NATURE OF TIME」(毎週土曜12:00~12:25)。各界で活躍するゲストを迎え、毎週1つのキーワードから“自分を支えている本質”を掘り下げて伺っていきます。2023年9月のマンスリーゲストは、俳優の柄本明さん。この記事では、“芝居”について伺った9月9日(土)放送の模様を紹介します。


(左から)石丸幹二、柄本明さん



柄本明さんは、28歳で劇団東京乾電池を結成。座長として多くの舞台に立ちながらも、話題の映画やドラマにも出演。唯一無二の存在感で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞、紫綬褒章など数々の賞を受賞されています。

◆アングラ劇団”の芝居に魅せられ…

石丸:このサロンでは、人生で大切にしている“もの”や“こと”についてお伺いしております。今回はどんなお話をお聞かせいただけますでしょうか。

柄本:「芝居」についてです。

石丸:お芝居を始めたきっかけは?

柄本:やっぱり“そういう場所”に憧れたんじゃないですか。僕なんかの時代は、いわゆる“アングラ”みたいなものが出始めたときですかね。

石丸:ということは、1965~6年くらいですかね?

柄本:そうそう。それで僕は、都立の工業高校を卒業して会社に勤めたんですけども、会社の先輩とアングラ劇団みたいなところへ観に行きまして。早稲田小劇場というところでしたけど、それを観て“かっこ良い”というか……やっていることはよく分からないんだけど、エネルギーを感じたんでしょうね。まぁ、あれですよ。“青春の誤解”ですよ(笑)。

石丸:そうですか(笑)。

柄本:でも、(若い頃は)そういう場所がかっこ良く見えたりするじゃないですか。それと、その頃は学生運動ですね。

石丸:そういう頃ですよね。みんなのエネルギーが“ウワーッ”と高まって。

柄本:そうそう! だから“若い人は何かやらなくちゃいけない”みたいな思いもあったんじゃないですかね。

◆「劇団東京乾電池」立ち上げの経緯

石丸:柄本さんが触発された頃って、アングラが一番盛り上がっている時期になるんですかね?

柄本:そうですね。唐(十郎)さんの「状況劇場」とか、寺山(修司)さんのところ(「天井桟敷」)とか、「自由劇場」とか。

石丸:串田和美(くしだ・かずよし)さんですね。

柄本:私の師匠です。

石丸:そういうことになりますか!

柄本:師匠ということになります(笑)。

石丸:地下の劇場・アンダーグラウンドに集まって。

柄本:僕も、そこ(「自由劇場」)に4年くらいいたんですけどね、当時の地下の劇場は、小さいところで50人も入れば一杯になってしまう。

石丸:そういうところからスタートされて、その後、柄本さんは「劇団東京乾電池」をご自分で結成されます。なぜ、この劇団を立ち上げられたのですか?

柄本:自分の歴史を少し話すと、最初は「マールイ」という劇団に入ったんですよ、新劇というか。ただ、そこはそんなにお芝居をやっていなかったから、NHKの大道具のアルバイトで生計を立てていました(笑)。

石丸:そうなんですか!

柄本:給料が結構良かったんですよ。それで“このまま大道具とか舞台の裏方をやっていくのかな”なんて思っていて。それで、あるお芝居のお手伝いに行ったのですが、そこは串田さんとか、吉田日出子(よしだ・ひでこ)さん、佐藤B作(さとう・びーさく)さん、笹野高史(ささの・たかし)さんとかが出ている芝居だったんですよ。

しばらくして、串田さんに声をかけてもらったんですよ。「稽古をするんだけど、君もうちの稽古場に来ない?」って。

石丸:「(大道具担当として)何か作りに来てよ」じゃなくて「出てみない?」と。

柄本:そうです。それで、なんとなく流れでその劇団に入っちゃったんです。そのときにいたのが、高田純次、ベンガル、イッセー尾形、萩原流行とか。

石丸:そうそうたるメンバーですね!

柄本:そこには4年いましたかね。だけど、串田さんの作る芝居って、とっても高尚な世界でね。僕らは「もうちょっと、そこにある題材で良いんじゃないか」「そんな素晴らしい料理なんて作れないし、ここにある普通のご飯を食べちゃおうよ」みたいな。

要するに、串田さんの才能はものすごいんですけど、こちらからすると眩しすぎるというか“もっと下世話なものをやりたい”と。

石丸:なるほど。

柄本:それで、僕らの劇団の前に佐藤B作が「東京ヴォードヴィルショー」という劇団を作っていて、くだらない芝居だけど、すごいエネルギーがあって。それに影響を受けたこともあって……自由劇場を逃げましたね(笑)。

石丸:“逃げました”って(笑)。

柄本:だけど、その頃は全学連とかの時代だったから、逃げたら追ってきましたね(笑)。

柄本・石丸:ハハハ(笑)。

石丸:逃げ切れましたか?

