裁判員経験者の96%以上が「良い経験」と回答…18歳から選ばれる「裁判員制度」について解説

杉浦太陽と村上佳菜子がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「杉浦太陽・村上佳菜子 日曜まなびより」(毎週日曜 7:30~7:55)。「学びと成長」をコンセプトに、毎回さまざまなゲスト講師をお招きして、明日の暮らしがもっと豊かになる情報や気になるトピックをひも解いて、今よりもちょっと成長することを目指す番組です。

12月1日(日)の放送テーマは「もっと知ろう! 18歳からの裁判員制度」。最高裁判所刑事局第二課長 恒光直樹(つねみつ・なおき)さんから、裁判員制度の概要、裁判員の選ばれ方について伺いました。


(左から)杉浦太陽、恒光直樹さん、村上佳菜子



「裁判員制度」とは、国民のなかから選ばれた6人の裁判員が刑事裁判に参加して、3人の裁判官とともに被告人が有罪かどうか、有罪の場合、どのような刑にするかを決める制度です。2009年5月から始まり、今年で15年目を迎えます。また、これまでに裁判員・補充裁判員(裁判員に欠員が生じた場合,その人に代わって裁判員を務める方)を経験した人は12万7,000人を超えています。

◆裁判員制度の意義とは?

裁判員制度は、刑事裁判に参加することで裁判の進め方や内容に国民の視点が反映され、裁判がより身近で分かりやすいものとなり、司法全体に対する信頼が高まることを期待して始まりました。

導入後の変化として、恒光さんは「職業や年齢など、バックグラウンドが異なるいろいろな方のさまざまな意見、感覚を反映させながら結論を出していきますので、多角的な検討が可能になっていると感じます」と話します。ほかにも、裁判員からの率直な意見や疑問を通して、法律家が常識だと思って前提にしていたことが違っていたと気付かされたり、法律上の問題点について考え直したりするきっかけとなるケースもあります。

◆封書が届いた=裁判員に選ばれたではない

裁判員を選任するまでにはいくつかの段階があります。まず、選挙権がある人のなかから、翌年の裁判員候補者名簿を“くじ”で選んで作成します。ちなみに、裁判員候補者に選ばれる確率は“約400人に1人”です。さらに、そのなかから裁判員に選ばれる確率は“約30人に1人”です。裁判員候補者名簿に記載された人は、最高裁判所から封書でお知らせが届きます。今年は約20万人が選ばれ、そのなかには18歳、19歳の人が3,000人以上含まれています。

最高裁判所から見慣れない封書が届けば、なかには詐欺を疑う人もいるでしょう。封書の外観や同封物は裁判員制度の公式Webサイトで公開されており、実際に裁判所からのものなのかどうかを確認できるようになっています。

封書が届くと“裁判員に選ばれた”と思いがちですが、実際は「来年の裁判員候補者として名簿に名前が載った」という知らせです。その後、名簿の候補者のなかから具体的な事件ごとに、くじで裁判員候補者が選ばれます。「選ばれた方には『裁判員等選任手続期日のお知らせ』という封書をお送りします。この段階で裁判所にお越しいただくことになり、選任手続きでさらにくじがおこなわれ、最終的に6人の裁判員が決定、発表されます」と説明します。

◆裁判員を経験した10代の感想を紹介

もし裁判員に選ばれたとき「法律に詳しくないのに、裁判に参加しても大丈夫だろうか?」と不安になる人もいるかもしれませんが、法律の知識は必要ありません。裁判員裁判では、あらかじめ裁判官、検察官、弁護人が事件の争点を整理し、必要な証拠を厳選します。その後、証人や被告人の話を聞き、証拠書類や証拠品を確認することで、裁判員は事件について判断できるようになっています。

また、裁判員裁判では裁判官と裁判員が1つのチームとなり、話し合いながら結論を出すため、1人で悩んだり、責任を感じたりする必要もありません。審理が終わった後、裁判員と裁判官3人全員で、被告人が有罪かどうか、有罪の場合はどのような刑にするかを話し合います。これを「評議」と言います。

選ばれる前は「やりたくない」と思っていた方が多い裁判員ですが、実際に経験したことで96%以上の方が「良い経験と感じた」と回答しています。裁判員を経験した10代の方々からは、こんな感想がありました。

・自分の犯罪に対する考えの甘さや法律の重さを実感することができた。また“法律は身近にある”と認識することもできた。歳も性別も職業もまったく違う人たちの意見を聞くことや自分の意見を言うことも、とてもいい経験だと思った。

・裁判員のなかで最年少だったが、幅広い年齢層の人の意見を聞けた。裁判員をやる前よりも自分の意見を広く持てたと思うし、意見が言いやすい環境だった。10代でも問題なくやれると感じた。

・評議で培った“異なる世代の人に自分の意見を論理的に伝える力”を今後も生かしたい。

・裁判官の議論の進め方などは非常に参考になり、自分が会議の進行役をする際などに活用しています。

◆裁判員制度を辞退する場合は?

では、やむを得ない事情で裁判員になれない場合は、どうすればいいのでしょうか?

裁判員制度は、仕事上の重要な用務などを理由に辞退が認められる場合もあります。そのほか、“候補者に選ばれた人の負担が重すぎないように”との配慮などから、70歳以上の方や学生の方、重い病気やケガなどの事情を理由に辞退することもできます。一方で、辞退しなければ他の方と同じように裁判員に選ばれる可能性があります。

裁判員裁判のような社会的に意義のある活動に参加することは、本人にとっても社会全体にとっても有意義なことです。「裁判所としても、“仕事や勉強が忙しい”“育児や介護をしている”などの事情がある方もいるかと思いますが、できれば辞退せずに“裁判員をやってみたい!”という方が参加しやすい環境整備に努めていきたいと思います」と恒光さん。

裁判員制度の詳細を知りたい人は、公式Webサイトをご確認ください。サイト内にある「裁判員制度インフォグラフィックス動画」や「すっとわかる、裁判員制度なるほどブック」などを活用し、裁判員の疑問や不安を解消しましょう。

最後に恒光さんは、「私自身、裁判員裁判を担当するなかで、裁判員のいろいろな視点と感覚に触れ、学ぶことがたくさんありました。18歳、19歳の方々をはじめ、幅広くご参加いただいてこその裁判員裁判だと思います。裁判所では参加しやすい環境作りや意見を言いやすい雰囲気作りに努めておりますので、積極的なご参加をお待ちしております」と呼びかけました。

番組のエンディングでは、杉浦と村上が今回学んだ「裁判員制度」について復習。2人が特に注目した点をピックアップして発表します。

村上は“裁判員制度をもっと知ろう!!”とスケッチブックに書き、「制度としては知っていたんですけど深くは知らなかったので、(裁判員裁判を)体験した皆さんの感想なども知ってもらいたいです」と話します。続けて、杉浦が挙げた“裁判員制度を検索して”とポイントを挙げ、「動画やブックなどを見てもらえれば、もっと深く知ってもらえるかなと思います」とコメントしました。


(左から)杉浦太陽、村上佳菜子



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12月1日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2024年12月9日(月)AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。

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<番組概要>
番組名:杉浦太陽・村上佳菜子 日曜まなびより
放送日時:毎週日曜 7:30~7:55
パーソナリティ:杉浦太陽、村上佳菜子
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/manabiyori/

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