南インド料理専門店「エリックサウス」。ニッチな業態の成功の裏側

『お店ラジオ』にようこそ!
パーソナリティは、事業投資家の三戸政和さんと、スマレジ代表の山本博士さん。
ゲストは、先週に引き続き、南インド料理専門店「エリックサウス」の総料理長、稲田俊輔さんでした。

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そもそも、南インド料理専門店というニッチな業態をやろうと思ったのは何故だったのでしょうか。
すると稲田さんは、「エリックサウス」の前にカレー屋さんをやっていた、というお話をしてくださいました。
「神奈川県川崎市にあるオフィスビルの1階で、テイクアウト専門の小さなカレー屋さんを引き継ぐことになって、とにかく効率が良かったですね。昼時の1時間で一気に売れる。で、次のお店をも出すことになったけど、2号店~3号店はパッとしない、なんなら赤字でした」

うまくいかなかったという2号店の場所は、東京・新橋。有名なビジネス街です。
「新橋ならハマりそうだと思うじゃないですか、でも新橋ってライバルの密度が凄まじい。東京って昔からカレー屋さんのレベルが高いし、店自体もめちゃくちゃ多いんですよ。都内にいると、やっぱり埋もれたんですね。で、あんまりうまくいかないなぁ~って思っていた時に、また新しい出店の打診をいただいたんです。それが、八重洲地下街でした」
都内だと“埋もれてしまった”というカレー屋さん。
八重洲も、東京では有名なビジネス街です。
「これは同じことをしても同じ失敗の繰り返しになると思って、愛される店とか可愛がられる店だけじゃダメだ…と、『リスペクトされなければいけない』と思ったんですね。で、自分にできることは何かと考えたら、マニアも納得するような本格的な南インド料理店をやって、南インド料理店のコンテンツとしてカレーを出します、という形をとれば、リスペクトを得られるのではないか、と考えたんです」
こうして八重洲に1号店をオープンしたのが、「エリックサウス」なんですね!

とはいえ当時から、都内にはインド人の料理人が営む南インド料理店があったり、八重洲周辺エリアに至ってはすでに東京No1とNo2の南インド料理店があったと言います。
まず、現地の料理人のお店とは、どのように差別化を図ったのでしょうか?
「インドの方たちのお店は、マニアではない一般の日本人が行くには、すごく入りにくいんですね。あと例えば、ご飯にヨーグルトを混ぜて食べるなんて日本人は気持ち悪がる…と、ミニサラダにして提供したり、日本人に対して良かれと思って提供するものが微妙にズレていたりします。その点、自分たちは、南インド料理を継承して、それを伝えることができるし、その魅力を言語化することができます。また、南インド料理を全く知らない方にも入りやすい店づくりを行い、その楽しみ方も言語化して伝えることができます。で、マニアの方たちに対しては、自分自身がマニアだからこそ、マニアが求めることを的確に提供することができます。この3つを同時にやれるのは、自分たちだけではないか?どことも比較されないお店ができるんじゃないか?と考えました。まぁ、この考えを、自分が南インド料理やりたい!っていうことの言い訳に使っています(笑)」
なるほど(笑)根底には、稲田さんの「やりたい!」というマニア心があるんですね。
では、南インド料理を全く知らない方にも入りやすい店づくりとは?
「それはですね、南インド料理店と言いつつ、一般の方々から見たらカレー屋さんにしか見えない。チキンカレー、キーマカレーなど、キャッチーなメニューもけっこうあるんですよ」

では続いて、周辺エリアにある東京No1とNo2のお店とは、どのように差別化を?
「ターゲット層や来店動機などが、ちょっと違った。彼らがやっていたのは、基本的にレストランスタイル。で、自分たちは、それに比べると、家庭的=ローカルなスタイルを目指しました」
稲田さん曰く、この“ローカルでリアルな料理”を求めるトップ・オブ・マニアの方々が、食べログの口コミを高評価で(マニア目線の濃い~文章で)埋めてくれたおかげで、徐々にお客さまが増えていったそうです。
そして、「急激にメディアの取材が増えました。とくにグルメ雑誌系」と稲田さん。
「それでようやく、ライトなカレー好きの人たちもちらほら集まってきました。全体の母数が増えたことで、マニアと一般のお客さまの割合がちょうど半々ぐらいまで伸びた時に、経営的に成り立つようになったな、という感じです。それまで3年ぐらいかかっています」

やはりニッチなお店の経営は、なかなか大変なんですね…。
「個人で、それこそワンオぺで趣味のお店をやろうと思ったら、今はコストのかからない立地って割とあるんで、そういう場所だと、逆に脇目も振らずに趣味に振り切ったほうがいいかもしれません。立地によって戦略は変わってきます」

それでは最後に、「エリックサウス」は今後、全国に広がっていくのでしょうか?
「例えば今、大阪で出店しています。が、すごく順調かというと、全然そんなことはなくて。ちゃんとお店もお客さまも育つまでには、3年でトントン、45年かけてようやく完成形。なので、多店舗出店して効率よく回収して、といったものには向かないパッケージですね」
ニッチだからこそ、店舗を増やせばいいというものではないんですね。難しい~。
マニアックな裏話、いろいろ学びがありました。稲田さん、ありがとうございました!


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