TOKYO FMの音声配信プラットフォームAuDee(オーディー)の番組「長野智子のテレビなラジオ」(隔週火曜・10時配信)。1985年のフジテレビ入社以降、テレビ業界で活躍してきたフリーアナウンサー・長野智子が、テレビを牽引してきた制作者・出演者をゲストに招き、テレビの過去・現在・未来を語ります。
4月30日(火)、5月14日(火)の配信では、ジャーナリストの鳥越俊太郎さんがゲストに登場。ここでは、「イエスの方舟」事件の報道について語ってもらった5月14日配信の模様をお送りします。
(左から)パーソナリティの長野智子、鳥越俊太郎さん
◆大多数が伝えることが真実とは限らない
長野:他のメディアから見れば、サンデー毎日の記者の鳥越俊太郎さんが彼らをかくまっている状況ですよね?
鳥越:だけど、当時の僕は今みたいに有名な人ではないんですよね。マイクを握って「今日はサンデー毎日の愛読者のご招待ですから、そのつもりで」と言いました(笑)。
そこから旅館に泊まってもらって、食事のあとぐらいに鳥井さんが乗り込んできて「我々はあなた方を見捨てません!」と演説したんですよ。「何の証拠もないのに何を言っているんだ。大丈夫か?」って思っていました(笑)。
長野:すごい話ですね。
鳥越:「あなた方が言っていることは間違いないですから、我々は警察に売るようなことはしません。だから、なぜあなたたちが家を出ることになったのか、その経緯については取材をさせていただきます」という話になりました。
ところが宿は産経新聞をとっていたので、警察に通報するリスクがあったんですね。それでマイクロバスを借りて彼らを乗っけて、熱海の製本会社の寮に入ってもらうことにしたんです。
長野:そこまでしたんですね。
鳥越:それから3週間一緒に寝泊まりをして仲良くなりました。その後、家を出るようになった経緯や、どういう問題を抱えていたのかを聞きました。深刻な話もいっぱいありましたよ。
長野:最終的には、サンデー毎日の鳥井さんの勘が当たり、サンデー毎日の報道の通りで、不起訴になるわけですよね。他のメディアたちの報道が間違っていたことが明らかになりました。
鳥越:「報道というのはこういうこともある」って思いましたね。つまり、報道のやっていることは正しいことだけではないと。十中八九のメディアが言っていることが正しいとは限らない。
もしかしたら、そのなかの1社が言っていることが正しいときもあるなと、そのときに学んだんです。僕にとってあの出来事は大きいですね。
長野:イエスの方舟のときに誤報をしてしまったメディアは、のちにオウム真理教が起こした問題に対して報道を遠慮してしまったんですよね。今度はサンデー毎日がオウム真理教に対してめちゃくちゃ切り込んでいく逆転現象がありました。ジャーナリストの勘ってすごくないですか?
鳥越:この仕事をやっていて思うんですけど、重要なのは「直感」なんですよね。直感を働かせながらやっていく仕事だと思いましたね。
長野:先ほど鳥越さんがおっしゃっていましたけども、歴史をきちんと知って、その流れのうえでの勘ですものね。
鳥越:鳥井さんも、まさに長いジャーナリスト生活のなかで持っていた勘ですよね。
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<番組情報>
番組名:長野智子のテレビなラジオ
配信日時:隔週火曜・10時配信
パーソナリティ:長野智子