命に関わる「食物アレルギー」の危険性…発症のリスクを回避するための注意点を専門家が解説

杉浦太陽と村上佳菜子がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「杉浦太陽・村上佳菜子 日曜まなびより」(毎週日曜 7:30~7:55)。「学びと成長」をコンセプトに、毎回さまざまなゲスト講師をお招きして、明日の暮らしがもっと豊かになる情報や気になるトピックをひも解いて、今よりもちょっと成長することを目指す番組です。

12月8日(日)の放送テーマは、「みんなでリスクを回避しよう! 外食・中食での食物アレルギー」。ゲストに消費者庁 食品表示課 宇野真麻(うの・まあさ)さんをお迎えして、食物アレルギーのリスクを回避するための注意点を伺いました。


(左から)杉浦太陽、宇野真麻さん、村上佳菜子



◆重篤な症状が出る場合も

卵や牛乳、小麦など特定の食べ物を食べたり、触ったりすることでアレルギー症状が出ることを「食物アレルギー」と言います。原因となる食べ物は人によって異なり、複数の食べ物で症状が出る人もいます。また、わずかな量でも発症する人もいれば、少量であれば食べられる人もいるなど、症状が出る量にも個人差があります。

食物アレルギーの症状はさまざまで、くちびるやまぶたの腫れ、咳、呼吸困難、腹痛、嘔吐、かゆみ、赤み、じんましんなどがあります。さらには、“意識がなくなる”“血圧低下”といった重篤な症状が出た場合は「アナフィラキシーショック」が疑われ、迅速かつ適切な対応がおこなわれないと命を落とす可能性もあります。

◆食物アレルギーの情報提供は任意

例えば、子どもが卵アレルギーを持っている場合、クッキーやケーキといった卵が原料となる食べ物はすべて食べることができません。ほかにも、子どもが重度の牛乳アレルギーを持つ場合、牛乳がほんの数滴でも患者に触れたり、口に入ったりすると命に関わる危険性もあるため、家族全員で牛乳を避ける生活を強いられるケースもあります。

外食する際も、メニューのなかにアレルギーの原因となる食物が含まれていないかなど、細心の注意を払う必要があります。そのため、なかには外食経験がほとんどないまま成長する子どももいます。

ちなみに、食物アレルギーの記載があるメニューを用意する飲食店もありますが、外食・中食(※)において食物アレルギーに関する情報提供は義務づけられていません。
※中食(なかしょく)…外で食事する外食と自宅で食事する内食の中間にあたる食事のことを指します。今回の場合は、あらかじめ容器に入れずに販売されていて、中身を確認してから購入することができる食品(ショーケース内のケーキ、計り売りのお惣菜など)が該当します。

ただし、「冷凍食品、スナック菓子、ジュースなど、容器に入れられた加工食品には特定原材料の表示が義務づけられています。特定原材料というのは、重篤な症状が現れやすい8品目で、えび、かに、くるみ、小麦、そば、卵、牛乳、落花生(ピーナッツ)です」と宇野さんは説明します。

一方、工場で製造する加工食品では、特定の商品のみを製造するラインなどで管理できますが、町の飲食店では同じキッチンで複数の料理を同時に手早く調理するため、特定の原料の混入を防ぐことは困難だと考えられています。さらに、全国展開するチェーン店や家族経営のお店など飲食店の規模がさまざまで、一律のルールを作ることは難しい現状があるため、現在、外食・中食での食物アレルギーの情報提供は、事業者の自主性に委ねられています。

とはいえ、食物アレルギーの患者や家族だけでなく、食べ物を提供する飲食店の責任者、そこで働く従業員すべての方が食物アレルギーへの理解を深めて、みんなでリスクを回避することが重要です。

◆曖昧な回答や判断は“NG”!

