近い将来“都心一極集中”は解消する!? AIST Solutions・Vice CTOが見据える“日本の未来”とは?

笹川友里がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「DIGITAL VORN Future Pix」(毎週土曜 20:00~20:30)。この番組では、デジタルシーンのフロントランナーをゲストに迎え、私たちを待ち受ける未来の社会について話を伺っていきます。1月18日(土)の放送は、前回の放送に引き続き、株式会社AIST SolutionsのVice CTO・和泉憲明(いずみ・のりあき)さんをゲストに迎え、お届けしました。


(左から)和泉憲明さん、笹川友里



和泉さんは、静岡大学情報学部 助手、産業技術総合研究所(産総研)、サイバーアシスト研究センター研究員、産総研情報技術研究部門・上級主任研究員などを経て、2017年より経済産業省 商務情報政策局に勤務。2024年7月から現職に就いています。

◆現在は“デジタル化”の分水嶺!?

和泉さんは現在、さまざまなプロジェクトに関わっていますが、これから特に重要になることとして挙げたのが“デジタル化”です。「例えば、公共バスに乗る代わりにオンライン診療や電子処方箋などのインフラを変えていくなど、道路や鉄道がインターネット、通信に変わっていく。それが現在、7〜8合目ぐらいまで変化しているのかなと考えています。なので、今後そこを社会が本気で取り組んでいくのか、今まで通りの仕組みに固執するかの分水嶺に立っているのではないかと思っています」と語ります。

また、デジタル化を進めることによって、「電子の世界に振り切った側から見ることができ、そのことでいろいろムダな商習慣が見つかるかもしれない。“(全部を)電子にする”という人が現れたおかげで、“世の中をどうやって変えていこうか”というフェーズにきている」と声を大にします。

◆世界に“勝つために必要なこと”を逆算

ここで、笹川から「新しい技術で社会を変えようとしている人たちに求められるものは何でしょうか?」との質問に、和泉さんは「とても難しい質問ですが……(すべてが)平均点内だと、ちょっと突出したところにボロ負けしてしまう可能性があるんです。そういう意味では、その人の得意なもの、強みを伸ばしていくのが大前提です」とコメント。

さらには「研究であろうがビジネスであろうが、今までは日本のマーケットでやっていればなんとかなったのが、今後は“世界線戦でどう勝ち抜いていくか”を逆算しつつ、我が国のマーケットで今後どう育てていくのか、ということも考えていかないといけない。つまり、これから“勝つために必要なこと”を逆算したときに、歴史的には浅い分野だったとしても、自分に必要な理論・メソッドであれば取り入れて、最短距離で勝ち抜いていくことが大事じゃないかと思います」と補足します。

◆今後は“多拠点生活”を望む人が多くなる?

続いて、笹川が「デジタル化が進むことによって、今後10~20年先のライフスタイルや働き方は、どう変化していくのでしょうか?」と質問を投げかけると、和泉さんは「例えば、電子レンジが誕生したとき、便利になったけど食べる物やメニューは変わらなかった。それと同じように、新しい技術ができても“(自分たちの生活は)変わらない”というのがまずベースラインにある」とキッパリ。

そのなかで、「僕は“鉄腕アトム・メソッド”と呼んでいるんですけど、ビルや車、高速道路、飛行機など、漫画『鉄腕アトム』描かれていた通りの世界がほぼ実現されているものもあれば、二足歩行ロボットが(街に)普通に歩いている、といったまだ実現していない世界もある」と和泉さん。

一方で、「鉄腕アトム」には“黒電話”や“ブラウン型のテレビ”なども描かれていることに注目し、「無線通信の技術は(作者・手塚治虫の)想像以上に進んでいるということなんですよ。なので僕は、『鉄腕アトム』のシナリオから補正して“通信”で社会の変化を見ていったほうが、5年先、10年先の予測の感度・精度が上がるんじゃないかと思っています」と持論を展開します。

最後に、和泉さんが想像する近未来の風景について質問すると、「都心への一極集中がなくなり、バランスの取れた社会になるというのが僕の理想です。賛同してくれる人も多いので、そういう方向に技術を向けていけば変えていけると思っています」と力を込めます。

さらに、今後は多拠点生活が活性化すると推測し、「ビジネスの機能や首都機能も大切かもしれないですけど、それ以外にもいろいろな機能・価値はあるので、今後、“住民登録したところに住み続けなければならない”ということがなくなり、多拠点での生活が活性化していけば“もっと頑張ろう”と思えるかもしれないですよね」とコメントすると、笹川も「確かに、人口減少のなかで人の流動性を高めるのも1つのアイデアですよね」と納得します。

改めて和泉さんは「物理世界、フィジカルのムダなところを“デジタル”というテクノロジーが、今までは足し算だったところを今後は引き算していく。これによって、より良い世界にしていくというのがポイントかなと思います」と話していました。

次回1月25日(土)の放送は、三菱ケミカルグループ株式会社 執行役シニアバイスプレジデントCDOの市村雄二さんをゲストに迎えてお届けします。総合化学企業大手が挑むデジタル戦略についてなど、貴重な話が聴けるかも!?

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1月18日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2025年1月26日(日) AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。

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<番組概要>
番組名:DIGITAL VORN Future Pix
放送日時:毎週土曜 20:00~20:30
パーソナリティ:笹川友里

コンテンツ一覧

DIGITAL VORN Future Pix #200 音声

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DIGITAL VORN Future Pix #199 音声

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