「“食べても大丈夫なんだ”という体験が必要」アスリートにおける“食事の取り方”について東京農大・日田安寿美教授が言及

川瀬良子がパーソナリティをつとめ、日本の農業を応援するTOKYO FMのラジオ番組「あぐりずむ」。毎週火曜は、農業はもちろん、時代の先を捉えるさまざまな研究をおこなっている東京農業大学の農学研究を紹介します。11月12日(火)、11月19日(火)の放送では、保健栄養学研究室の日田安寿美(ひだ・あずみ)教授に、「スポーツ選手と栄養」「朝ごはん」をテーマにお話を伺いました。


(左から)日田安寿美教授、川瀬良子



◆スポーツ選手にとって“食トレ”は良くない?

スポーツ栄養学を専門とし、東京農大のラグビー部、アメリカンフットボール部、レスリング部、女子陸上部の栄養面のアドバイスもおこなっている日田教授によると、「“スポーツ選手は特別なものを食べているんじゃないか”と思われがちですが、実は、メニュー自体は(一般の人と)それほど変わらなくて、“朝食・昼食・夕食をしっかり食べる”とか“必要なエネルギー分をしっかり補うこと”が重要であると分かってきています」と言及します。

さらに、スポーツ選手にとってもう1つ大事なこととして“楽しんで食べること”を挙げ、「(体を大きくするために)“食べなくちゃ”と思いがちで、コーチの方たちも『食トレ』と称して無理に食べさせる傾向がありますが、それも良くないことが分かってきていますので、そこは監督やコーチの方々に見直してほしいところですね」と強調します。

また、女子陸上部に関わるようになって気付いたこととして、「“体格を細く保ったほうが速く走れる”というような間違った考え方が浸透している」と日田教授。

というのも、入部してくる優秀な女子選手の多くが、一般の女子学生と同じくらいの量しか食べていないことに驚いたと言い、「女性は、大学生になると年齢相応の女性らしい体格になってくるわけですが、痩せたままだと生理が止まってしまうこともあります。かといって、意外とお菓子を食べていたりすることもあるので、『3食ちゃんと食べること』と“食べても大丈夫なんだ”という体験がとても大切なことだと思っています」と話します。

ほかにも、運動した後に栄養補給をする際に摂取するタイミングが重要だと言い、「筋力アップのためには、運動後30分以内にたんぱく源を摂ったほうが良いと言われています。筋肉は合成と分解を繰り返しているので、合成をうまく進めるためには、30分以内に摂るのが良いことが分かっています」と日田教授。

とはいえ、ハードな練習後や練習による疲労が溜まったりしているときは食欲が落ちてしまうこともあるため、「ゼリーやドリンクなどで補うことも考えていいと思います」と補足します。

◆朝ごはんは「体の目覚ましスイッチになる」

続いては、スポーツ栄養学の観点からみる“朝食の重要性”について。日田教授は「“体の目覚ましスイッチになる”という意味で、朝食を食べるのはとても大事だと思います。光を浴びることも大事ですが、食事を取ることで消化管を使い、お腹が動いていくと自律神経系のスイッチが入って体のリズムもできますので、勉強やスポーツを頑張りたい人にはオススメです」と声を大にします。

また、脳は糖質が栄養素となるため、「“頭をしっかり働かせたい”という人は、ご飯・パン・麺などを朝からちゃんと食べていただくと元気な1日が過ごせると思います」とも。

さらに“1日3食しっかり食べること”の重要性についても言及。以前、新体操選手の体格について調べる機会があった際、昼食を抜いてしまう選手が何人かいたそうで、「おそらく『あまりエネルギーを摂ってしまうと太ってしまう』とか『体脂肪が減るのではないか』と考えて昼食を抜いたんだろうと思いますが、実際は、昼食を抜いている選手たちのほうが体脂肪率は高かったです」と明かします。

その原因は“昼食を抜いた”だけに限らないとしつつも、「(食事を抜くと)筋肉が落ちやすい状況になるので、注意が必要と思います」と話していました。

----------------------------------------------------
11月19日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2024年11月27日(水) AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。

----------------------------------------------------

<番組概要>
番組名:あぐりずむ
放送日時:毎週月曜~木曜 15:50~16:00
パーソナリティ:川瀬良子
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/agrizm/

コンテンツ一覧

「“食べても大丈夫なんだ”という体験が必要」アスリートにおける“食事の取り方”について東京農大・日田安寿美教授が言及 記事

「“食べても大丈夫なんだ”という体験が必要」アスリートにおける“食事の取り方”について東京農大・日田安寿美教授が言及

「南極」で流しそうめん!? 田留健介准教授が現地に行って実感した“食の大切さ”を語る「南極では食事が一番の楽しみになる」 記事

「南極」で流しそうめん!? 田留健介准教授が現地に行って実感した“食の大切さ”を語る「南極では食事が一番の楽しみになる」

実は“益虫”も多い? 害虫として知られる「ゾウムシ」の生態について、東京農業大・小島弘昭教授が解説 記事

実は“益虫”も多い? 害虫として知られる「ゾウムシ」の生態について、東京農業大・小島弘昭教授が解説

ノドグロ、キンメダイ、カレイも深海魚!? 奥深き“深海魚”の生態について東京農業大・佐々木剛教授が解説 記事

ノドグロ、キンメダイ、カレイも深海魚!? 奥深き“深海魚”の生態について東京農業大・佐々木剛教授が解説

「養殖魚」のメリットとは? 東京農業大・市川卓准教授が取り組む「養殖」「増殖」の研究に迫る 記事

「養殖魚」のメリットとは? 東京農業大・市川卓准教授が取り組む「養殖」「増殖」の研究に迫る

“空気中”にもカビは存在する!?“肺炎”を引き起こすカビも!? 「カビ」の生態について東京農大・小西良子教授が解説 記事

“空気中”にもカビは存在する!?“肺炎”を引き起こすカビも!? 「カビ」の生態について東京農大・小西良子教授が解説

現在「約1%」しかない草原は“地球温暖化抑制”に効果アリ!? 東京農業大・加藤拓教授がメリットを解説 記事

現在「約1%」しかない草原は“地球温暖化抑制”に効果アリ!? 東京農業大・加藤拓教授がメリットを解説

備蓄品として「調味料」「油」「野菜ジュース」も重要…命をつなぐ“災害食”について東京農大・鈴野弘子教授が解説 記事

備蓄品として「調味料」「油」「野菜ジュース」も重要…命をつなぐ“災害食”について東京農大・鈴野弘子教授が解説

“1cm”の土の厚さができるのに「約500年」必要!?「土」を大切にすることで“食品ロス”につながる!? 東京農大・入江満美准教授が解説 記事

“1cm”の土の厚さができるのに「約500年」必要!?「土」を大切にすることで“食品ロス”につながる!? 東京農大・入江満美准教授が解説