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村上春樹「“待ったなし”みたいな状況が、しばしば緊迫した優れた演奏を生むことがあります」ダイレクト・カッティングの醍醐味を語る

作家・村上春樹さんがディスクジョッキーをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「村上RADIO」(毎月最終日曜 19:00~19:55)。3月31日(日)の放送は「村上RADIO~ダイレクト・カッティング特集~」をオンエア。ダイレクト・カッティングとは、レコーディングをおこなう際、マスター音源をテープに録音して編集せずに、いきなりディスクにカッティングすること。そんなダイレクト・カッティングで録音された楽曲を、村上DJの所蔵するレコードで紹介しました。この記事では、中盤3曲について語ったパートを紹介します。



◆Herbie Hancock「Someday My Prince Will Come」
次はソロ・ピアノを聴いてください。ハービー・ハンコックが「いつか王子様が」を演奏します。これも日本での録音です。1978年10月に東京、信濃町のCBS・ソニー信濃町スタジオで録音されました。ピアノはまっさら新品のスタインウェイが使用されました。素晴らしい音です。

ダイレクト・カッティングって、片面に3曲入っていたら、ぶっ通し連続でその3曲を演奏しなくちゃならないんです。途中でちょっと休憩してお茶を飲んで、うぐいす餅を食べて……みたいなことはできません。だから演奏するほうも、けっこうくたくたになってしまいます。また、片面に収録できる時間も20分くらいに限られていますから、つい長くなって収まりきらなかったということも起こります。何かと苦労は絶えません。でもそういう「待ったなし」みたいな状況が、しばしば緊迫した優れた演奏を生むことがあります。このハンコックの演奏も瑞々しい美しさをたたえています。

◆Lee Ritenour「Lady Soul」
次はリー・リトナーをいきます。リー・リトナー、一世を風靡しましたね。このリー・リトナーが率いるグループ、ジェントル・ソウツが日本ビクターのために吹き込んだ、ダイレクト・カッティングの第2弾「シュガー・ローフ・エクスプレス」からの1曲です。デイヴ・マシューズが書いたソウルフルな曲。「Lady Soul」。

リトナーと、特別ゲスト、エリック・ゲイルとのツー・ギターの絡みがご機嫌です。キャラクターは違いますが、それぞれに個性的な良い味を出していますよね。とくにエリック・ゲイルの切れの良いバッキングは、聴き惚れてしまいます。リトナーがどうしてもエリック・ゲイルと共演したいということで、このレコーディングのために、わざわざNYから呼び寄せたんだそうです。この日が2人の初顔合わせだったんだけど、ぴったり息があっていますね。

キーボードはパトリス・ラッシェン、ベースはエイブラハム・ラボリエル、ドラムズはハーヴィー・メイソン、パーカッションがスティーヴ・フォアマン。1977年、ロサンゼルスのケンダン・スタジオでの録音です。

そういえば、数年前にホノルルの「ブルーノート」でリトナーのグループのライブを聴いたのですが、息子さんのウェズリー・リトナーがドラムズを受け持っていて、「そうか、かつてのやんちゃなギター少年、リー・リトナーにも、もうこんな立派な息子がいるんだ」と、ふと感心してしまいました。時の流れは速いです。

◆Lorin Maazel, The Cleveland Orchestra「Farandole」
ジャズとかフュージョン系の音楽が続いたので、ここでがらりと雰囲気をかえてクラシックを聴いてください。ビゼーの作曲した「アルルの女」第2組曲から「ファランドール」。演奏はロリン・マゼールの指揮する名門、クリーヴランド管弦楽団です。

クラシック音楽のダイレクト・カッティングってあまり見かけないのですが、この演奏は、なかなか素敵です。オーケストラの「一発勝負録音」って、人数が多いだけに、いろいろ困難を伴うと思うのですが、さすが名手揃いのクリーヴランド管弦楽団だけあって、手落ちや抜かりはありません。大きいスピーカーで大きな音で聴くと、ごつんと迫力あります。

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3月31日(日)放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 4月8日(月)AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。

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<番組概要>
番組名:村上RADIO~ダイレクト・カッティング特集~
放送日時:3月31日(日)19:00~19:55
パーソナリティ:村上春樹
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/murakamiradio/

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