柄本:逃げ切った。まぁ、どっちにしたって辞めるわけですけど。

石丸:そうですよね。じゃあ、(自由劇場の)なかにいる何人かで一緒に抜けたと。

柄本:そうですね。

石丸:そこで立ち上げたのが劇団東京乾電池。いわゆる「そこで飯を食っている」ようなお芝居からスタートされたんですね。

柄本:要するに、くだらない芝居をやりたかったんですよね(笑)。

----------------------------------------------------
9月9日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2023年9月17日(日) AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。

----------------------------------------------------

<番組概要>
番組名:Grand Seiko THE NATURE OF TIME
放送日時:毎週土曜 12:00~12:25
パーソナリティ:石丸幹二
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/nature/

コンテンツ一覧

「THE NATURE OF TIME」9月のゲスト 柄本明さん#5 音声

「THE NATURE OF TIME」9月のゲスト 柄本明さん#5

「THE NATURE OF TIME」9月のゲスト 柄本明さん#4 音声

「THE NATURE OF TIME」9月のゲスト 柄本明さん#4

「THE NATURE OF TIME」9月のゲスト 柄本明さん#3 音声

「THE NATURE OF TIME」9月のゲスト 柄本明さん#3

「THE NATURE OF TIME」9月のゲスト 柄本明さん#2 音声

「THE NATURE OF TIME」9月のゲスト 柄本明さん#2

「THE NATURE OF TIME」9月のゲスト 柄本明さん#1 音声

「THE NATURE OF TIME」9月のゲスト 柄本明さん#1

「THE NATURE OF TIME」8月のゲスト 浅利陽介さん#4 音声

「THE NATURE OF TIME」8月のゲスト 浅利陽介さん#4

「THE NATURE OF TIME」8月のゲスト 浅利陽介さん#3 音声

「THE NATURE OF TIME」8月のゲスト 浅利陽介さん#3

「THE NATURE OF TIME」8月のゲスト 浅利陽介さん#2 音声

「THE NATURE OF TIME」8月のゲスト 浅利陽介さん#2

「THE NATURE OF TIME」8月のゲスト 浅利陽介さん#1 音声

「THE NATURE OF TIME」8月のゲスト 浅利陽介さん#1

柄本明 志村けんさんとの仕事は怖かった!?「“ピリピリした雰囲気”というわけじゃないけども、真剣勝負でしたね」 記事

柄本明 志村けんさんとの仕事は怖かった!?「“ピリピリした雰囲気”というわけじゃないけども、真剣勝負でしたね」

柄本明「くだらない芝居をやりたかったんですよね」“劇団東京乾電池”を立ち上げた経緯を語る 記事

柄本明「くだらない芝居をやりたかったんですよね」“劇団東京乾電池”を立ち上げた経緯を語る

浅利陽介“家族がいる幸せ”を語る「帰る場所があるのはうれしいですね」 記事

浅利陽介“家族がいる幸せ”を語る「帰る場所があるのはうれしいですね」

浅利陽介「山下智久しかり、同年代の人と一緒に作品を作る経験がなかった」俳優人生の転機となった“ドラマ”とは? 記事

浅利陽介「山下智久しかり、同年代の人と一緒に作品を作る経験がなかった」俳優人生の転機となった“ドラマ”とは?

町田啓太“メモ”の大切さを語る「思い出せなくてすごく苦しんだこともあったので…」 記事

町田啓太“メモ”の大切さを語る「思い出せなくてすごく苦しんだこともあったので…」

骨粗しょう症予防、老化防止にも! 黒木瞳が今でも続ける“タップダンス”の魅力 記事

骨粗しょう症予防、老化防止にも! 黒木瞳が今でも続ける“タップダンス”の魅力

黒木瞳「夫にまんまと“はめられた”んですね」結婚する際に伝えた“条件”とは? 記事

黒木瞳「夫にまんまと“はめられた”んですね」結婚する際に伝えた“条件”とは?

黒木瞳「大地真央さんがお辞めになると伺ったときに…」宝塚歌劇団を4年半で退団した経緯を語る 記事

黒木瞳「大地真央さんがお辞めになると伺ったときに…」宝塚歌劇団を4年半で退団した経緯を語る

黒木瞳 たった2年で“宝塚歌劇団トップ娘役”に! 相手役の大地真央に言われた言葉とは? 記事

黒木瞳 たった2年で“宝塚歌劇団トップ娘役”に! 相手役の大地真央に言われた言葉とは?