笹川友里がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「DIGITAL VORN Future Pix」(毎週土曜 20:00~20:30)。この番組では、デジタルシーンのフロントランナーをゲストに迎え、私たちを待ち受ける未来の社会について話を伺っていきます。12月28日(土)の放送は、IoTNEWS代表の小泉耕ニ(こいずみ・こうじ)さんをゲストに迎え、2024年のデジタルシーンを振り返りました。
(左から)小泉耕ニさん、笹川友里
小泉さんは、大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)、キャップジェミニ・アーンスト&ヤング、テックファーム株式会社を経て、2005年より現職に就いています。
◆2024年は生成AIがさらに進化
はじめに小泉さんは、2024年のデジタルシーンについて「“生成AI”関連の話題がすごく盛り上がった1年でした。2022年に『ChatGPT』が誕生してから(技術が進み)、アプリケーション内だったり、スマートフォンのOSにも搭載されていますから、AI単体で使うというよりは、いろいろなものに組み込まれたAIを皆さんが使いだすような環境が徐々に整い始めている、という1年でした」と総括します。
さらに、生成AIの精度についても飛躍的な進化を遂げていると言い、「(『ChatGPT』が)2022年秋に登場してから1年間は、“ハルシネーション(AIが嘘をついたり、適当に回答すること)”が問題視されていたんです。ところが、2024年になり、ハルシネーションを防ぐために、AI自身が回答の候補を評価し、最適な解答を見つけて答える。つまり、“考えてから答えを出す”タイプのAIが登場しました。これで状況は一気に変わってきた感じがします」と解説します。
また、スマートフォンで撮影した際、画像に映った余計なものをボタン1つで消してくれるなど、AIの活用法も多様に。さらには、「身近なところではAmazonの買い物サイトにも、生成AIのボタン(Rufus(ルーファス))が導入され始めています。画面に表示している商品のスペックなど、これまでだったら店舗に行って店員に聞かないとわからなかったことが、ECサイトのチャットが答えてくれるんですよ!」と興奮気味に語ると、笹川も「すごい時代がきましたね! 日常に(生成AIが)浸透しているところが、今年の特徴かなと思います」と関心を寄せます。
その一方で、「(AIの回答の真偽が)正しいかどうかは、自分の目で見極めないといけない危機感もありませんか?」という疑問に小泉さんも同意し、「今後は、AIが作った動画が量産されていくなかで、“本当の情報は何か”を見極める感性を磨かなければいけないのが、人間の大きなミッションだと思います。そして、それは本来、発信者が考えながら発信しないといけないことですが、発信者側が正しいかどうかの分別なく垂れ流してしまう可能性も大いにあり、そういうものが溢れる可能性も高いので、やっぱり最後の最後は自分で考えなきゃいけないと思います」と注意を促します。
◆半導体企業「NVIDIA」躍進の背景
続いての話題は、2024年のデジタルシーンで注目を集めたアメリカのメーカー「NVIDIA(エヌビディア)」について。NVIDIAは半導体の設計・製造をしている会社で、台湾のTSMC(台湾積体電路製造)をはじめ、さまざまな企業から部品を集めてコンピューターを作っています。
そんなNVIDIAが日本で注目された理由について、「おそらく新NISAが始まったことがきっかけではないかと思います。普通に考えると半導体の会社を多くの方が気にするとは思えないので、おそらく皆さん“株”のことを気にされていると思います」と小泉さんは推測します。
NVIDIAは、もともと半導体を扱う前は、PC画面に組み込まれている映像を制御する“グラフィックボード”を作る会社だったそうで、「PC画面は“ドットの集まり”なのですが、例えば“すごく早く映像を画面に出したい”となったときに、そのドットを高速に書き換えないといけない。それに適しているグラフィックボードを作っていたのがNVIDIAだったんです」と説明。
小泉さんいわく、NVIDIAの開発環境はエンジニア・プログラマーの方々にすごく愛されているそうで、「みんな(NVIDIAの開発環境を使って)AIのプログラムを書いているので、いま世の中にあるAI資産の大半がNVIDIAのチップを前提としたプログラムになっています。競合が出てきてはいるのですが、これをもし違う会社のものに置き換えようとすると、(プログラムの)仕組みを全部変えないといけないので、乗り換えるのは簡単ではありません」と明かします。
一方で、株価を大きく落とした企業もあり、その1つが「インテル」です。衰退の背景について、「以前はパソコンのなかに入っているコンピューターは全部インテルでしたが、最近はアメリカのAMD(アドバンスト・マイクロ・デバイセズ)など、さまざまな半導体製造メーカーが出てきて、シェアが奪われてしまったんです。そして、OEM(他社ブランドの製品を製造する)を請け負いましたが、それもうまくいかず、さらにAIブーム、NVIDIAが一気に拡大してしまい、出番がなくなってしまいました」と解説。
◆“ドナルド・トランプ氏の大統領就任”でグローバル情勢が変わる!?
しかしながら、「現在、世の中の流れがたまたまそっちに向かっているだけで、いま勝っている会社が今後も勝ち続けられるわけではないです」とキッパリ。その理由の1つに、2025年1月20日から大統領に就任するドナルド・トランプ氏が「関税をかける」と明言しています。
そうなると、NVIDIAはTMSCからチップを輸入していることから価格が上がることが予想されるなど、今後の情勢はグローバルで捉える必要性があり、「必ずしも“NVIDIA一強”といった話をしていればいいわけじゃない」と小泉さん。
そのほか、2024年は新NISAが普及し投資も活発化。また、ビットコインをはじめとするデジタル通貨、暗号資産も話題になりましたが、そうした金融事情に小泉さんは、「株式市場においては、米国株を見ていると2022年後半にChatGPTが出た時期は下がっているんですけど、そこからの伸び率がすごいんですよ。それが、新NISAと相まって拡散されている状況ですが、株式市場なので当然、上がったり下がったりするので、油断していると痛い目にあう方が増えるんじゃないかと私は逆にヒヤヒヤしています。一方で、皆さんの金融リテラシーが上がり、デジタルも絡んで、多くの方の知見が広がった1年だったんじゃないかと思います」と話していました。
次回2025年1月4日(土)の放送は、引き続き小泉耕ニさんをゲストに迎えてお届けします。2025年のデジタルシーンの予測など、貴重な話が聴けるかも!?
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12月28日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)聴取期限 2025年1月5日(日) AM 4:59 まで
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<番組概要>
番組名:DIGITAL VORN Future Pix
放送日時:毎週土曜 20:00~20:30
パーソナリティ:笹川友里