数えきれないほど多くの素晴らしい映画やテレビなどの映像音楽を生み出した
映画音楽界の巨匠、ヘンリー=マンシーニ。
今年は、生誕100年、そして没後30年です。
私が思うヘンリー=マンシーニの音楽の魅力は、
ロマンティックでありながらユーモアたっぷり、そしてリズムの切れ味が鋭い。
まず、「ムーンリバー」を聞けば「この曲もヘンリー=マンシーニだったのか」と
思ってもらえるのでは?
言わずと知れた、映画「ティファニーで朝食を」の劇中歌で、
オードリー=ヘップバーンが窓辺でギターを抱えながら歌うシーンは、
あまりにも有名ですよね。
実は映画の試写会で「映画の長尺のため、このシーンをカットするように」と
映画会社の重役から言われたそうです。
それを聴いたヘップバーンは、怒って試写会を退席したと、言われています。
結果、ヘップバーンの歌は、この映画を象徴する大切なシーンとなりました。
もう1曲、世界的に有名なのは「ひまわり」でしょうか。
「映画」ひまわり。私も大変好きな1970年制作の映画です。
一面のひまわり畑の中を、悲しみをたたえながら、
凛とした表情で歩く女性主人公、ソフィアローレンが神々しいほど美しい。
そして、ひまわり畑のロケ地はソビエト連邦時代のウクライナ。
次は、少しユーモラスな「子象の行進」をご紹介。
映画「ハタリ!」のテーマ曲で、1961年の作品。
動物を傷つけることなく捕獲する動物愛あふれる物語で、
このストーリーに、ユーモラスで愛らしいメロディがぴったりです。
続いては、こんなピンクパンサー。
間が、たくさんあり、次がどうなるのか思わせぶりなメロディ。
まず、イントロがミステリアス。
半音ずつ上がっているだけ、シンプルながらワクワクさせます。
映画のオープニングに、ピンクパンサー(ピンクの豹)がアニメで登場するという
ちょっと変わったスタイルが好評でした。
ここで、ヘンリー=マンシーニについて少しお伝えしましょう。
1924年、アメリカのオハイオ州で生またマンシーニは、
フルート奏者だった父親から英才教育を受け、名門ジュリアード音楽院に進学。
戦後、グレン・ミラー楽団でアレンジャーとピアノを担当。
1952年には、ユニバーサル・ピクチャーズに入社し、
本格的に映画音楽の制作キャリアをスタート。
多くの映画の音楽を手掛け、アカデミー賞やゴールデン・グローブ賞を受賞。
アカデミー賞は、
1961年に「ティファニーで朝食を」で、主題歌賞、作曲賞
1962年に「酒とバラの日々」で、歌曲賞
1982年に「ビクター/ビクトリア」で、音楽(編曲・歌曲)賞を受賞
ゴールデン・グローブ賞は、
1970年に「暁の出撃」で、主題歌賞を受賞
さて、先ほどは映画音楽を紹介しましたが、
ヘンリー=マンシーニはテレビドラマのテーマ曲も作っています。
まず、「刑事コロンボ」。
のどかであたたかみを感じるメロディですが、
ドラマが始まるとなかなかリアルな難事件で、
刑事コロンボが毎回鮮やかに推理します。
最初から犯人が分かった状態で物語が進む、倒叙 (とうじょ) 形式のミステリーは、
田村正和さん演じるドラマ「古畑任三郎」のモデルとなっているので
見比べると興味深いです。
もう1曲、ユーモラスなテレビドラマの曲といえばこの曲。
1958年からアメリカで放映されたテレビシリーズ「ピーター・ガン」のテーマ曲。
多くのジャズやロックのミュージシャンがカバーしていて、
映画「ブルース・ブラザーズ」の挿入曲として知っている人も多いかも。
私は来日コンサートに行ったことがあります。
1990年に赤坂サントリーホールで行われたコンサート。
演奏はイギリスのロイヤルフィルハーモニーポップス管弦楽団、
85人ぐらいいました。
そして指揮はもちろん、ヘンリー=マンシーニご自身。
ゴージャスで美しく、きらめくような音色、
もちろん知っている曲ばかりなので最初から最後まで興奮しっぱなしでした。
しかも、この日はテレビの特番のレポーターとして出演したため、
パートナーをつとめてくださった映画評論家の水野晴雄さんに
映画について解説いただきながらの観覧。最高の贅沢でした。
しかも、リハーサルも見せていただいたのです。
ヘンリー=マンシーニさんは、
穏やかながら的確にメンバーの皆さんに指示をされていました。
眼差しが優しいのが印象的で、
この懐の広いお人柄から、あの音楽が紡ぎだされたのだと
胸がいっぱいになりました。
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