外食・中食の責任者や従業員の方々が、食物アレルギーのリスクを回避するために気を付けたいポイントは「最新で正確な情報を提供すること」です。そして、最も避けたいのは“曖昧な回答や判断をすること”です。

宇野さんは、「分からないときは『分かりません』と答えるほうが、食物アレルギーを持つ患者さんやご家族にとっては親切な対応です。“分からないのであれば食べない”という判断がすぐにできるからです。しかし、分からないで確認しないまま“入っていない”と答えたり“大丈夫だと思います”などと曖昧に答えてしまうと、誤った判断をする可能性も出てきてしまいます」と解説します。

例えば、外食経験が乏しいまま成長した子どもが友人同士で外食したとき、店員からの曖昧な回答で“大丈夫だ”と判断してしまうおそれがあります。食物アレルギーに関しては最新で正確な情報提供が重要事項であり、曖昧な回答は控えることが最適とされます。

さらに、宇野さんは「ほんのわずか食べただけでも発症してしまう方に向けては、アレルギーの原因となる食べ物がメニューに使われていなかったとしても、他の調理過程で意図せず混入してしまう可能性もあることをきちんと伝えることが大切です」と声を大にします。

ここで、食物アレルギーに関する知識が不十分で起こった事故の一例を紹介。例えば、脱脂粉乳が牛乳から作られているとは知らず、牛乳アレルギー患者に提供してしまったケースや、落花生とピーナッツが同じものだと知らずに提供してしまい、事故が発生したケースなどがあります。

また、作り直しをせずに提供したことで事故が生じたケースも。卵アレルギーであることを伝えたうえでオムライスを注文したところ、上の卵が取り除かれていない通常のオムライスが到着。作り直しを要求しましたが、店側は作り直しをせずにオムライスの卵を外して提供した結果、残った卵を食べた患者がアナフィラキシーショックを起こしました。

こうしたケースからも、飲食店の責任者は食物アレルギーに関する正しい知識を学び、従業員と一緒に調理工程や接客方法などにルールを設けて、従業員全員がルール通りの対応を徹底することが大切です。

◆食物アレルギーの発症を防ぐために…

食物アレルギーの患者と家族も、店の食物アレルギーに関する知識量には個人差があることを知っておくのも大切なことです。例えば、アレルギーの原因となる食べ物が入っているかどうかを質問する際は、「食物アレルギーなのですが、牛乳や脱脂粉乳を使っていますか?」と尋ねたり、作り直しを要求する際は「食物アレルギーなので、卵をはがすだけではなく作り直してください」とハッキリ伝えることで、身を守ることにもつながります。

食物アレルギーは命に関わる重要なことです。外食・中食の責任者や従業員、食物アレルギー患者と家族みんなで、リスクを回避する行動を取りましょう。

最後に宇野さんは「消費者庁では、外食・中食における食物アレルギーに関する情報提供が、より一層推進されることを目指し、外食・中食事業者の皆さんや食物アレルギーの患者さん、ご家族の方が、それぞれの視点から学べる動画をYouTubeで公開しています。ぜひ一度ご覧いただき、食物アレルギーに対する理解を深めましょう」と呼びかけました。

番組のエンディングでは、杉浦と村上が今回学んだ「食物アレルギー」について復習。2人が特に注目した点をピックアップして発表します。

村上は“人によって違う食物アレルギーを理解しよう”をポイントに挙げ、「人によって(アレルギーの)反応も違ったりするので、そこはちゃんと理解しておきたいですね」と話します。続けて、杉浦は“食物アレルギーは食べ物の好き嫌いではない”とスケッチブックに書き、「命に関わることなんだと理解してほしいですね」とコメントしました。


(左から)杉浦太陽、村上佳菜子



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12月8日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2024年12月16日(月)AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。

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<番組概要>
番組名:杉浦太陽・村上佳菜子 日曜まなびより
放送日時:毎週日曜 7:30~7:55
パーソナリティ:杉浦太陽、村上佳菜子
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/manabiyori/

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