タンゴの革命児とも言われた作曲家、バンドネオン奏者のアストル=ピアソラ。
番組では2年半ほど前に生誕100年の特集をさせていただきました。
今朝は、アストル=ピアソラを改めて紹介させていただきます。
4月から全国17箇所で行った葉加瀬太郎さんとのトリオツアーで
ピアソラの曲を演奏したから。
演奏といっても5分ぐらいの曲を1曲、、、ではありません。
4曲で27分ほど、という大作に取り組んだんです。
その中で気づいたことや学んだこと、改めてピアソラの素晴らしさを感じたので
お伝えしたいという思いから、今回、ピアソラを取り上げました。
ピアソラの代表曲といえば、なんといっても「リベルタンゴ」
1974年、ピアソラ53歳の時の作品。
躍動感のあるリズムと情熱的なメロディが特徴だが、
本当に有名になったのは1992年に亡くなった後。
特に1997年頃にチェリストのヨー・ヨー・マが
お酒のコマーシャルで演奏したことで一躍有名になりました。
覚えているからもいるのでは?
そもそもタンゴという音楽、あまりなじみがないかもしれません。
タンゴのリズムのスタンダードといえば「ラ・クンパルシータ」です。
聞いたことがあるでしょうか。
日本でも古くからタンゴを取り入れています。
1969年にリリースされた「黒ネコのタンゴ」
もともとイタリアで童謡として作られた曲のカバーでした。
そして、この曲ならお若い皆さんもご存知かも。
1999年にリリースされた「だんご3兄弟」
この、リズムがタンゴのスタンダードなリズムとされています。
タンゴは、18世紀後半に生まれたものだが、保守的なジャンルでした。
ダンサーや歌手が主役なので、踊りやすく歌いやすいのが1番ということで、
革新的なことは求められていませんでした。
バンドネオンなどの伴奏は照明の当たらないステージの端っこで演奏することが多く
主役はあくまでもダンサーや歌手だったんです。
アルゼンチンに生まれたピアソラは、
6歳の時にお父さんからバンドネオンを買ってもらい、めきめきと腕を上げますが、
一家で移住したニューヨークでジャズやブロードウェーのミュージカルに触れ、
徐々に保守的なタンゴへの情熱を失っていきます。
その後、クラシックの勉強をしようとフランスに渡ったピアソラ。
ある女性の先生に「あなたのルーツはタンゴなのよ」と言われ、
そこから改めてタンゴにのめり込みます。
といっても、保守的なタンゴではなく、自分が触れてきたジャズやクラシック、
あらゆる要素を盛り込んだ革新的なタンゴ。
でも、誰にも認められませんでした。
そんなある日、ピアソラの元に悲しいニュースが飛び込んできます。
「お父さんが亡くなった、、、」
すぐにでも駆けつけたかったが、アルゼンチンに戻る飛行機代もない。
ニューヨークのアパートで、徹夜で書き上げた曲。
それが「アディオス・ノニーノ」さよなら、パパ。
この曲が空前の大ヒットとなりピアソラの人生をガラリと変えるのです。
さて、前半で「ピアソラの曲を葉加瀬太郎さんのツアーで演奏した」とお伝えしました。
その曲は、「ブエノスアイレスの四季」。
春、夏、秋、冬の4曲からなる組曲で27分ほど。
ピアソラの渾身の作で評価も高い。
この曲をコンサートツアーで演奏するにあたり、
太郎さんが長年にわたって企画をあたためていて、
「10数年前から、いつか演奏したい」と思っていたそうです。
NH&Kトリオを結成したのをきっかけに、ぜひ3人で演奏しようと思いがふくらんだ。
といっても大変難しいし、曲の解釈に時間をかけたいので、
いっぺんに四季を披露するのではなく、1年ずつ積み重ねる計画を立てました。
毎年、夏に八ヶ岳でコンサートをしているので、
1年に一つのシーズンずつ制覇するという4年計画。
1年目の2019年に冬、2020年に春、2021年に夏、2022年に秋、
そして昨年2023年に2巡目の冬。
満を辞して今年、2024年のトリオツアーで全シーズンを演奏。
5年がかりで演奏に至りました。
ピアソラの曲の特徴といえば、
激しい部分とバラードの美しく切ないパートが交互にくる、
しかも前触れなく突然シーンが変わります。
そして、落差が激しく、弾いている側としては、
ひとときものんびりしている間がない、手だけでなく脳も使います。
たとえば、疾走感満載のリベルタンゴも
アグレッシブなパートとバラードのパートがあります。
ブエノスアイレスの四季も、こんな場面が。
今回、ツアー17公演だったんでが、毎回演奏が違います。
バラードのところを思いっきりゆっくり弾く日もあれば、あえてクールに弾く日も。
3人のうちの誰かが「今日はこんなかんじでいこう」と演奏で仕掛けると、
「わかった」と演奏で答える。 そんな演奏での会話がスリリングで楽しかったですね
しかも演奏している私たちのバックに迫力のある映像が流れていたりして、
かけがえのない経験をさせてもらいました。
ピアソラの生き様が凝縮された名曲、そして太郎さんの熱意、
少しでも応えられるよう精いっぱい演奏しました。
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