「認知症」「認知症予備群」合計“1,000万人超”…認知症の人が希望を持って暮らせるような“取り組み”とは?専門家が解説

杉浦太陽と村上佳菜子がパーソナリティをつとめるTOKYO FMのラジオ番組「杉浦太陽・村上佳菜子 日曜まなびより」(毎週日曜 7:30~7:55)。「学びと成長」をコンセプトに、毎回さまざまなゲスト講師をお招きして、明日の暮らしがもっと豊かになる情報や気になるトピックをひも解いて、今よりもちょっと成長することを目指す番組です。

1月26日(日)の放送テーマは、「そのイメージを変えていこう! 新しい認知症観」。厚生労働省 老健局 認知症施策・地域介護推進課の西江哲哉さんから、認知症の法律に関する話や認知症の人が暮らしやすい社会を目指す取り組みについて伺いました。


(左から)杉浦太陽、西江哲哉さん、村上佳菜子


◆認知症は誰もがなり得る病気

2022年の推計では、認知症、認知症予備群の方は合わせて1,000万人を超えています。これは、65歳以上の高齢者の約3.6人に1人が認知症か認知症予備群という状況です。

認知症と聞くと「身の回りのことができなくなり、介護施設に入ることになる」「暴言・暴力などで周りに迷惑をかけてしまう」といったイメージを持つ人は少なくありません。

しかしながら、認知症当事者からは「何もわからなくなったり、何もできなくなるわけではありません。新しいことにも挑戦できるし、覚ることもできます」「支えられる一方になるわけではありません。家族や地域のために役に立てることだってあります」といったポジティブな意見があります。

認知症の症状の現れ方や進行具合は人それぞれです。偏った思い込みがあると、認知症の人やその家族が、医療サービスや社会からのサポートに対して消極的になり、それによって診断・治療の遅れにつながる恐れがあります。今回は“新しい認知症観”について学んでいきましょう。

◆認知症に関する初の法律「認知症基本法」とは?

2024年1月に「認知症基本法(正式名称:共生社会の実現を推進するための認知症基本法)」が施行されました。これは、認知症の人を含めた国民一人ひとりが、お互いに支え合いながら活力ある社会の実現を目指すことを目的としています。

これまでにも「認知症になると何もできなくなる」といった、認知症に対する偏見や誤解を解消していく考え方はありましたが、さまざまな施策が進められるなかで徐々に状況も変わってきています。

「これまでは、どちらかというと“お世話をする側の観点”から認知症施策が進められましたが、認知症基本法では“認知症の人がどうしたいのか”という逆の観点から、認知症に関する取り組みを進めることが基本理念として示されています。こうした認知症の法律があるのは世界でも日本だけです」と西江さん。

また、認知症基本法に基づく基本計画では「新しい認知症観」が示されました。これは“認知症になったら何もできなくなる”ではなく、認知症になってからも一人ひとりが“個人としてできること”“やりたいこと”があり、住み慣れた地域で仲間などとつながりながら、希望を持って自分らしく暮らし続けることができるという考え方で、「認知症になっても自分らしい暮らしを続けていくためにはどうすればいいか? 社会的にもどんな役割を果たしていけるかといった前向きな考え方です」と補足します。

古い認知症観に縛られず、私たち一人ひとりが新しい認知症観を持つようになれば、偏見や誤解も減らせることが期待できます。そして、認知症の人やその家族が、認知症であることを周囲に伝えやすくなります。そして、認知症の人を含めた国民一人ひとりが新しい認知症観に立つことができれば、認知症の人が自らの意思によって地域とつながり、日常生活・社会生活を営むことができる共生社会を創り上げることができます。

◆認知症の人のためにおこなっている取り組み

続いて、認知症の人が希望を持って暮らせる社会を目指すべく、現在おこなわれている主な取り組みを紹介します。

【本人ミーティング】

認知症の人が集い、本人同士が中心になって、自らの体験や希望、必要としていることを語り合い、自分たちのこれからのよりよい暮らしや、暮らしやすい地域のあり方を一緒に話し合ったり、発信していく場です。地域の方や行政職員もこのミーティングに参加して、認知症の人たちが、自分らしく暮らし続けるために必要としていることを把握し、当事者の視点に立ってより良い施策や支援を一緒に進めています。

2023年度は432の市町村で本人ミーティングが実施され、「医療・介護の現場で配慮してほしいこと」「安心して外出するために必要なこと」などのテーマを決めて、認知症の人と一緒に地域づくりに関する議論がおこなわれました。西江さんも本人ミーティングに参加したことがあるそうで、「活発な議論がおこなわれていてとても驚きました。実は、そこで出た意見を基本計画の内容や目標などを検討する際にも参考にしています」と話します。

ほかにも「認知症カフェ」という認知症の人やその家族が、地域の人や専門家と相互に情報を共有してお互いを理解し合う場が、多くの自治体で設けられています。

【ピアサポート活動】

認知症の人が、認知症の人の相談支援をする活動です。認知症と診断されたからといって何もできなくなるわけではなく、今後の生活に不安を抱える認知症の人に対して、経験談を語るといった相談役として活躍される方もいます。

認知症の人による相談支援は、認知症の人の心理的な負担を軽減したり、認知症の人が地域を支える一員として活躍し、社会参加することの後押しにもなっています。ピアサポート活動では、相談する側・される側という枠を外し、双方が相手の意見を尊重しながら話し合います。それにより、「相談にとどまらず、交流の場となる」といった評価や、ピアサポーターからの「いろんな人がいるから、いろいろな話が聞けて楽しい」といった声もあがっています。

【認知症希望大使】

厚生労働省では、認知症の人の発信の機会が増えるように、認知症の人7名を「希望大使」として任命しています。希望大使には、国がおこなう認知症の普及啓発活動への参加や協力、国際的な会合への参加、認知症とともに生きる希望宣言の紹介などに取り組んでいただいています。また、都道府県が任命する「地域版希望大使」もいて、その数は約80名にのぼります。都道府県がおこなう認知症の普及啓発活動に参加・協力しています。

最後に西江さんは「誰もが認知症になり得る時代です。認知症になってからも自分らしい暮らしを続けていくためにどうすべきなのか、自分ごととして考える時代がきています。認知症の人と向き合って、認知症の人の声を聞いて、皆さんなりの認知症観を考えてみてください」と呼びかけました。

番組のエンディングでは、杉浦と村上が今回学んだ「新しい認知症観」について復習。2人が特に注目した点をピックアップして発表します。村上は“新しい認知症観を知ろう!”とポイントを挙げ、「今まで(認知症に対して)思っていたことが違っていたんだなって。イメージがすごく変わりました!」と語ります。杉浦も「先入観を取り払うことは大事ですよね」と共感し、注目ポイントには“認知症の方も活躍できる社会”とスケッチブックに書いていました。


(左から)杉浦太陽、村上佳菜子



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1月26日放送分より(radiko.jpのタイムフリー)
聴取期限 2025年2月3日(月)AM 4:59 まで
※放送エリア外の方は、プレミアム会員の登録でご利用いただけます。

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<番組概要>
番組名:杉浦太陽・村上佳菜子 日曜まなびより
放送日時:毎週日曜 7:30~7:55
パーソナリティ:杉浦太陽、村上佳菜子
番組Webサイト:https://www.tfm.co.jp/manabiyori/

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