“太平洋の島国”との関係性強化、同地域の発展貢献…今年で10回目を迎える「太平洋・島サミット」を解説

杉浦太陽と村上佳菜子がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「杉浦太陽・村上佳菜子 日曜まなびより」(毎週日曜 7:30~7:55)。「学びと成長」をコンセプトに、毎回さまざまなゲスト講師をお招きして、明日の暮らしがもっと豊かになる情報や気になるトピックをひも解いて、今よりもちょっと成長することを目指す番組です。

6月30日(日)の放送テーマは、「キズナを深めよう! 太平洋・島サミット」。外務省・アジア大洋州局大洋州課 上席専門官の岩崎竜司さんをゲストにお迎えして、今年で第10回を迎える「太平洋・島サミット」について伺いました。


(左から)杉浦太陽、岩崎竜司さん、村上佳菜子



◆開催10回目「太平洋・島サミット」

「太平洋・島サミット」は、日本と太平洋の島からなる国と地域(以下、太平洋島嶼国)同士が関係を深めて太平洋地域の安定と発展に取り組むために、首脳レベルで話し合いをする会議です。太平洋に浮かぶ島国や地域は日本にとって非常に重要な存在であるため、各国首脳らを日本に招く「太平洋・島サミット」を1997年から3年ごとに開催。2024年7月のサミットで10回目を迎えます。

なお、今回のサミットには日本をはじめ、“ミクロネシア、メラネシア、ポリネシア地域”の14ヵ国と、ニューカレドニア、フランス領ポリネシア、オーストラリア、ニュージーランドの計19の国と地域が参加します。

太平洋島嶼国は歴史的な背景から日系人が多い地域もあり親日的で、日本と緊密に連携をしているパートナーです。第二次世界大戦においては日米の激戦地となった場所も多く、今でも戦没者の遺骨収集活動、慰霊がおこなわれており、「これらの国々は、外国で命を落とした日本人を敬い弔うことを大切にしていて、こうした活動にも協力的です」と岩崎さん。

また、太平洋の多くの国々は、陸地よりも大きな水域を持っており、日本の漁船は、その広大な排他的経済水域でマグロやカツオを獲っています。その漁獲量は全体の約4割にのぼり、日本の主要な漁場になっています。

さらに、日本はエネルギーの多くを外国に頼っていますが、石炭と液化天然ガスにおいては、オーストラリアから最も多く輸入しています。そのため、太平洋島嶼国と地域の水域は、日本とオーストラリアを結ぶ非常に重要な海上輸送路です。また、パプアニューギニアからも液化天然ガスを輸入しており、日本の重要な資源の供給元となっています。つまり、太平洋の島国と地域は“日本の食卓と経済を支えている存在”と言えます。

◆島国ならではの課題とは?

太平洋島嶼国には、日本と同じ島国特有の課題に直面しています。その課題は大きく3つに分けられます。

<1:国土が狭く分散している>

人口が少ないと国内市場も小規模となり、成熟した産業が育ちにくい傾向にあります。例えば、ナウル共和国やツバルは東京の品川区とほぼ同じ面積の島ですが、人口は約1万1,000人~1万3,000人。また、ナウルの主要産業は“りん鉱石の採掘”といった鉱業になりますが、現在はすでに枯渇状態で、ほかに経済を支えるめぼしい産業がなく、自給可能な食糧産業もないため、食糧や生活物資のほとんどを海外からの輸入に頼っています。

<2:国際市場から遠い>

主要な国際市場が地理的に遠いため、そのぶん輸送コストが高額になります。ナウルのように輸入に頼っている国は、世界的な石油価格上昇の影響を受け、物価も上昇している現状があります。また、国土である島々が離れているため、同じ国内でも(物資が届くまでに)多くの時間を要するところもあります。

<3:自然災害や気候変動などに弱い>

太平洋島嶼国は、地震やサイクロンなどの自然災害が多発するエリアで、5月にはパプアニューギニアで大きな地すべりが発生。その際に日本は、テントや毛布などの緊急援助物資を送り、国際機関を通じた緊急援助をおこなっています。また、地球温暖化に伴う海面上昇により、ツバルなどは国土が水没の危機に瀕しています。

◆人物交流を重ねて信頼関係を構築

このような問題に対して、日本は資金や知識、技術を提供して課題解決に協力しています。岩崎さんは「政府開発援助(ODA)などを通じて、空港、港、病院、橋などの社会経済活動に必要な大型インフラを整備しています。また、未来を担う若者らの技術力や知識を向上させるために専門家を派遣し、いろいろな分野の研修などもおこなっています」と力を込めます。

また、日本の強みを活かした貢献活動もおこなっています。例えば、サモアに本部を構える国際機関「太平洋地域環境計画事務局」は、気候変動業務の強化と環境や気候変動に強い国づくりのための人材育成を目的とした施設でしたが、十分な収容能力と研修に適した設備を有していない状況にありました。

そこで日本は第7回の「太平洋・島サミット」で、支援を表明した重点分野として“防災”“環境”“気候変動”を挙げ、かつ「太平洋気候変動センター」という研修施設を整備。そして、新しく立ち上げた施設でeラーニングプラットフォームを活用した研修がおこなわれ、13の国と地域から54名が参加。災害に強い建造物の構造などについて学ぶことができました。

さらには人物交流も積極的で、開発途上国の国づくりに貢献できる人材を現地へ派遣する「JICA海外協力隊」では、これまで約4,000人を派遣しています。例えば、太平洋の国々は廃棄物処理に大きな課題を抱えていることから、パラオでは協力隊員をリサイクルセンターに派遣。廃棄物管理の指導や、生ゴミなどから肥料を作るコンポスト施設の開発をおこないました。

ほかにも、外務省が進める対日理解促進交流プログラム「JENESYS」では、太平洋の島国の青年を日本に招へいしたり、今年3月には島国やニュージーランド計10ヵ国の学生が日本を訪問し、平和学習として広島を訪れたり、日本文化を学ぶために福島でホームステイをして地域の住民と親睦を深めました。

日本と太平洋の国々は歴史的にもつながりがあるだけでなく、各国の課題に日本がともに取り組み人物交流を深めることで、重要な“信頼関係と絆”を深めています。

第10回「太平洋・島サミット」は2024年7月16日(火)から18日(木)まで東京で開催されます。今回は気候変動や防災、海洋、環境、人的交流、経済開発、平和、安全など、太平洋の島国と日本が共有するさまざまな問題に、ともに取り組んでいくための協力を重点的に議論する予定です。

最後に岩崎さんは「太平洋に浮かぶ国々と地域は、日本と同じ海に生きる大切なパートナーです。今回の『太平洋・島サミット』にご注目いただくと同時に、それぞれの国と地域について理解を深めていただければと思います」と呼びかけました。

番組のエンディングでは、杉浦と村上が今回学んだ「太平洋・島サミット」について復習します。村上は、認知を広げる意味を込めて“太平洋・島サミットに注目”と記します。一方、杉浦は“太平洋の島国と日本の絆”に注目し、「やっぱり、太平洋の島国と日本は密接な関係にありますね」とコメントしていました。


(左から)村上佳菜子、杉浦太陽



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6月30日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2024年7月8日(月)AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。

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<番組概要>
番組名:杉浦太陽・村上佳菜子 日曜まなびより
放送日時:毎週日曜 7:30~7:55
パーソナリティ:杉浦太陽、村上佳菜子
番組Webサイト:https://audee.jp/program/show/300007925

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